【特集/プレミア6強戦国時代6】新進気鋭のヤングスターこそ赤い悪魔復権の鍵となる!

赤い悪魔が求めるべきはチームとしての完成度

赤い悪魔が求めるべきはチームとしての完成度

さすがのモウリーニョにとってもこのミッションは容易ではない photo/Getty Images

マンチェスター・ユナイテッドのジョゼ・モウリーニョ監督が苦しんでいる。

「フォーメーション、人材ともに、ベストと考えらえる組合せには到達していない」。自信家らしくない発言だ。基本的には強気で、過激な内容のマインドゲームを好む男が弱音を吐いた。しかし、これが現実なのだろう。アレックス・ファーガソンが27年にわたって築いた強固な組織を、無能無策のデイビッド・モイーズは7カ月で壊した。ルイ・ファン・ハールは走力を基本とする近代フットボールを「ネズミの競走」と揶揄し、ボールをつなぐだけの消極策に終始した。

さらにウェイン・ルーニー、マイケル・キャリックは衰えを隠せず、ズラタン・イブラヒモビッチとポール・ポグバ、ヘンリク・ムヒタリヤンは新戦力であるがゆえに、周囲との連携を構築するまでに時間がかかる。しかもジェシー・リンガード、マーカス・ラッシュフォードといった若手は経験不足だ。こうした事実を踏まえると、冒頭に挙げたモウリーニョの発言も納得できる。したがって、序盤戦は計算できる既存戦力を軸とするプランが賢明、との結論に至ったのだろう。GKダビド・デ・ヘア、DFアントニオ・バレンシア、クリス・スモーリング、ダレイ・ブリント……。そして、驚異的な環境適応能力で瞬く間にフィットしたエリック・バイリーの守備陣に頼るしかない。

実際、ゴールレスドローに終わった8節のリバプール戦も、デ・ヘアは二度のスーパーセーブを披露し、4バックも鋭い出足でクリーンシートに貢献している。しかし、リヴァプール、アーセナル、トッテナムは、チームの完成度でユナイテッドをはるかに上まわっている。マンチェスター・シティはジョゼップ・グアルディオラ新監督みずからが認めたように、「想定以上のスピードで戦略・戦術が浸透している」。ライバルがユナイテッドの“セッティング”を待ってくれるはずがなく、モウリーニョは一刻も早く、ベストと考えられる人材による基本フォーメーションを構築する必要に迫られている。

高額な新戦力とフレッシュな若手の融合へ

高額な新戦力とフレッシュな若手の融合へ

破格の移籍金でやってきたポグバもキーマンの1人だ photo/Getty Images

ポグバは必ず順応する。代理人のミーノ・ライオラが移籍交渉で駆け引きしすぎたために夏のキャンプをこなせず、コンディション調整が遅れているだけだ。この男の実力に疑いの余地はない。ムヒタリヤンはシャフタール・ドネツクからドルトムントに移籍した際もフィットするまでに時間を要したが、いずれは絶対的な存在になるだろう。中長期的な見地から判断した場合、ユナイテッドの軸はポグバとムヒタリヤンだ。ただし、2016-17シーズンで結果を出すために、チャンピオンズリーグ出場権を獲得できる4位以内に入るためにも、より強固な陣容を創らなくてはならない。デ・ヘアを軸とする守備陣は心配ない。先述のDF4選手にルーク・ショウ、ティモシー・フォスメンサを加えれば、仮にマッテオ・ダルミアンが来年1月の移籍市場でインテル・ミラノに去ったとしても戦力ダウンには至らない。また、リヴァプール戦(先述)でスタメン起用されたラッシュフォード、アシュリー・ヤングが見せたように、ウイングが相手サイドバックの攻撃参加を封じる任務を最優先にこなせるあたりは、さすがモウリーニョ。守備プランは着実に浸透しつつある。

課題はやはり攻撃力だ。現時点ではイブラヒモビッチ、ポグバ、あるいはファン・マヌエル・マタのセンスといった個人の力、さらに2メートル級の長身を揃える空中戦しかない。なにより、スピードを欠いている。ルーニーがスタメンを追われた最大の原因も、加齢に伴うスピードの低下である。

さぁ、イブラヒモビッチに関しては、モウリーニョが“トリセツ”を吟味した方がよさそうだ。彼が醸し出すオーラは対戦相手にとって畏怖の対象であり、実績にはだれもがリスペクトをはらっている。ただ、運動量の低下は否定できず、攻守の切り替えも鈍くなってきた。近代フットボールにおける成功のキーワードが走力であるとすれば、リンガード、アントニー・マルシャルをスタメンに起用し、イブラヒモビッチはスーパーサブという役回りを与えた方が攻撃は活性化し、34歳という年齢のハンディキャップも最小限に抑えられる。

データが示す“モウ・ユナイテッド”の現状とは

データが示す“モウ・ユナイテッド”の現状とは

キャリアの終盤に差し掛かっているこの男への過度な依存は避けるべきだ photo/Getty Images

リヴァプール戦におけるボールポゼッションはわずか35%だった。プレミアリーグがこのデータの計測を開始した2003年以降ではクラブワースト。それでもモウリーニョは、「ゲームを支配していた」と胸を張った。自慢の守備プランが奏功したからか、あるいは単なる強がりか。もちろん、ポゼッションにこだわる必要はない。ポゼッション=美は一部信奉者の幻想だ。しかし、リヴァプール戦のようなプランで勝ち続けられるだろうか。本拠地オールド・トラッフォードのサポーターはエキサイティングなフットボールが好みだ。守りを基本にするのは構わないが、攻撃のスピード不足は喫緊の改善ポイントであり、エネルギーを注入できるのは、1990年代生まれの若者たちである。

文/粕谷 秀樹

theWORLD 2016年11月号の記事より転載

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