【特集/今、欧州4大リーグで目が離せない46人 4】キャリアハイ更新中! 混戦ブンデスリーガの逸材たち

将来が嘱望される19歳のデンベレ

将来が嘱望される19歳のデンベレ

在籍3年目にしてついに覚醒した大迫勇也 photo/Getty Images

ドルトムントに加入したウスマン・デンベレは、昨季リーグ・アンのレンヌでプレイし、チーム最多の12得点を奪っていた。この数字もさることながら、キレとスピードのあるドリブル、迷いのない思い切ったフィニッシュは10代とは思えず、多くのクラブが獲得を狙っていた。そうしたなか、デンベレは戦術家であり選手の能力を引き出すのがうまいトーマス・トゥヘルが率いるドルトムントをチョイスし、シーズン開幕前のマンチェスター・ユナイテッドとの強化試合で得点するなど加入直後から存在感を発揮していた。

プレイするのはおもに2列目の左サイドだが、中央へ切り込むドリブルも特徴のひとつで、そのままフィニッシュすることがあれば、前線のピエール・エメリク・オバメヤンに正確なラストパスを供給して得点チャンスを生み出す。19歳にして相手との駆け引きもうまく、DFが身体を寄せてくるとトラップひとつでひらりとかわしてみせる。トップスピードに到達するのも速く、DFが態勢を整えたときにはすでに数メートル先を走っている。第10節を終えて2得点と自身の得点は少ないが、ボールを持つと“何か”が起きそうで目が離せない。「将来のバロンドール候補」「クリ・ロナ2世」。デンベレはこうした異名に負けないプレイを続けている。

同じドルトムントにはすでにアメリカ代表でプレイするクリスティアン・プリシッチや下部組織から昇格したフェリックス・パスラックといった若手もいる。いずれも18歳のMFで、ともに縦への推進力がある。主力数名が移籍したドルトムントだが、こうした魅力的な若手がサポーターを楽しませている。
第10節を終えて勝点24でバイエルンと並んでいるいまもっともホットなチーム、RBライプツィヒでは20歳のティモ・ヴェルナーがチーム最多の5得点と結果を残している。ヴェルナーは前線からしっかりと守備ができて、相手最終ラインの裏へ抜け出すのも速い。長い距離をドリブルできるのも特徴のひとつで、中盤から自分で仕掛けてフィニッシュまで持っていくことができる。FW不足に陥っているドイツ代表にいつ呼ばれてもおかしくない逸材だ。

多彩な能力を持つゲレイロ

多彩な能力を持つゲレイロ

EURO2016ではベストイレブンにも選ばれたDFゲレイロ photo/Getty Images

EURO2016を制したポルトガルで左SBを務めていたラファエル・ゲレイロについて、「ひとつのポジションに固定するには優れすぎている」と『kicker』誌のなかで語ったのはドルトムントのトゥヘルである。この言葉どおり、加入1年目のゲレイロは左SBをはじめ、ボランチ、4-3-3の左インサイドハーフ、3-4-3の左サイドハーフなどでプレイしている。

高い守備能力を持つのはもちろん、縦への突破力があるし、パスも正確。足元の技術力が高いためプレッシャーをかけられても慌てることがなく、ボールロストも少ない。その能力を考えるといろいろな起用方法があり、これが前述のトゥヘルの言葉につながっている。先発してよし、交代出場してよし。ゲレイロの存在は、昨季までの主力数名が移籍したことで新たなチーム作りを強いられているドルトムントを助けている。

オーストリアのレッドブル・ザルツブルクとRBライプツィヒはともに親会社がレッドブルで、ザルツブルクで活躍した選手はRBライプツィヒへ移籍する流れが出来あがっている。今季のチームには前所属がザルツブルクの選手が6名いて、そのうち3名が新加入だ。ナビ・ケイタはこの3名のうちの1名で、クラブ史上最高額となる約18億円で獲得されている。

RBライプツィヒを率いるラルフ・ハーゼンヒュットルは昨季昇格1年目だったインゴルシュタットを11位に導いた人物で、年々評価を高めている“旬”の指揮官だ。こうしたチームのなかでケイタはおもにボランチを務め、献身的な動きで攻守をつなぐ役目を果たしている。ザルツブルクで成長し、RBライプツィヒへ移籍して活躍する。ケイタはレッドブルが育てた成功例だといえる。

