【UCL決勝直前#2】ジダン、”心のクラブ”を相手に史上初の連覇達成なるか

ジダンは大舞台での対戦を心待ちにしている

ジダンは大舞台での対戦を心待ちにしている

かつて所属したクラブと対峙するジダン監督 photo/Getty Images

サッカーに関して、誰にでも記憶に残っている試合、忘れられない瞬間があるだろう。筆者自身もこれまでの取材歴のなかでいくつか印象に残っているシーンが思い浮かぶが、 強烈なインパクトとして残っているのが2001-02のUCLファイナルだ。 場所はスコットランドのグラスゴーにあるハンプデンパーク。対戦カードはレアル・マドリード×レヴァークーゼン。このときのレアルにはジネディーヌ・ジダンがいて、サッカーファンにはもはや詳しい説明がいらない1-1で 迎えた前半44分に決めた左足ボレーシュートは“、史上最高に美しいボレー”としていまも語り継がれている。 あの瞬間に現場にいて、生で観戦できたのはサッカーを取材する者として本当に幸せなことだった。

そして、ジダンは現役時代に数々のタイトルを獲得しているが、UCLに優勝したのはこの一度だけだった。長い年月を経て、ジダンはレアルの指揮官となって昨季UCLファイナルに挑み、実に堅いサッカーでアトレティコ・マドリードを下して優勝してみせた。ジダンにとってレアルは、現役時代に唯一、監督となってはじめてUCL制覇を成し遂げたメモリアルなクラブで、これだけでも感慨深いものがある。 それなのに、今季もまた話題性のあるファイナルが実現してしまった。連覇を目指すジダン率いるレアルの前に立ちはだかるのは、かつてジダンがプレイしていたユヴェントスである。

「私の心にはいつもユヴェントスがある。大人として、選手として成長させてくれたからね。そのクラブとUCLファイナルで対戦できるのは特別な ことだ」と語るのはジダンで、対戦を心待ちにしている。無論、簡単に勝てる相手ではないことは十分に理解している。 「(ユヴェントスから)得点を奪うのは本当に難しい。また、彼らの特徴は守備の強さだけではない。攻撃陣も素晴らしい。両者ともにファイナルを戦うに相応しいチームで、われわれが優勝候補の本命だとは考えていない」 ジダンにとってユヴェントスは特別なクラブで、だからこそ特徴を知り尽くしている。

また、現在のレアルはターンオーバーすることで好調をキープしており、リーガでは第37節終了時点で5連勝、首位に立っている。「シーズン終盤を迎えると選手たち は疲労しているものだが、われわれは反対に良いフィジカルをキープしている」と語るのはジダンだが、それは偶然の産物ではなく自らの選手起用による賜物で、うまくチームをマネージメントしている。現役時代から百戦錬磨の男が率いるレアルは、UCLとリーガの2冠を間違いなく射程圏内にとらえている。

レアルの選手たちは経験豊富 勝ち方を知っている選手ばかり

レアルの選手たちは経験豊富 勝ち方を知っている選手ばかり

勝利の味をしめた男たちばかりだ photo/Getty Images

そもそも、レアルはどのチームよりもUCLに“優勝慣れ”している。過去11回の優勝はもちろん最多で、2位のミランに4回の差をつけている。 最近では2013-14、15-16を制しており、いまのチームには優勝の味を知っている選手が多く、これはユヴェントスに対してアドバンテージとなる。とはいえ、もちろん選手たちは油断していない。

「(決勝戦は)簡単な戦いにはならない。僕たちの調子は良いが、フィフティ・フィフティだ。優勝するためには、最後まで戦わないといけないだろう」

と語るのは接戦が予想されたアトレティコとの準決勝第1戦でハットトリックを達成したクリスティアーノ・ロナウドである。追記すると、C・ロナウドはバイエルン・ミュンヘンとの準々決勝第2戦でも3得点しており、UCL史上初となる決勝トーナメントでの2試合連続ハットトリックを達成している。 優勝経験という意味では、ここ数年のC・ロナウドはクラブではもちろん、ナショナルチームでもタイトルを獲得( ポルトガル代表としてEURO2016優勝)するなど充実したサッカー人生を送っている。C・ロナウドだけでなく、セルヒオ・ラモス、トニ・クロース、カリム・ベンゼマなど、 前述したとおりチームには優勝する方法を知っている選手が多い。「僕たちはレアル・マドリードで、豊富な経験があることを示すことができた」とは、アトレティコとの準決勝第2戦を終えたあとのC・ロナウドである。

極限の疲労を乗り越えろ 歓喜が待っている

極限の疲労を乗り越えろ 歓喜が待っている

長いシーズンを終えた後に開催されるファイナル photo/Getty Images

例年、シーズンの最後に開催され るUCLファイナルは選手たちに疲労があり、動きの少ない堅い試合、我慢比べになるケースが多い。昨季のレアル×アトレティコによるファイナルは消耗戦となり、最後はPK戦での決着となった。この5年を振り返っても、3試合が90分で決着がつかず延長戦となり、2試合がそのままPK戦までもつれている。そして、レアルはこのうち延長戦、PK戦を一度ずつ経験し、どちらの試合にも勝利している。堅い試合、耐える試合になったとしても柔軟に対応できるのがレアルで、だからこそ最多の優勝回数を誇っていると言える。ただ、今季のレアルは現時点で各選手のフィジカルコンディションが良く、来るべきユヴェントス戦は見どころの多い試合になることが予想される。

「もう一度ファイナルの舞台に立つことができてうれしい。(UCL決勝に進出するのは)とても難しいことだけど、僕たちはそれに値するチームだと思う」
C・ロナウドの言葉からは、経験者としての自信と余裕が感じられる。ジダンに率いられたレアルは、文字どおり王者としてファイナルを迎える。あとは、ミレニアム・スタジアム(カーディフ /ウェールズ)で力を発揮するだけだ。

文/飯塚 健司

サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。

theWORLD186号 2017年5月23日配信の記事より転載

記事一覧(新着順)

注目の動画記事

動画記事一覧(新着順)

注目キーワード

CATEGORY:コラム

注目タグ一覧

最新号を無料配信中!
電子マガジン「ザ・ワールド」
No.191 激化するビッグクラブの勢力争い
theWORLD(ザ・ワールド)は世界中のサッカーを網羅する、日本初のスマートデバイス対応フリーミアム 電子マガジン! 業界屈指の執筆陣によるオリジナルコ ンテンツを毎月23 日に刊行しています。購読にはID登録が必要です。

雑誌の詳細を見る

人気記事ランキング

INFORMATION

記事アーカイブ