【特集/UCLラウンド16プレビュー 2】次々にタレントを創出するドルトムント 若手の積極起用でラウンド16突破へ ベンフィカ×ドルトムント

1月の合宿でケガ人が多発も選手層の厚さでカバーする

1月の合宿でケガ人が多発も選手層の厚さでカバーする

積極的な若手起用で戦力の底上げを図ったトゥヘル監督 photo/Getty Images

ブンデスリーガが冬期休暇の間、ドルトムントはスペインのマルベーリャでキャンプを行なった。アフリカ・ネイションズカップに出場したガボン代表のピエール・エメリク・オバメヤンは不参加だったが、トーマス・トゥヘル監督のもと主力選手たちが集まり、PSVアイントホーフェン、スタンダール・リエージュとのテストマッチなどを含む精力的なメニューをこなし、チーム強化に努めている。

しかし、キャンプ以前、キャンプ中も含めてドルトムントには多くの負傷者が出ている。ロマン・ビュルキ、ネベン・スボティッチ、スベン・ベンダー、 ソクラティス・パパスタソプーロス、セバスティアン・ローデ、ラファエル・ゲレイロ、ヌリ・シャヒン、マリオ・ゲッツェ、マルコ・ロイス、ウスマン・デンベレなど……。このうち、現時点で戦列に復帰したのはゲレイロ、ベンダー、ロイス、ゲッツェ。チームはキャンプを終えて1月17日にドルトムントへ帰郷したが、多くの主力が全体練習に参加できていない。これだけケガ人が出るとチームのバランスが崩れてもおかしくないが、ドルトムントには質の高い次世代のスター候補が揃っている。ラウンド16で対戦するベンフィカはチーム全体から闘争心が漲る難敵だが、たとえベストメンバーが揃わなくてもここで足元をすくわれることはないだろう。なにしろ、不十分な戦力だったにも関わらずPSVに4-1、S・リエージュには3-0で勝利し、さらには帰郷後に行なったパーダーボルンとの強化試合にも6-1で快勝している。

そもそも、ドルトムントの選手層は厚い。というより、トゥヘル監督の積極的な采配によって戦力の底上げがなされ、誰がピッチに立っても安定したパフォーマンスを発揮できるチームに仕上がっている。マッツ・フンメルス、イルカイ・ギュンドアン、ヘンリク・ムヒタリアンなど昨季までの主力が揃って移籍したことでシーズン前は苦戦が予想されたが、下馬評を覆す早いペースでチームとしてまとまり、 タテに速いアグレッシブなサッカーを展開している。ブンデスリーガ、UCLのグループリーグを通じて、フェリックス・パスラック、クリスティアン・プリシッチ、エムレ・モル、ミケル・メリノなど18歳~20歳の選手たちがトゥヘル監督の信頼を得てピッチに立ち、結果を残すことで自信を深めてきた。また、21歳のユリアン・ヴァイグル、22歳のマティアス・ギンターは年齢を超越した落ち着きや判断力があり、なおかつスピードもある。キャンプ中は負傷していたデンベレもまだ19歳だが、前半戦ですでにスピードを生かして絶大な存在感を見せており、復帰が期待されている。

ただ、一方では将来を考えるとここでムリをさせる必要はなく、万全の状態になるまでじっくり調整する可能性もある。なにしろ、ドルトムントの各選手はいずれも前方への推進力があるうえ、トゥヘル監督によってタテへ速いサッカーを徹底的に植えつけられてきた。 結果として、グループリーグ史上最多となる6試合で21点という爆発的な得点力を見せるに至っている。ケガ人が出ることを見越していたわけではないだろうが、トゥヘル監督の積極的な若手起用がここにきて大きな意味を持とうとしている。ベ ンフィカ戦を迎えて多くのケガ人がいたとしても、ドルトムントがラウンド16で消えることはないだろう。

香川が出場するかどうかも見どころのひとつになる

香川が出場するかどうかも見どころのひとつになる

香川に出場機会は与えられるのだろうか? photo/Getty Images

若く、動きにキレがある選手が多いドルトムントのなかで、香川真司は例年よりも出場数を減らしている。ケガもあったが、ブンデスリーガ前半戦の出場が7試合、UCLの出場が2試合となっている。出場するときは[4-2-3-1]のトップ下、[4-1-4-1]のインサイドハーフなどでのプレイが多く、同ポジションを必要としない[3-4-3]や [4-3-3]で戦うときはなかなかピッチに立てていない。もとより、ポジションを争う選手は多く、ゲッツェ、ロイス、デンベレ、カストロ、アンドレ・シュールレなど錚々たるライバルが揃っている。ゲレイロ、エムレ・モルという選択肢もある。

では、ベンフィカ戦に香川が先発する可能性はどれぐらいあるか? まず、トゥヘル監督がどういったシステムを選択するかがポイントになるが、 これまでUCLを3バックで戦ったことはない。ベンフィカはオーソドックスな[4-4-2]で戦いを挑んでくることが予想され、そうなると攻守のバランスに優れた[4-1-4-1]か[4-2-3-1]を選択すると考えられる。もしそうなると、トッ プ下でプレイする香川にも出場のチャンスがありそうだ。 実際はこの一戦までにまだ時間があり、数名の負傷者が復帰すると考えられる。前述した猛者たちとのポジション争いを制して、香川が先発の座を勝ち取れるかどうかもこの一戦の見どころのひとつになる。

ベンフィカではバルセロナの下部組織出身で21歳のアレハンドロ・グリマルドが面白い。足元の技術力が高く、スピードもあるグリマルドは複数のビッグクラブが熱い視線を送る左SBで、ベンフィカもその能力を高く評価している。両者の契約は2021年までとなっており、満了を待たずに獲得するためには約70億円の解除金が必要となる。注目度が高いドルトムント戦は、グリマルドにとって自分を売り込む絶好の機会となる。 ベンフィカにも若い選手が多く、他にもビクトル・リンデロフ(22歳)、フランコ・セルビ(22歳)、ゴンサロ・グエデス(20歳)などがいる。ドルトムントと比べると小粒感が否めないが、彼らを含めて各選手がしっかりと“闘う” チームで、2勝2分け2敗でグループリーグを突破しており、勝負強さ、粘り強さがあることをすでに証明している。とはいえ、こうした事実を考慮しても、やはりドルトムントの優位は動かないと考えられる。

文/飯塚 健司

サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。Twitterアカウント : scifo10

theWORLD182号 2017年1月22日配信の記事より転載

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