【特集/サムライフットボーラーの現在地 1】代えがきかない存在感 ブンデス参戦組が得た自信と充実

代表でも頭角を現した大迫&原口に足りないもの

クラブで得た充実と自信は、代表に直結する。2-1で勝利した11月15日のロシアW杯最終予選の大一番、サウジアラビア戦に先発出場した大迫勇也と原口元気のプレイを見て、そう実感せずにはいられなかった。

そのサウジアラビア戦に1トップで出場した大迫は、ケルンで迎える3年目の今季、完全にFWとしての地位を確立している。チーム事情により、トップ下でプレイすることもあるが、基本的にはアントニー・モデストと2トップを組み攻撃を牽引。前半戦を終えて15試合に出場と、主力を演じている。大迫本人も「トニー(モデスト)とは、お互いをよく理解できている。彼がどう動くか分かるし、彼も僕がどう動くかを分かってくれている」と地元紙に語っている。

相棒のモデストが、前半戦だけで12得点を量産する好調も相まって、ケルンは前半戦を7位で折り返した。ペーター・シュテーガー監督も「これほど勝ち点を重ねられるとは思ってもいなかった」と選手たちの奮起を讃えつつ、大迫についても「インテリジェンスに溢れる選手」と賞賛。「勇也は必要とされる場所にきちんといて、しっかり仕事をしてくれる。時には攻守のつなぎ役となり、正しい判断ができるんだ。決してうちのキープ率が高くない中で、相手を脅かす存在になっていた」と働きを高く評価している。
さらにチームの躍進に貢献しているのが、ヘルタ・ベルリンでやはり3年目を迎えている原口である。第14節のブレーメン戦こそ出番はなかったが、シーズン序盤から主に右サイドを担い、日本代表でも見せた運動量と突破力で攻撃の起点になっている。その攻守における運動量こそがヘルタ・ベルリンのベースであり、原口もまたチームのために走り切れるという信頼を、パル・ダルダイ監督から受けている。首位を走るバイエルンには敗れたが、接戦をものにするチームは4位につけており、後半戦が楽しみな状況にある。

ただし、大迫にしても、原口にしても、さらに突き抜けるには、やはり目に見える結果が必要であろう。すなわちゴールである。

サイドを主戦場にしているとはいえ、原口はここまで得点なし。日本代表での連続得点を聞いたダルダイ監督からは「うちでもそれくらい決めてもらいたい」と、冗談とも本気とも言える祝福のコメントをもらったように、ゴールを奪う必要がある。その指揮官からはサイドに張っているようにとの指示が出ているようだが、そうした状況の中でも機を見てゴール前で仕事ができるかどうかが後半戦の課題となるだろう。

また、ここまで2得点の大迫は、相棒のモデストが12得点を挙げていることを考えると、昨季のプレミアリーグで優勝を遂げたレスターにおける、ジェイミー・バーディと岡崎慎司の関係性に似ていると言わざるを得ない。日本代表でもチャンスをつかみ、存在感を発揮しようとしている今、やはり所属チームでの目に見える結果が問われることになる。また大迫は、岡崎以上にゴール前でテクニックを発揮できるタイプだけに、なおさら決定力を示す必要があるだろう。

10年目の転身 リベロとして高評価の長谷部

日本の未来を担う2人がドイツを舞台に地位を確立しつつある一方で、ドイツに渡って10年目になる長谷部誠は、安定感という武器をもとに新境地を開拓しつつある。所属するフランクフルトでは3バックの中央、いわゆるリベロとしてプレイしているのだ。ボランチからリベロへのコンバートはよく聞く話ではあるが、屈強な選手たちが揃うブンデスリーガにおいて、長谷部は遜色なく適応しているから驚きだ。また、本来ボランチの長谷部がリベロに入ることで、最終ラインからのビルドアップが可能になり、その効果もあってフランクフルトは6位へと躍進している。

長谷部自身もリベロへの挑戦に関して、ブンデスリーガ公式サイトで「ボランチよりひとつ下がってプレイしているのでプレッシャーが少ない。その分、全体を見渡して余裕を持ってパスを出すことができる」と話している。実際、試合を見れば、そのプレイはまさにソツがなく、抜擢したニコ・コヴァチ監督の慧眼には感服したくなる。

シャルケ内田の復帰などブンデス後半戦には明るい話題が

ハンブルガーSVの酒井高徳は、先発出場すれば、ほぼフル出場しているようにチームにとって不可欠な存在で、11月にはキャプテンに任命されたほどである。クラブではサイドバックだけでなく、ボランチで起用されることもある彼だが、その背景にはチームの不振がある。開幕から12試合勝ち星から見放され、途中には監督交代も起こった。ここに来てようやく連勝して最下位を脱出したが、まだまだ予断を許さない状態にある。

またシャルケの内田篤人がUEFAヨーロッパリーグながら、1年9カ月ぶりとなる実戦復帰を果たしたようにドイツを舞台に戦っているサムライたちには追い風が吹いている。マインツの武藤嘉紀もケガが癒え復帰間近にあるだけに、ドイツでの彼らの活躍はいよいよ折り返しを迎えたW杯予選を戦う日本代表にも大きな風を吹かせることになる。

文/原田 大輔

海外サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務め、2009年に独立。サッカー専門の編集プロダクション『SCエディトリアル』を創設し、携帯サイト『日本!Wサッカー』、フリーマガジン『footies!』など、様々な媒体に寄稿。Twitterアカウント : Shimokita_SCE

theWORLD181号 2016年12月23日配信の記事より転載

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