大迫の存在がモデストを生かす

加入1年目だった昨季以上に活躍しているのが、ケルンのアントニー・モデストとヘルタ・ベルリンのヴェダド・イビシェビッチだ。屈強な身体を持ち、フィジカルが強いモデストは昨季1トップを務め、前線で孤軍奮闘していた。しかし、今季は2トップとなり、大迫勇也というパートナーを得たことでマークが分散し、ハイペースで得点を重ねている。第10節を終えて11得点はドルトムントのオバメヤンと並んで得点ランク首位タイで、得点王も視野に入るシーズンとなっている。

モデストは高さ、強さがあり、もともと個人の力で得点できる能力を持っていた。ただ、当然マークも厳しく、モデスト頼みからの脱却がチームにとって必要だった。指揮官のペーター・シュテーガーが白羽の矢を立てたのが、まわりの選手を生かすのがうまい加入3年目の大迫だった。第2節ヴォルフスブルク戦をモデスト&大迫の2トップで戦うと、以降多くの試合でこのコンビを選択。お互いに相乗効果があり、モデストはもちろん大迫がゴールチャンスをつかむ回数も増え、第4節シャルケ戦、第5節RBライプツィヒ戦で連続ゴールをマークした。

こうした活躍が評価され、大迫はクラブ公式サイトを通じてサポーターが選ぶ9月の月間MVPにも選出された。これまでは1.5列目や右サイドアタッカーとして起用されることが多かったが、ゴールに直結する仕事ができる大迫の能力はやはり前線でこそ生きる。シュテーガー監督も適正ポジションを見出したようで、地元紙のインタビューに「われわれは彼を素晴らしい選手だと考えている。彼がトップでプレイすると信じているのなら私はそうする」と大迫について語っている。

今季のケルンは大迫の能力を引き出したことで、モデストの能力を引き出すことにも成功している。ただ、対戦相手のスカウティングは早く、すぐに対応してくる。大迫がよりいレベルに到達できるかどうかは、より厳しいマークを受けてプレイする今後にかかっている。

ヘルタ・ベルリンのイビシェビッチは昨季サロモン・カルーとのコンビで自身10得点をマークしたが、今季はカルーが負傷で出遅れ、シーズン当初はパートナーを欠いていた。モデストとは逆のパターンだが、イビシェビッチは32歳でブンデスリーガ1部出場が200試合を超える経験豊富なベテランだ。加入2年目で原口元気を含むチームメイトとの連係も昨季以上に取れており、コンスタントに得点を重ねて現在6ゴールとなっている。

イビシェビッチが好調なことで、カルーが復帰してもパル・ダルダイは昨季序盤戦を戦った2トップではなく、1トップのまま戦うことを決断してカルーを2列目に起用している。これは昨季も見られたシステムで、イビシェビッチの能力がより引き出されることでヘルタ・ベルリンは勝点20で4位と好位置につけている。

バイエルンでベテランが奮闘

バイエルンでベテランが奮闘

リベロを任され新境地を開拓する長谷部 photo/Getty Images

首位に立つバイエルンでは、カルロ・アンチェロッティのもと経験豊富な選手たちが安定したプレイを見せている。最終ラインでは33歳となったフィリップ・ラームが本職である右SBを務め、前線の両サイド、右からは32歳のアリエン・ロッベンがチャンスメイクし、左からは33歳のフランク・リベリが仕掛ける。まだ2人が同時に先発したことはないが、アンチェロッティはトーマス・ミュラー、レナト・サンチェス、キングスレイ・コマン、ドウグラス・コスタ、ジョシュア・キミッヒといった質の高い選手たちと“ロベリー”をうまく使い分けている。

レナト・サンチェス(19歳)、コマン(20歳)、キミッヒ(21歳)といったまだ経験が浅い選手にとっては、ロッベンやリベリと一緒にプレイできるのは良い勉強になる。というより、ともにまだ若手にポジションを譲るような年齢ではなく、出場を争っているライバルでもある。こうした厳しい生存競争がある限り、バイエルンが優勝争いの常連から姿を消すことはないだろう。

昨季第26節から指揮を執るニコ・コバチのもと、フランクフルトは安定した戦いを続けて勝点18で7位となっている。チームのなかでいま注目されているのが、第9節メンヘングラッドバッハ戦でリベロに起用された長谷部誠だ。視野が広く、ボールを奪う能力に長けた長谷部は、このポジションで新境地を開拓。第10節ケルン戦でチームを1-0の完封勝利に導くと、満足したコバチからかつてのドイツ代表キャプテン、ローター・マテウスに例えられたほどだ。

とはいえ、まだリベロでプレイした試合数は少ない。新たな役割を与えられた32歳の長谷部がチームにどんな結果をもたらすか、今のフランクフルトには要注目だ。

文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。Twitterアカウント : scifo10

theWORLD 2016年12月号の記事より転載

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