【特集/プレミア6強戦国時代7】 “ユーヴェ式”3バックで堅守復活へ コンテの手腕で変革するチェルシー 

再建はコンテに委ねられた

再建はコンテに委ねられた

ユヴェントスで礎を築いたコンテ監督。チェルシーでも期待がかかる photo/Getty Images

チェルシーにとって昨季は悪夢のような1年だった。2013−14に復帰したジョゼ・モウリーニョに率いられて一昨年の14-15に優勝を飾り 、昨季はUCL制覇も視野に入れて臨んだはずだった。たしかに、ペトル・チェフ、ディディエ・ドログバ、フィリペ・ルイスなど主力数名が退団していたが、ラダメル・ファルカオを獲得するなど補強もしっかりしていた。しかし、シーズン当初からチー ムには勢いがなく、守備の要だったジョン・テリーにも衰えが見られた。

シーズン途中にモウリーニョを解任してフース・ヒディングを招聘したが、一度バランスが崩れたチームは簡単には元に戻らなかった。常にブレーキがかかっているような状態で戦い続け、サポーターの期待を大きく裏切る10位となった。前年度王者が翌年に8位以下に沈んだのは、プレミアリーグではじめてという体たらくだった。

今季を迎えてチームの再建を託されたのが、試合中はピッチサイドに立って選手と一緒に戦う情熱家であり、状況に応じて最適な判断を下す緻密な戦術家でもあるイタリア人監督のアントニオ・コンテだった。コンテは11−12にユヴェントスの監督に就任すると、[4-4-2]や[4-3-3]からスタートし、[3-5-2]へ移行するなど選手に合わせてシステムを選択。柔軟な思考でチームを好転させ、7シーズンぶりの優勝へと導いた。その後3連覇を達成したのちに自らの意思で退団したが、コンテによって礎が築かれたユヴェントスはその後も優勝を重ね、現在セリエAを5連覇している。

コンテは14年8月にイタリア代表の監督に就任。ビッグネームがいないチームを率いてEURO2016に挑み、ラウンド16でスペインを撃破するなど強烈なインパクトを残し、ベスト8へとチームを導いた。そして大会後にイタリア代表の監督を退任し、低迷からの打開を図るチェルシーの監督に就任している。

4バックから3バックへ さっそく変化が起きている

4バックから3バックへ さっそく変化が起きている

高い守備能力を誇り、アンカーを任されるカンテ photo/Getty Images

今季のチェルシーが即戦力として補強したのは 、3年ぶりの復帰となるダビド・ルイスに、昨季フィオレンティーナでコンスタントに活躍したマルコス・アロンソ、そしてレスター・シティで優勝に貢献したエンゴロ・カンテ、ベルギー代表の若手ストライカーであるミシー・バチュアイなど。D・ルイスとM・アロンソは移籍期限最終日の8月31日に加入が決定しており、それ以前と以降ではコンテの選手起用や使用するシステムに変化が見られる。
ユヴェントスでの初年度もコンテはいくつかのシステムを試し、選手の能力が最大限に発揮されるカタチを模索しながら戦った。チェルシーでも同じで 、8月15日の第1節ウェストハム 戦では[4-1-4-1]を採用し、アンカーにカンテを起用していた 。 ところが 、8月27日の第3節バーンリー戦では[4-2-3-1]となり 、 カンテとネマニャ・マティッチがボランチを務めた。その後にD・ルイス とM・アロンソが加わったことで、 チームはさらに変化している。

最初に施された大きな変化は、 センターバックの変更だった。第1節から第4節まではテリー、ガリー・ケーヒル、ブラニスラフ・イバノビッチ、セサル・アスピリクエタの不動の4 バックで戦ったが、9月16日の第5節リヴァプール戦では第4節スウォンジー戦で負傷したテ リーに変わって D ・ル イスが起用された。続く第6節アーセナル戦にもD・ルイスが先発したが、このリヴァプール戦(●1- 2)、アーセナル戦 (●0-3)に連敗している 。しかも、失点も多かった。

するとコンテは大胆にチームを動かした。第7節ハル・シティ戦では4バックから3バックに変更し 、[3-4-2-1]を選択。3バックは真ん中にD・ルイス、左にケーヒル、右にアスピリクエタとなり、イバノビッチがベンチとなった。中盤はカンテ、マティッチのWボランチで、両サイドにヴィクター・モーゼスとM・アロンソ。2列目がエデン・アザールとウィリアンで、前線にジエゴ・コスタとなった。

第8節レスター戦は3-0の快勝。 33分、アザールが2点目を奪った photo/Getty Images

ハルとはチーム力に差があるとはいえ2-0で快勝を収めると 、第8節レスター戦でもこのシステムが引き続き採用された 。そしてD・コスタ 、アザール、モーゼスがゴールを奪い、昨季王者にも3-0で快勝した。この結果を受けて、今後にコンテがどんな決断を下すか興味深いところだ。テリーのケガは重傷ではなく 、約10日間の離脱で済むと発表されている。イバノビッチも含めて、最終ラインの選択肢は非常に豊富である。

中盤もコマが揃っていて、カンテ、マティッチ、オスカル、ウィリアン、アザール、セスク・ファブレガス、モーゼス、ペドロ・ロドリゲスは誰が先発してもおかしくない。リオ五輪に出場したためチーム合流が遅れたが、ジョン・オビ・ミケルもいる。最終ラインが3枚になったことで中盤に起用できる枚数が増えており、ここでもコンテがどんな組合せをチョイスするか注目される。

第8節を終えて、5勝1分け2敗。リヴァプール、アーセナルに連敗したが、ここまでは力が劣ると考えられるチームには確実に勝利している。過去の例を参考にすると、コンテは決してシステムにこだわりがあるわけではなく、ユヴェントス時代も3バック、4バックを使い分け ながらチームを構築していった。結果として3バックに落ち着いたが、それは選手の特徴を見極めて選択したことでチェルシーでも4バックからスタートしている。

そして直近の2試合を3バックで戦い、いずれも無失点で勝利している。テリーもそろそろケガから戻ってくる。コンテがどんな選択をし、それによってチームがどう変化していくか注目が必要だ。少なくとも、出だしは悪くない。というか、昨季が悪過ぎただけに、今季のチェルシーはいまのところポジティブな雰囲気に包まれている。

文/飯塚 健司

theWORLD 2016年11月号の記事より転載

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