【特集/UCLラウンド16プレビュー 3】いざ打倒レアルへ ナポリが敢行すべき戦術はこれだ! レアル×ナポリ

難敵との対戦となったナポリ

難敵との対戦となったナポリ

名門ナポリを牽引するハムシク photo/Getty Images

ナポリのCL決勝トーナメント1回戦の相手はレアル・マドリードだ。完全なるハズレクジである。だが、ナポリは悪いチームではないし、番狂わせはいつでも起こり得る。そのために、マウリツィオ・サッリ監督はどう戦うべきなのだろうか。勝利への道を勝手に分析してみたい。

ありきたりな戦い方では、実力差が明確に出てしまう。波乱の王道は奇策だ。今シーズンのナポリには、奇策と呼ぶにふさわしいスタイルができつつある。昨年夏、ナポリは大エースのゴンサロ・イグアインをユヴェントスに引き抜かれた。その後釜としてやってきたアルカディウシュ・ミリクが予想外の好スタートを切ったが、10月に前十字じん帯を断裂し、長期離脱を強いられている。その後、勝ちきれない試合が目立ったナポリだが、最近は国内で安定して白星を手にするようになった。その要因が、ベルギー代表のドリエス・メルテンスだ。サッリ監督は、シーズン途中からCFのポジションに169cmのアタッカーを置くようになった。サイドで前を向いてボールを受け、スピード豊かな突破でチャンスをつくるというスタイルでやってきた彼が最前線に入ることは大きな驚きだったが、これがハマり始めている。メルテンスは14-15シーズンが6得点(31試合出場)、15-16シーズンが5得点(33試合出場)で、今シーズンはすでに12得点を決めている。

「ディエゴ・アルマンド~」といえば、続く言葉は一つしかない。元アルゼンチン代表で、ナポリのレジェンドでもあるマラドーナだ。しかし、12月18日のトリノ戦の翌日に出た『Corriere dello Sport』紙の一面には「ディエゴ・アルマンド・メルテンス」という文字がデカデカと躍った。1試合4ゴールを達成したメルテンスのパフォーマンスに対する最大級の賛辞であることは言うまでもない。

ナポリは1月の移籍市場でジェノアからレオナルド・パヴォレッティを獲得した。188cmの長身アタッカーで、本来のナポリのサッカーをするための補強だ。それでも、サッリはメルテンスのCF起用を続けている。指揮官には、これをレアル・マドリード戦でも続けてもらいたい。パヴォレッティでは無理だと言いたいのではない。ただ、3トップの中央で構える長身FWなど、レアル・マドリード守備陣が数限りなく返り討ちにしてきたはずだ。イグアイン級ならまだしも、である。となれば、CFであってCFではない独特の動きを見せるメルテンスの爆発力で勝負するところが見たい。そもそも、ロレンツォ・インシーニェとメルテンスがいる時点で、どちらかをベンチに置かなければいけないという悩みがあったナポリにとって、現在の戦い方は持ち駒を最大限に生かす一つの解決策でもあるのだ。

ハムシクには我慢が必要?

ハムシクには我慢が必要?

その采配に多くの注目が集まる photo/Getty Images

ナポリの中心は主将のマレク・ハムシクだ。彼がボールを受けて突破してパスを出し、スペースをつくる。レアルが押し込む展開が想定されるこのカードでハムシクが沈黙してしまうのはまずい。ハムシクはある程度ポジションに自由を与えられており、ビルドアップの際にはかなり下がってボールを引き出すということまでしている。だが、限られた攻撃の機会でハムシクに決定的な仕事をしてもらおうと考えるのであれば、前線に近い位置にとどまってほしいところだ。スピードと突破力のあるインシーニェとメルテンス、抜群のタイミングでスペースに飛び出すホセ・カジェホン、前線の選択肢はよりどりみどり。その選択肢たちに強みを発揮してもらうために、ハムシクには決定的な仕事ができる位置にいてほしい。

どのポジションをとっても、ナポリはレアル・マドリードのクオリティーに及ばない。特に勝敗に直接関与することが多い中盤の攻防では、あまりにも分が悪い印象だ。おそらく、レアルに行ってポジションを獲得できる選手はナポリにいないだろうし、セリエA全体を探してもいるか分からないという次元だろう。ならば、ヘタに張り合って体力を削るより、1試合の中に何度か訪れるはずのチャンスを生かす準備を完璧にしておくことを意識すべきではないだろうか。

レアルの油断を利用せよ!

レアルの油断を利用せよ!

王者レアルもこの一戦に闘志を燃やしている photo/Getty Images

あくまで試合展開次第だ。だが、それすらも味方にしてこそジャイアント・キリングは達成される。波乱が起こるときの最も多い要因は、優位とされる側の油断だ。当然、この場合はレアルに心の隙がある。口では誰もが否定するし、そうならぬよう努めるものだが、やはり完全にその隙を消すのは不可能だろう。真っ向勝負が厳しい相手なら、そこが一番の勝機だ。だが、試合は短くても180分間。早い段階で本気にさせてしまうと、一気にまくられてしまう。そういった意味で、ファーストレグは偽りの姿を見せたい。メルテンスを外してフィジカル重視のメンバーとし、耐え抜いて0-0。ホームでのセカンドレグで1点をもぎ取り、相手が焦りだした頃には時すでに遅し――。波乱のシナリオとしては、こういったものが最も簡単に予測できるように思う。もちろん、ファーストレグで大勝できるなら、それがベストだ。しかし、中途半端に刺激して本気にさせてしまっては狙えたはずの隙も消えてしまうだろう。ナポリにとって、レアル・マドリード戦は失う物がない気楽なビッグゲーム。サッリ監督には、思う存分、普段できないアプローチを見せてもらいたいものだ。

文/伊藤 敬佑

イタリア・セリエAの熱に吸いよせられ、2007年、大学卒業と同時にイタリアへ渡る。以後、現地在住のフットボールライターとして、イタリアサッカーを追い続ける。ミラノを拠点に、インテルやミランを中心に取材活動を展開し、現地からの情報を提供している。Twitterアカウント: keito110

theWORLD182号 2017年1月22日配信の記事より転載

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