【特集/プレミア6強戦国時代 4】もう、あと一歩とは言わせない! アーセナルが優勝するための3つの条件

ストライカー不足は解消 次に必要なのは絶対的なリーダー

ストライカー不足は解消 次に必要なのは絶対的なリーダー

今季のサンチェスは1トップの位置で躍動する photo/Getty Images

むしろ疑いの目を向けたくなるほど、アーセナルが好調である。

リヴァプールとの開幕戦を3-4で落とし、続くレスター戦をスコアレスドローで終えた時点では、当然のことながら懐疑論が大勢を占めた。ところが、第3節のワトフォード戦から破竹の6連勝を記録。順位を2位に押し上げ、首位のマンチェスター・シティと勝点で並んでいるのだから現状には文句のつけようがない。

1トップ起用が見事にハマッたアレクシス・サンチェスは7試合で4得点。積年のストライカー不在問題は一気に解消され、駒の基本配置であるフォーメーションは1列目と2列目を自由に行き来する彼のプレイスタイルから“ゼロトップ”の色合いを強めた。ゴールを背にしたサンチェスが足下でパスを受け、抜群のキープ力でタメを作る。メスト・エジルやグラニト・ジャカに預けてゴール前に侵入する。スペースでパスを受けたテオ・ウォルコットとアレックス・イウォビは対峙する相手との1対1に果敢に挑み、フィニッシュの選択肢を匂わせながらサンチェスを絡めてゴールに迫る。簡潔に言えばそんな攻撃スタイルが正攻法として機能し、記録した19得点はマンCと並んで最多。ムスタフィの加入によって安定した最終ラインが失点を許容範囲内に食い止めた結果、第8節終了時点で2位という好成績を残すに至った。目標設定を「3冠」とするサンチェスの言葉に象徴されるように、ピッチの上で嬉々としてプレイする選手たちから伝わってくる雰囲気もすこぶるいい。

果たして、この快進撃はいつまで続くのだろうか。レスターの後塵を拝した昨季の雪辱を果たし、悲願のリーグタイトルを手に入れるためには、過去の戦いにおける教訓をクリアする必要がありそうだ。

最後にプレミアリーグを制してから、すでに12年の歳月が流れた。その間に浮き彫りになった教訓は、大きく分けて3つある。

強者には必ず、絶対的なリーダーがいる。その好例は、無敵の強さを誇って無敗優勝を成し遂げ、「インビンシブルズ」と呼ばれた03-04シーズンのメンバーだ。守護神イェンス・レーマンは33歳のベテランらしく常に落ち着き払い、最終ラインはソル・キャンベルが統率。中盤ではパトリック・ヴィエラとロベール・ピレスが繊細なプレイで攻撃戦術を示し、それに呼応して寡黙なデニス・ベルカンプと感性豊かなティエリ・アンリが相手ゴールを襲った。あのチームには、4-4-2のすべてのラインに絶対的なリーダーがいた。

しかし近年のアーセナルは、中核を担う選手はいても、シーズンを通して期待通りのパフォーマンスを披露し、その決定的なプレイでチームを牽引するようなリーダーはいなかった。ロビン・ファンペルシーやセスク・ファブレガス、トマシュ・ロシツキーは十分にその資質を有したが、残念ながら彼らを支える脇役の成長が遅れ、それぞれ志半ばでチームを去った。司令塔のエジルや得点源のサンチェス、さらに守備の要であるローラン・コシェルニーは、もうひと回りの成長が必要だ。プレイで示す結果に加え、絶対的なリーダーとしての威厳と安定感を示さなければ、リーグ制覇に導くことはできない。

求められるのは簡単に取りこぼさない試合巧者ぶり

求められるのは簡単に取りこぼさない試合巧者ぶり

スウォンジー戦で3戦連続ゴールをマークしたウォルコット photo/Getty Images

ターンオーバーという概念をほとんど持たないヴェンゲルの方針は、チームの完成度を高める反面、ピースの欠如による脆弱さも加速させるリスクを伴う。昨季は第13節のWBA戦でサンティ・カソルラ、第14節のノーリッジ戦でフランシス・コクランが負傷離脱し、中盤の柱を失って失速。一昨季は開幕前から故障者が続出して早々に優勝戦線から脱落し、13-14シーズンも後半戦の立ち上がりにアーロン・ラムジー、テオ・ウォルコット、ジャック・ウィルシャーが離脱。エジルとジルーが負担過多でパフォーマンスを落とし、黒星を重ねる要因となった。

故障者の続出については現地メディアでもたびたび取り上げられているが、メディカル体制の強化に加え、起用法によって回避、あるいは軽減することも可能なはず。他のビッグクラブが当然のように取り組んでいるターンオーバーを含めて、それほど厚いとは言えない選手層をカバーしながらチームとしての完成度を高める手腕が、ヴェンゲルには期待されている。

3つめの教訓は、格下相手の取りこぼしである。14-15シーズンはスウォンジーに2敗、昨シーズンはWBA、サウサンプトン、スウォンジー戦の黒星が「あと一歩」の最終成績に響いた。その攻撃スタイルから格下相手には必然的にボールの主導権を握る時間が増えるが、攻撃に厚みを持ち過ぎることで守備が疎かになる傾向は強い。この点についても、ピッチ内でゲームをコントロールする絶対的リーダーの必要性を強く感じる。

今季のアーセナルが例年にない“強さ”を秘めていることは間違いない。エジルとサンチェスを軸に据えたチームは若手の台頭によって迫力を増し、“勝ち癖”さえつき始めている印象だ。もっとも、勝負はこれから。まずは、トッテナム、マンチェスターUと対戦する11月、そしてマンチェスターCと対戦する12月を文字どおりの“無傷”で乗り越えることが、シーズン前半戦における「優勝への条件」となりそうだ。

文/細江 克弥

theWORLD 2016年11月号の記事より転載

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