フランスで開催されていたEUR0はポルトガルの優勝に終わりました。その戦いを振り返ると、グループリーグ3試合がいずれも引き分け。決勝トーナメントでもラウンド16のクロアチア戦、準々決勝のポーランド戦が延長戦にもつれ込むなど終始接戦となりました。そうしたなか優勝を遂げる原動力になったのが、高い守備力でした。
正直、グループリーグの段階ではリカルド・カルバーリョとペペで構成する最終ラインの中央に不安を感じていました。とくに、リカルド・カルバーリョはスピードがなく、スペースにボールを出されると失点のピンチを迎えていました。フェルナンド・サントス監督も同じ懸念を抱いていたようで、決勝トーナメントに入るとセンターバックがジョゼ・フォンテとペペのコンビに変更され、これが奏功しました。
ペペは相手とのかけ引きがうまく、カバーリング能力に長けた選手です。加えて、前方へのフィードも正確です。パートナーに統率力があるフォンテを迎えたことで、最終ラインがグッと引き締まり、チームとしての安定感が増しました。また、守備的MFを務めたウィリアム・カルバーリョの運動量、ボールを奪う能力も目立ちました。攻撃面で活躍した18歳のレナト・サンチェスが話題になることが多いですが、大会中に24歳の誕生日を迎えたウィリアム・カルバーリョも評価を高めた選手のひとりだと思います。
なにより、ポルトガルはクリスティアーノ・ロナウドも含めて各選手がそれぞれの特徴をいかんなく発揮していました。そういった意味で、フェルナンド・サントス監督が昨季プレミアリーグを制したレスターのクラウディオ・ラニエリ監督とダブッて見えました。守備を重視した戦術をもとに選手がプレイしやすい環境作りに努め、うまく力を引き出していました。ある程度の自由を与えられたクリスティアーノ・ロナウドもプレイしやすかったのではないかなと思っています。
このポルトガルを筆頭に、今大会はアイスランド、北アイルランド、ハンガリー、ウェールズなど守備力のあるチームの躍進が目立ちました。グループリーグで敗退したアルバニアも組織的な守備をする良いチームでした。
一方で、ポゼッション・サッカーを指向するチームは消えつつあるなと感じました。スペイン、ドイツ、フランスは攻撃に重心があるチームでしたが、根本にはしっかりとした守備があり、高い位置でボールを奪って素早くカウンターを仕掛けるという狙いがありました。そのスタイルは決してポゼッションにこだわるものではなく、前線に大型FWを起用し、ときにターゲットを目掛けてロングボールを入れていました。
スペインのアルバロ・モラタやアリツ・アドゥリス、ドイツのマリオ・ゴメス、フランスのオリヴィエ・ジルーやアンドレ=ピエール・ジニャク。1トップを務めたこうした選手たちがもっと活躍することができれば、この3チームにも優勝の可能性があったと思います。堅守の相手からゴールを奪うには、強くて高さのある1トップが前線で存在感を示し、そこにまわりの選手がいかにからんでいけるかが重要だと今大会を見ていて感じました。