[欧州新シーズンプレビュー 3]一強時代のセリエA ユヴェントスの6連覇に死角なし?

ライバルの弱体化と自チームの強化を同時敢行

ライバルの弱体化と自チームの強化を同時敢行

ユヴェントスの6連覇を阻止するクラブは現れるのだろうかphoto/Getty Images

セリエAは2016-17シーズンも近年と見所は変わらない。そして、おそらく、結論も変わらない。少なくとも現時点では、絶対王者を脅かす勢力は出てきていないはずだ。

今夏の移籍市場で主役になっているのは、ユヴェントスとナポリだ。ユヴェントスはMFポール・ポグバをマンチェスター・ユナイテッドに手放した。史上最高額の移籍金を手にすることになった王者は、すぐにナポリからFWゴンサロ・イグアインを獲得している。ポグバやイグアインの値段が適正だったかは、メディアでも田舎街のバールでも、至る所で議論になる。その話題はさておき、戦力面だけで考えるとしよう。よりダメージが大きいのは、ナポリで間違いない。

ポグバがいなくなったことはユヴェントスにとって大きな痛手で、序盤はMFクラウディオ・マルキージオも負傷で不在だ。これは大きな問題だが、エースを失ったナポリに比べれば、その損失は大した問題ではない。イグアインの後釜にナポリが獲得したFWアレク・ミリクは、ポーランド代表としてEURO2016で活躍した 22歳の若手。良い選手だとしても、現時点でイグアイン級ということはあり得ない。ナポリに優勝争いを続けさせた原動力が最大のライバルへ移籍したとあれば、両者の差は広がるだけである。
28歳のイグアインに9000万ユー ロを支払うことは、ちょっとしたギャンブルにも見える。ただ、その強気なギャンブルも、ユヴェントスに勢いがある証拠かもしれない。ポグバ放出で得た移籍金の大半を使い切ってしまう大胆さは、そう簡単に真似できるものではない。ライバルの弱体化と自チームの強化を同時に行ったことで、ユヴェントスは6連覇に向けて前進したと考えるべきだ。ナポリが弱体化したと仮定すると、 対抗馬にはローマを挙げるしかない。しかし、こちらもMFミラレム・ピアニッチをユヴェントスに引き抜かれている。 ポジティブな材料としては、昨季途中に復帰したルチアーノ・スパレッティ監督の戦術が浸透し始めるという点だろうか。ただ、いずれにしてもユヴェントスと張り合うには弱い材料に思えてしまう。


低迷するミラノ勢2016-17シーズンの復活は?

低迷するミラノ勢2016-17シーズンの復活は?

インテル新指揮官はクラブを蘇らせることができるか photo/Getty Images

ここで登場する(してほしい)のが、ミラノ勢だ。もはや古豪とも表現した くなる名門2チームは、この夏に大きな動きがあった。どちらもクラブの買収に進展があり、これから大きな投資が期待できる状況となっている。

とはいえ、まだ現場の動きは大きくない。インテルはロベルト・マンチーニが去り、フランク・デ・ブールを監督に迎えた。一方のミランは、将来が不透明な段階でヴィンチェンツォ・モンテッラを招いている。現在はまだ混乱している最中であり、これまで以上に苦しい状況にあると見た方が良さそうだ。

それでも、インテルというブランド力は十分に選手を引きつけるものだ。アントニオ・カンドレーヴァとエベル・バネガを加えた中盤は改善されたはずだ。クリスティアン・アンサルディも即戦力とみられており、長友佑都を差し置いて左サイドバックの定位置をとるのではないかという声がある。ただ、新監督が来たばかり。現時点でのメンバー予想に意味はないだろう。

本田圭佑に移籍の噂があるミランも補強は進んでいない。新体制が定まらず動き出せなかったことのほか、FWカルロス・バッカの放出から動き出すつもりでいた取引が進まず、スタートが遅れてしまった。このままいけば、監督が代わっただけで、メ ンバーはほぼ変わらないことになる。

だが、ミランといえばデッドライン間際のドラマチックな補強でお馴染みだ。例年とは違う形で迎えるこの時期だが、今夏もラスト数日が本番になるかもしれない。インテルも含め、フロントがファンの信頼をつかむ簡単な手段は、分かりやすい投資をすることにある。いった意味でも、インパクトのある新戦力がこれから到着する可能性はあるだろう。リーグとしての魅力が薄れ、クラブとしてチャンピオンズリーグ出場権もない状況だと、獲得できる選手にも制限があることは否定できない。それでも、名門のブランドが何かを起こす可能性はある。これからの動き次第で、一気に爆発力のあるチームになるかもしれない。

結局、今季もセリエAは「打倒ユヴェントス」が最大のテーマだ。イタリアのバイエルン・ミュンヘンとなりつつある王者が、このままトップに定着するのか、それとも対抗する勢力が出てくるのか。どうかセリエAだからと敬遠せず、時代の変わり目を見届けてほしい。

文/伊藤 敬佑
theWORLD177号 2016年8月23日配信の記事より転載

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