【特集/熾烈なる欧州カップ戦出場権争い 1】リーグテーブルはまだまだ動く プレミア最終盤は混沌の極致へ

優勝はチェルシーかスパーズ アーセナルはついに……

 優勝はチェルシーかスパーズ アーセナルはついに……

王様イブラヒモビッチを負傷で欠くユナイテッドは、俊英ラッシュフォードの得点力に期待がかかる photo/Getty Images

プレミアリーグの優勝争いは、チェルシーとトッテナム・ホットスパーに絞られた。ともに32試合を消化した時点で4ポイント差。12節から首位を行くチェルシーが依然としてポールポジションに立っているが、アントニオ・コンテ監督のスタイルが過度な運動量を強いるため、疲労の色がいよいよ隠せなくなってきた。

また、メンバーを固定して組織の完成度を高めた結果、主力と控えの間には戦術理解度でも大差がつき、32節のマンチェスター・ユナイテッド戦ではプレミアリーグ2試合目の先発となったクルト・ズマが連携ミスを頻発している。さらに、プロモーションビデオの撮影中に足首を痛めたティボー・クルトワ、体調不良により4月18日から二日間入院していたガリー・ケイヒルの回復具合も気がかりだ。

一方、スパーズは負傷のために戦線を離脱していたハリー・ケインとヴィクター・ワニャマが相次いで復帰し 、23節のサンダーランド戦で膝を痛めた後、3か月近くリハビリに明け暮れていたダニー・ローズも復帰 間近と伝えられている。大詰めを迎 えて万全に近い陣容が整いつつある、とみていいだろう。連携面でもチェルシーほど主力と控えの間に理解力の差はなく、アーセナル戦とユナイテッド戦を残しているとはいえ、今シーズン15勝2分無敗のホームゲームである。不安材料にはならない。

スパーズはこのまま勝ち進むかもしれない。チェルシーはポイントをロスする恐れがある。数週間前までとは様相が一変した。今シーズンのプレミアリーグは、ノースロンドンに凱歌が上がる可能性も膨らんできた。しかし、同じノースロンドンでもアーセナルは……。

4位マンチェスター・シティとは7ポイント差。まだ逆転できる範囲だが、アーセナルはモチベーションを完全に失った。アーセン・ヴ ェンゲル監督の進退、メスト・エジルとアレクシス・サンチェスの去就など、ピッチ外の雑音が悪影響を及ぼし、集中力を欠いたプレイも少なくはない。とくにアウェイゲームは2-1の勝利を収めた33節のミドルズブラ戦まで、3試合連続して3ゴールを奪われる失態も演じている。

「4位以内は難しくなった」。ヴェンゲル監督も、白旗を掲げたような発言でサポーターの怒りを買っている。ここぞというときに喝を入れるチームリーダーも見当たらない。アーセナルは17年守りつづけたチャンピオンズリーグの座を、ついに失う。覚悟した方がいい。

混沌の3位以下 優位に立つのはマンチェスター勢か

混沌の3位以下 優位に立つのはマンチェスター勢か

ジェズスにも復帰のメドが。シティは尻上がりに調子を上げそうだ photo/Getty Images

3位以下は混沌の様相を呈する。5位ユナイテッドとチェルシーのポイント差は15、スパーズとは11。残り試合数から考えれば逆転はありえないが、3位リヴァプールと4位シティに追いつき、追い越す可能性はまだ残されている。

マンチェスター・ダービーとスパーズ、アーセナルとの対戦を残し、なおかつヨーロッパリーグもベスト4に進出したため、チーム全体の疲労度が不安視されるのは当然だ。しかし、厳しい日程は集中力の維持というメリットも生まれる。また、2-0の勝利を収めた32節のチェルシー戦は、いわゆる〈6ポインター〉。単なる1勝ではない。ユナイテッドとジョゼ・モウリーニョ監督に “勝つ術”を再起動するきっかけになり、最終盤に向けたアドバンテージとしてプラスに作用したとしても不思議ではないだろう。

ヨーロッパリーグ準々決勝セカンドレグで負傷したズラタン・イブラヒモビッチ、マルコス・ロホは数週間の戦線離脱を余儀なくされるとはいえ、大化けの予感が漂うマーカス・ラッシュフォードに続き、ティモシー・フォス・メンサーとアクセル・ツアンゼベには絶好のチャンスが訪れた。 彼らのポテンシャルは、ラッシュフォードにまさるとも劣らない。試合消化数にばらつきはあるものの、リヴァプールと6ポイント、シティとは3ポイント差。完全に射程内だ。優勝候補筆頭の呼び声が高いヨーロッパリーグも含め、二兎を追う者が二兎を得るか──。

さて、リヴァプールはひたすら一兎を追い求めた。チャンピオンズリーグ出場権の奪還をめざし、積極的に闘いつづけた。しかし、負傷者が続出している 。30節のエヴァートン戦で左足首を痛めたサディオ・マネは今シーズン絶望。踵の負傷で長く戦列を離れているジョーダン・ヘンダーソンは復帰のめどが立たず、イングランド代表の試合で左脛に違和感を訴えたアダム・ララーナは、5月初旬まで欠場を余儀なくされる。この3選手は代えが利かず、彼らを欠いたリヴァプールがもう一度ギアを上げられるとは考えづらい。しかも、ユルゲン・クロップ監督が求める積極性は運動量と直結しているため、多くの選手の足色が鈍ってきた。動きたくても動けないのだろう。そして、上位との対戦が終わった日程がアドバンテージになる、という 一部メディアの指摘は的外れだ。今シーズンのリヴァプールは、実に5つも取りこぼしている。多くの主力が傷つき、チームのスタミナが切れ、苦手とする下位との対戦が続く……。マージ―サイドの名門は、厳しい状況に追い込まれつつある。

リヴァプールと異なり、シティは取りこぼしが少ない。いや、まったくない。0-4で敗れた21節のエヴァートン戦を強引に当てはめても、ポイントを完全にロスしたケースはこの1試合だけだ。残る7試合は4月27日のユナイテッド戦を除くと、すべて下位との対戦である。大崩れする確率は極めて低い。

さらに、ヴァンサン・コンパニの復帰も好材料だ。32節のサウサンプトン戦ではヘディングで決めた先制ゴールも含め、勝利に大きく貢献した。だれもが認めるチームリーダーの帰還により、シティはパフォーマンスが引き締まってきた。しかも5月初旬には、ガブリエウ・ジェズスが中骨折の骨折から戻ってくる。膝の手術で長期欠場中のイルカイ・ギュンドアンを除き、シティも万全に近い陣容を整えられそうだ。

クラブとしての経験値にまさるユナイテッドが自信を取り戻し、個々のタレントで他を圧倒するシティに計算できる戦力としてコンパニ、ジェズスが加わるのだから、チャンピオンズリーグの出場権争いはマンチェスターの2チームに分があるといって差し支えないだろう。魅力的なフットボールを展開してきたリヴァプールは、最終コーナーでガス欠。現状の勝ち点差を維持するためには、尋常ならざる精神力が必要となる。プレミアの欧州カップ戦出場権争いは、まだまだ予断を許さない状況にある。

文/粕谷 秀樹

サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD185号 2017年4月23日配信の記事より転載

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