名良橋晃の定点観測♯30「個性派が多いJ2。多くの引き出しがないとJ1昇格は勝ち取れない」

スタイルを貫くか結果重視か。風間監督で名古屋はどうなる

スタイルを貫くか結果重視か。風間監督で名古屋はどうなる

東京Vを指揮するロティーナ監督の手腕にも注目している Photo/Getty Images

毎シーズンJ2の戦いは厳しく、私は個人的にJ1に負けず劣らず見どころが多いと感じています。昇格争い、残留争いはもちろん、各クラブがどんな戦いをするか、とても楽しみにしています。なぜなら、J2は監督のカラーを出した個性的なチームが多く、そのぶつかり合いは非常に見応えがあるからです。

1998年フランスW杯をともに戦った相馬直樹監督(FC町田ゼルビア)、同い年の片野坂知宏監督(大分トリニータ)など同世代の指揮官をはじめ、今シーズンはロティーナ監督(東京ヴェルディ)、フアン・エスナイデル監督(ジェフユナイテッド千葉)、リカルド・ロドリゲス監督(徳島ヴォルティス)という3名の新しい外国籍監督。さらには、イビチャ・オシムさんの教え子で多彩な戦術を持つ間瀬秀一監督(愛媛FC)などもいます。それぞれの監督に率いられたチームがどんな個性を発揮するのか。そして、どんな結果を生むのか──考えただけでもワクワクしてきます。

とくに、今シーズンは名古屋グランパスという“面白い存在”がいます。J2に降格したなか、風間八宏監督を招聘し、佐藤寿人を筆頭に新たな戦力を積極的に補強しました。風間監督は川崎フロンターレでは長いスパンで戦術の浸透を図り、就任5年目だった昨シーズンにJ1、天皇杯で優勝争いにからみました。しかし、最初のころは結果が出ず、苦戦した時期がありました。一方で名古屋グランパスは「1年でのJ1昇格が義務」だと明言しています。そうなると、結果重視のスタイルで戦うのか、それともやはりポゼッションベースの風間スタイルを貫くのか。新たに加わった3名のブラジル人選手の起用方法も含めて、風間監督の戦術に注目しています。

同じく降格となった湘南ベルマーレは、曺貴裁監督が引き続き指揮を執ります。2014年にJ2を戦ったときはシーズン序盤から他チームを圧倒して昇格を決めましたが、今シーズンは同じようにいかないでしょう。いまはもう、すべてのチームがそのサッカーを熟知しています。今オフに菊池大介(→浦和レッズ)や三竿雄斗(→鹿島アントラーズ)が移籍したように、毎年のように主力を引き抜かれてもいます。

曺貴裁監督の戦術はシステムが流動的で、展開によって目まぐるしく選手たちが動きまわります。すでにこのサッカーが浸透していますが、それだけに対戦相手も良さを消そうと十分に対策を練ってきます。しかも、J2はそういう部分に重きを置くチームが多いです。鍵を握るのは、表原玄太(←愛媛FC)、野田隆之介(←名古屋グランパス)、秋野央樹(←柏レイソル)など新加入選手でしょう。彼らの力をチームへ昇華する作業が遅れると、苦しいシーズンになるかもしれません。

長丁場の戦いですが、やはりスタートダッシュが大事です。昨年のコンサドーレ札幌は序盤、中盤で勝点を積み上げ、終盤に苦戦するも逃げ切って昇格を決めました。今シーズンのJ2は監督、選手の入れ代わりが多く、昨シーズンの成績はあまり参考になりません。すなわち、開幕直後から見逃せない試合が続くことになるでしょう。


似ている東京Vと千葉。面白さと危険性が共存

似ている東京Vと千葉。面白さと危険性が共存

開幕戦に勝利した千葉も面白さと危険性が共存している Photo/Getty Images

新たにロティーナ監督が指揮を執る東京Vは最終ラインが3バックで中盤の両サイドがワイドに開くことで、横幅を広く取ったサッカーをしています。サイドを重視して高い位置でボールを奪う意識がベースにあり、最終ラインに加わった永田充(←浦和レッズ)がうまくラインを上げ下げし、ボランチの中後雅喜、橋本英郎(←セレッソ大阪)がサイドにボールを散らす小気味よいテンポのサッカーを展開しています。

ただ、最終ラインが高く両サイドの裏にスペースがあるため、中途半端にボールを取られるとカウンターを受ける危険があります。機能すれば面白いですが、後手を踏んでリアクションを強いられる展開になると両サイドの裏を狙われるでしょう。前述したとおり、J2は相手の良さを消そうとするチームが多いです。攻撃的に戦おうとするチームに対して、「甘く見るなよ」という強い気持ちで抗ってきます。

もとより、シーズン中はすべてがうまくいくことはなく、いろいろな出来事があります。そうしたときに必要なのは指揮官の引き出しで、その都度柔軟な対応が必要になってきます。これはフアン・エスナイデル監督が率いるジェフ千葉にも当てはまるかもしれません。東京Vと同じく3バックを採用し、最終ラインが高いポジションを取っています。「前線からボールを奪いにいく」という狙いが感じられてハマれば面白いですが、最終ラインの選手たちにスピードが求められます。ボールを奪われ、早いタイミングでロングボールを出されたときの対応をしっかり徹底しておかないと苦戦する可能性があります。

そういった観点でジェフ千葉の補強をみると、最終ラインは西野貴治(←G大阪)しか獲得していません。「前でボールを奪う」という自分たちがやりたい攻撃的なサッカーを貫いて勝点を積み上げることができれば良いですが、夏場を含めたシーズンを通して戦い抜けるかどうか正直心配です。結果を重視し、ときには柔軟な対応をすることも必要でしょう。

J2は個性的なチームが多く、いろいろな引き出しがないと乗り切れない本当に厳しいリーグです。今シーズンからJ2・J3入れ替え戦がなくなったことで、終盤を迎えて残留争いにからんでいるチームは必死のアクションを見せるはずです。こうしたチームの反抗を跳ね返す力、シーズン中にうまくいかない時期を迎えても立て直せる監督力や選手層がないと、間違いなくJ2は勝ち抜けません。

構成/飯塚健司

theWORLD183号 2017年2月23日配信の記事より転載

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