これまでミランに所属する日本代表MF本田圭佑は、事あるごとに個の力が重要だと主張してきた。確かに日本と世界の強豪国では個の能力に大きな差があり、その差を組織力だけで埋めるのは無理がある。
そして現在個の力の差を1番痛感しているのが本田自身ではないか。本田はミランで出場機会を失っており、昨季まで守ってきた右サイドのポジションを22歳のスソに奪われてしまっている。しかもそれは指揮官の戦術的理由によるものだけではなく、スピード、1対1の強さなどスソとの個の能力の差が主な理由となっている。
本田には相手DFを振り切るだけのスピードがなく、1対1の場面で違いを生むことができない。守備面などはスソの方が多少雑かもしれないが、それでも指揮官のモンテッラがスソに期待をかけるのも無理はない。スソには1人でフィニッシュまで持ち込む能力がある。
そして本田のようにスピードのない司令塔、2列目の選手が近年のサッカー界では非常に苦労している。少々レベルは異なるが、レアル・マドリードのハメス・ロドリゲス、インテルのステファン・ヨヴェティッチらもそれに該当すると言えるのではないか。彼らには1人で局面を打開するだけのスピードがなく、チームによっては彼らを上手く活かすことができない。
現代の10番の多くはチェルシーのエデン・アザール、バルセロナのネイマールといったようにスピードを備えており、1人で違いを作れてしまう。最近はスピードを失ってしまったマンチェスター・ユナイテッドFWウェイン・ルーニーが中盤深くまで下がってボールに触るシーンが多く見られるが、スピードのない10番はポジションを下げざるをえない。
しかし、本田はポジションを下げることを好んでいない。本田をボランチで起用しようとする指揮官もいたが、本田はあくまで前線で勝負したいとの考えを抱いている。そこで若いスソとの差を痛感することになっているわけだが、本田はこれをどう捉えているのか。
本田はトップ下からサイドにポジションを移し、余計にスピード不足が目立つようになった。相手DFとしては縦に突破される可能性が限りなく少ないため、相対した時に怖くない。本田を中心にチームを作ってくれるならまだしも、現在のミランで本田がサイドから違いを作り出すのは難しいだろう。
先日のワールドカップアジア最終予選のタイ代表戦でも、スピードのある原口元気が攻守に奮闘し、やはりサイドの選手には最低限のスピードが欲しい。今回の代表2連戦で本田のパフォーマンスが最高だったと感じた人は少ないはずだ。
チェルシーのセスク・ファブレガス、バイエルンのシャビ・アロンソなどスピードのない司令塔はたいてい中盤深くでプレイしており、現代サッカーにおいて本田のようなスピードのない10番は使い方が非常に難しい。最近の本田は個の能力の差を痛感する機会が増えているはずだが、本田は今後ミランと日本代表で何の能力を強みに戦っていくのだろうか。