長友はインテルのスタメンを守れるのか 開幕戦で見せた”14度”の攻撃参加

インテルの長友佑都 photo/Getty Images

フィオレンティーナ戦の評価は分かれる

インテルに所属する日本代表DF長友佑都は、今夏に放出される可能性が高いと言われていた選手だ。長友に限らずインテルは昨季からサイドバックの質が悪いと指摘されてきただけに、長友が放出候補に含まれても不思議はない。しかし、20日に行われたセリエA開幕節のフィオレンティーナ戦で長友のパフォーマンスに手応えを感じたサポーターもいるのではないか。

この試合で目立っていたのは長友が得意とする攻撃参加だ。昨季チームの指揮を執ったフランク・デ・ブールはサイドバックの選手が積極的に攻撃参加することを好まず、長友の特徴が活きる機会が限られていた。しかし今季から指揮を執るルチアーノ・スパレッティの下では何度もサイドを上下動しており、フィオレンティーナ戦で長友は左サイドハーフのイヴァン・ペリシッチを14度も追い越している。サイドハーフを追い越していく長友の姿は近年のインテルではなかなか見られなかったもので、長友の良さが出ている場面も多かった。特に前半はベシーノに決定機となるパスを送るなど、しっかりチャンスも演出している。長友ほどではないが、右サイドバックのダンブロージオもサイドハーフの選手を追い越して攻撃参加した機会が6度あった。昨季のデ・ブール、ステファノ・ピオリ体制に比べてスパレッティのチームはサイドバックにも攻撃的な仕事が求められており、長友には明らかに後者のサッカーが合っている。

問題は安定感だ。良いときの長友は対面する相手にとって手に負えないほどのパフォーマンスを見せるが、悪い時には失点に直結するミスをしてしまいがちだ。今回のフィオレンティーナ戦でもミランダへのバックパスが短くなって相手に奪われそうになったり、胸トラップを失敗して相手にボールを奪われるなど、ミスと呼べるプレイもあった。昨季もこうしたミスは目立ち、ナポリ戦では痛恨のクリアミスから決勝点を許している。日本代表として臨んだ2018ロシアワールドカップ・アジア最終予選のタイ代表戦でも足を滑らせてクリアに失敗し、相手にPKを与える不安定なパフォーマンスを見せていた。
それもあってか、今回のフィオレンティーナ戦でも長友への評価はやや厳しかった。伊『sky SPORTS』は長友に5・5と平均以下の採点をつけており、想像以上に評価は低かった。同メディアは昨季終了後に2016-17シーズンのセリエAワーストイレブンに長友を選んでおり、前述したナポリ戦のクリアミスやUEFAヨーロッパリーグ・グループステージのサウサンプトン戦でのオウンゴールなど試合の勝敗を左右する致命的なミスがあったことを問題視していた。このフィオレンティーナ戦だけで評価が急上昇するはずもなく、サポーターの中にも長友の能力に不信感を抱いている者もまだまだ多いはず。特にポジショニングなど守備面の問題を指摘されるケースが多く、安定感は1つの課題だ。

それでもスパレッティのスタイルが長友の良さを引き出していたのは間違いなく、フィオレンティーナ戦での長友は攻撃参加するにあたって迷いがなかった。もちろんサイドバックとして守備面もケアする必要はあるが、やはり長友は豊富な運動量を活かして積極的に攻撃参加する展開の方が合っている。昨季はなかなかこうした姿を見ることはできなかったが、スパレッティの下でもう1度評価を高めるきっかけを掴むこともできるはずだ。すでにインテルはニースからブラジル人サイドバックのダルベルト・エンリケを獲得しており、バレンシアのサイドバックを務めたジョアン・カンセロの獲得も決定。穴と指摘されていたインテルに実力のあるサイドバックが2枚加わることになり、長友 のライバルになるのは間違いない。しかし、積極的な攻撃参加を見せたフィオレンティーナ戦のパフォーマンスを継続することができればスタメンを守ることも不可能ではないだろう。フィオレンティーナ戦のパフォーマンスは評価が分かれているが、復活への第1歩になると考えてもいいはずだ。

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