【欧州5大リーグの勢力地図#2】赤い悪魔の復活 モウリーニョ船長、セカンドイヤーサクセスに向け死角なし

補強に四苦八苦、見切り発車の開幕を迎えた強豪たち

補強に四苦八苦、見切り発車の開幕を迎えた強豪たち

ライバルたちを差し置き、充実のスカッドを完成させた photo/Getty Images

移籍市場の閉鎖が2週間後に迫った段階で、不確定要素の多いチームは優勝候補から除外せざるをえない。ウェイン・ルーニー、ギルフィ・シグルズソン、ダフィ・クラーセンなど、即戦力と考えられる実力者を次と獲得したエヴァートンも、選手の入れ替えが性急すぎる。信頼関係を築くためには、何事も時間が必要だ。 「8月下旬までに、数人の選手が退団するかもしれない」 アーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督は、今シーズンが見切り発車であることを明らかにした。アレクシス・サンチェス、テオ・ウォルコット、アレックス・オックスレイド・チェンバレン、ジャック・ウィルシャー、 キーラン・ギブスの去就は極めて微妙であり、メスト・エジルも新しい契約書にまだサインしていない。

また、昨シーズン終盤から功を奏してきた3バックも規則性はなく、ウイングバックの裏を突かれた脆さは 開幕のレスター・シティ戦でも露呈 した。監督として時代遅れのヴェン ゲルが続投した人事も大きなマイナスで、チャンピオンズリーグ出場権奪還も難しい。 リヴァプールも同様だ。コウチーニョは十中八九バルセロナに移籍する。市場が閉鎖するまでに、彼の代役が獲得 できるとは思えない。数年来の懸案であるDF陣の強化も遅々として進まず、開幕のワトフォード戦では例によってセットプレイから失点した。ゾーンとマンツーマンをミックスしたような・していないような、実に曖昧な守りは改善される気配すらない。選手層も薄く、チャンピオンズリーグとの併用 がチーム全体に疲弊を招くに違い ない。トップ4から落ちる危険性は十分すぎるほどある。 チェルシーとトッテナム・ホットスパーも、釈然としないままシーズンの開幕を迎えた。ディフェンディング・チャンピオンは、アントニオ・コ ンテ監督の意見を強化担当が汲みとっていない。相思相愛といわれていたロメル・ルカクをマンチェスター・ユナイテッドに横取りされ、「中盤センターの貴重な戦力」とコンテ監督が高く評価していたネマニャ・マティッチも、ユナイテッドに移籍していった。さらに、補強の最優先課題であるはずの両ウイングバックも手付かずだ。現有勢力でプレミアリーグとチャンピオンズリーグを闘うのは至難の業といわざるをえず、無能な強化担当に呆れたコンテ監督が、「チャオ」と三下り半をたたきつけても不思議ではない。

元来、スパーズは移籍市場で慎 重に動く。他チームとの競合を嫌い、選手の価格が落ち着いたところで一気に仕掛けるパターンだ。しかし 、8 月18日時点でだれも獲っていない。7月下旬に「われわれのタイミングで動けばいい」と落ち着いていたマウリシオ・ポチェッティーノ監督も、少しだけ焦ってきたようだ。 「チーム内の競争力を高めるにも数人の即戦力が必要だ」

商売上手のダニエル・レヴィー会長が現場の期待に応えれば、優勝戦線には絡んでくるだろう。ただし、 現時点では選手層が薄すぎる。総工費1100億円ともいわれる新スタジアムの建設が、補強に影響しなければいいのだが......。

不確定要素の多いマンC、 質量ともに申し分ないマンU

不確定要素の多いマンC、 質量ともに申し分ないマンU

プレミアリーグでの実績は申し分ない photo/Getty Images

マンチェスターの2強は強化に成功した。ユナイテッドはルカク、マ ティッチといったプレミアリーグを熟 知する即戦力を獲得し、縦のラインが強固になった。ルカクは強さと 高 さ 、 時 間を前 線 にもたらし 、 マティッチの高度な戦術眼はポール・ ポグバの守備負担を軽減するに違いない。レアル・マドリードとの合意説がささやかれたダビド・デ・ヘ アに関しても、ジョゼ・モウリーニョ監督が「今シーズンもわれわれのキーパーだ」と力説した。しかも来年1月には、ズラタン・イブラヒモビッチとの再契約が濃厚だ(その後、正式に決定)。実に強力な布陣である。 一方、マンチェスター・シティはカイル・ウォーカー、ベンジャミン・ メンディ 、ダニ ーロの獲 得 で3バックの人選がスムーズになり、ただでさえ魅惑の選手層を誇る中盤、前線にはベルナルド・シウバまで加入した。そして昨シーズンの大半を膝 の負傷で棒に振ったイルカイ・ギュンドアンも、もう間もなく戦列に復帰する。シティの攻撃陣がどのような構成になるのか、予想するたびにワクワクする。 しかし、最終ラインは相変わらず ヴァンサン・コンパニが頼りだ。満身創痍のキャプテンは、フル稼働 できるのだろうか。彼にまたしてもアクシデントが生じた 場合 、 ジョン・ストーンズとニコラス・オタメンディでまわすしかない。GKエデルソンが初年度のプレミアリーグに即フィットできるのか 、という不安もある。対するユナイテッドはGKデ・ヘア、センターバックにエリック・バイリー、フィル・ジョーンズ、クリス・スモーリング、ヴィクトル・リンデロフ、 そして12月にはマルコス・ロホが膝の負傷から復帰する予定だ。 コンパニという不確定要素を抱えるシティに対し 、 ユナイテッド は質量ともに申し分ない選手層を揃えている。稀代の策士モウリーニョはローテーションを図りつつ、 大胆不敵 にやりくりする だろう 。 チェルシー、インテル、レアル・マドリードなどで、就任2シーズン目に数多くのタイトルをもたらしてきた経歴もプラス材料だ。 今シーズンのプレミアリーグは、 ユナイテッドが手にするだろう。

文/粕谷秀樹

サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD189号 2017年8月23日配信の記事より転載

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