名良橋晃の定点観測♯29「2017Jリーグは移籍多数で戦力に変化あり。鹿島を止めるクラブは?」

充実した補強に成功した鹿島。浦和は強い意気込みを持つ

充実した補強に成功した鹿島。浦和は強い意気込みを持つ

昨季2冠の鹿島をどのチームが止めるかが見どころのひとつになる photo/Getty Images

今オフは中村俊輔、大久保嘉人、家長昭博などチームの主力だった選手の移籍が多く、これによって各クラブがどんなチームに仕上がるのか注目されます。また、J1の4クラブ、J2では実に10クラブが監督を変えています。そうしたなかレギュレーションにも変更があり、J1は1シーズン制に、J2とJ3は入れ替え戦がなくなりました。なにかと話題が多いJリーグですが、まず取り上げたいのはやはりACLに臨む4チームです。

昨シーズンに2冠(Jリーグ&天皇杯)を達成した鹿島アントラーズは、ペドロ・ジュニオール、レオ・シルバ、金森健志、三竿雄斗といったJリーグで実績のある選手に加えて、元ブラジル代表のレアンドロを獲得して戦力を着実に高めています。今シーズンは国内の3つのタイトルに加えて、ACL、そしてクラブW杯でも優勝を狙う1年になります。そういった意味で、国内ではどこが鹿島を止めるのかが争点になります。

ただ、開幕までの流れをみると、タイ遠征、宮崎合宿、ゼロックス杯とスケジュールが立て込んでいて、この期間に新たに加入した選手たちがどれだけチームにフィットできるかがポイントになります。時間がかかるようだと、序盤は苦しむかもしれません。とはいえ、鹿島のチーム作りがブレることはありません。これまで継続してきたスタイルのなかに、新戦力の特徴を融合させていくことになります。
ひとつ気になるのは移籍の噂がある柴崎岳の動向ですが、仮に抜けたとしても小笠原満男、永木亮太、レオ・シルバ、三竿健斗がおり、中盤は選手層が厚いため守備に関してはあまりマイナスではないと思います。一方で、いずれもボールを奪う力がある選手たちですが、中盤の底から攻撃をどう組み立てるかを考えると多少の不安があるのも事実です。それでも、悲観的になる必要はないと思います。

浦和レッズは昨季チャンピオンシップで敗れた雪辱を果たすべく、強い意気込みを持って臨む1年になります。菊池大介、ラファエル・シルバといった即戦力に、オナイウ阿道など将来性のある選手も獲得しており、バランスの良い補強を行なっています。鹿島と同じく、J1はもちろん、ACLでも優勝争いにからむ存在だと言えます。

新たに鬼木達監督が率いる川崎フロンターレは、風間スタイルを踏襲するなか、どう“鬼木カラー”を打ち出していくかが見どころになります。また、前線を見たときに大久保嘉人が抜けたことで小林悠にかかる負担が大きくなると考えられるので、新加入の家長昭博を含めてまわりの選手がどれだけフィニッシュにからめるかがポイントになると思います。

ACLにプレーオフ(2月7日)から出場するG大阪は、他チームよりも仕上がりが早いと予想されます。阿部浩之、大森晃太郎が移籍しましたが、泉澤仁や井出遥也を獲得しているし、アデミウソンもいます。問題はフィニッシュの部分で、パトリック に変わるストライカーの出現が期待されます。攻撃のカタチは作れると思うので、やはり前線に頼りになるFWがほしいところです。

ニュー・マリノスはどうなる? 磐田には期待せざるを得ない

ニュー・マリノスはどうなる? 磐田には期待せざるを得ない

モンバエルツ監督の期待に若手が応えたなら、横浜FMは面白い存在になる photo/Getty Images

FC東京、柏レイソル、ヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島も面白い存在です。FC東京、神戸は積極的な補強をしていますが、とくに神戸は田中順也、大森晃太郎、高橋秀人などJ1で経験のある即戦力を獲得しており、浦和同様に今シーズンにかける強い意気込みを感じます。昨シーズン得点王のレアンドロと、新外国籍選手のウエスクレイの連係がうまくハマると、大きな力を発揮すると思います。元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキを獲得してもしなくても、上位争いにからんできそうです。

ハモン・ロペスを獲得した柏は攻撃力が増しています。クリスティアーノ、ディエゴ・オリヴェイラ、伊東純也、ハモン・ロペスが揃ってピッチに立つところは想像しただけでも楽しみです。ただ、どう守備のバランスを取るのかという課題があります。4人を同時に起用するとボランチに守備の負担がかかりますが、茨田陽生、秋野央樹が移籍しており、この辺りの問題をいかに解消するかがカギだと思います。

広島は佐藤寿人が移籍し、森崎浩司が引退しました。昨季得点王のピーター・ウタカの去就もはっきりしていません。こうした事実を考えると、森保一監督のもと新しい広島を作る1年になるのではないかと見ています。

なにかと世間を騒がせている横浜F・マリノスも、“ニュー・マリノス”として違うチームになる可能性があります。エリク・モンバエルツ監督が積極的に起用すると思われる若い選手たちがどう結果を出すかにすべてがかかっていて、どちらに転ぶかわかりません。そうしたなか、私は現役時代にSBだったので新加入の松原健、山中亮輔の両SBのプレイを楽しみにしています。彼らのアシストから、ポルトガル人FWのウーゴ・ヴィエイラがフィニッシュするのが新たな得点パターンになると思います。若い選手が多いので、横浜FMは良い流れで戦えれば一緒に成績もついてくる可能性があります。

ジュビロ磐田も忘れてはいけないチームのひとつで、注目せざるを得ません。中村俊輔を筆頭に、ジェイが抜けた前線に川又堅碁、問題があった守備を強化するべくCBには高橋祥平を獲得し、堅実な補強に成功しています。おそらく、中村俊輔はある程度自由にプレイすると思います。経験のある彼がまわりの選手をどう生かし、同時にどう生かされるかがポイントで、連係がうまくいけば昨シーズン以上の成績を期待できると思います。

ほかにも、アルビレックス新潟の三浦文丈監督がはじめてのJ1でどんな采配を見せるか、ヴァンフォーレ甲府の吉田達磨監督がリアクションサッカーをベースとするチームのなかでどう自身の持ち味であるポゼッションサッカーを打ち出していくかなどにも注目しています。いずれにせよ、今シーズンからJ1とJ2に加えて、J3もDAZNで全試合がインターネット配信されます。新たにJリーグを目にする人もいるでしょう。いわば、今シーズンは改革元年とも言える1年になります。Jリーグの魅力を全世界に伝えるためにも、カテゴリーを問わず選手たちには必死に戦う姿を見せてほしいです。

構成/飯塚健司

theWORLD182号 2017年1月23日配信の記事より転載

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