[五輪現地レポ 1]スタイル見失い敗戦スタート 原川「十分建て直せる」

ナイジェリアと打ち合ってしまった日本

敗戦の翌日は、いつも重苦しいものだ。特に5点もの大量失点をして敗れた日本のチ-ムに流れる雰囲気は何とも言えないほど鈍重だった。ちょっと暗い照明がよりその重みを増し、深刻なものにしていた。

試合の翌日、ミ-ティングが行なわれ、試合映像の失点シ-ンを含めて悪いシ-ン、いいシ-ンを見て、話し合いがもたれた。4-3-3のシステムでインサイドハ-フのポジションでプレイした原川力は、「十分建て直せる」と思ったという。

「映像を見て、失点は崩されたのではなく、ミスからなので次は問題ないと思う。それよりもチ-ムとしてどう守備をするのか、どう攻めるのかが大事」
ナイジェリア戦、失点は開始わずか6分だった。もともとこのチ-ムは先制点を奪われたことがあまりない。しっかりと守って相手をゼロを抑えて勝つのがチ-ムスタイルだ。だが、自分たちのスタイルを忘れてナイジェリアと打ち合ってしまった。
「早い時間に失点してバタついたし、浮き足立ってしまう感じもありました。点を取り返す力をあるのは分かっていたので、そんなにあわてる必要はなかったんです。でも、早く取り返さないという意識が強すぎたし、実際、点が取れた。そこで落ち着かせることが必要だったけど、相手のDFラインがバラバラでギャップがあったので裏を狙えたんです。それで縦への攻撃を急ぎ過ぎて、オ-プンな展開になってしまった。自分たちのスタイルを忘れてしまったのが、この結果を招いたひとつの要因だと思います」

チ-ムとして点を取り返す力があることは分かっていた。リオ五輪最終予選の決勝戦で韓国に2点リ-ドされたが逆転勝ちした経験があるからだ。しかも、相手のDFラインはル-ズだった。隙があるように見えたので、日本の攻撃は裏狙いに集中した。

「裏を狙えたので縦に行きすぎてしまったんですね。僕自身はもっとボ-ルを触りにいくべきでしたし、アンカ-に(遠藤)航がいたので守備は任せてもうちょい前に出ていけば良かった。でも、相手が航の脇を使ってきたので、それがイヤでなかなか前に出ていくことができなかった。試合途中から(中島)翔哉を中に入れて、ハル君(藤春)を高い位置においた方が効率よくボ-ルが回っていたし、スペ-スもあった。次からは、そういうところを強調してやった方がいいと思います」
大敗を喫したせいもあり、反省点しか出てこないが、世界と戦ったことで得られたこともある。原川はアジアでの戦いとの違いを痛感させられたという。

「アジアではミスや隙があってもなんとか耐えることができるけど、世界では隙やミスが即失点につながってしまう。それを初戦で分かったのは大きいですね」

ミックスゾ-ンを通る選手の口からは「切り替えてコロンビア戦に挑む」という言葉がもれてくる。コロンビアはスウェ-デンに2-2で引き分けたが、個人能力が高く、南米特有の抜け目ないサッカ-をしていた。また、スタジアムには多くのコロンビアのファンが訪れて、さながらホ-ムの雰囲気を醸し出していた。ブラジルW杯でのコロンビア戦もそうだったが、日本はアウェイの空気の中で戦うことになるだろう。

「コロンビアは、トゥ-ロンでパラグアイと対戦したんですけど、そことすごく似ている感じです。南米特有のずる賢さというか、長めのヨコパスやちょっとしたバックパスを常に狙っている感じですね。前半は、前にガツガツきますし、ボ-ルを奪ってからフィニッシュまでは早いんで、そこは注意しないといけない。ただ、コロンビアを含めて南米のチ-ムは前に出て来てくれるんで、引かれるよりは中盤としてはやりやすい。たぶん、スペ-スもけっこう生まれると思いますんで、いい攻撃ができるかなと思います」

コロンビアが前に出てくるとスペ-スが生まれる。そこを南野拓実や中島翔哉らが突き、チャンスメイクができれば、日本本来の攻撃ができる。それでも日本が主導権を握ることは難しいだろうが、勝負のポイントを原川はどう考えているのだろうか。

「南米のチ-ムは相手の勢いを出させないようにするために試合の入り方がすごく大事。ナイジェリア戦では(立ち上がりで)2失点しているんで、試合の入り方、そして締め方をチ-ムとしてしっかりやらないといけないですし、そこを失点せずに抑えられたら絶対に勝てると思います」

コロンビア戦は、負けたら終わりだ。

日本としては初戦のようなミスをなくし、自分たちのスタイルで戦うことができれば、勝機は見えてくる。前半0-0を意識しつつ、ビビらず粘り強く戦うことができるか。手倉森監督が磨き上げてきたチ-ムスタイルの本当の強さが試される試合になるだろう。

文/佐藤 俊

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