[予想外の4大リーグ総括! 2]チェルシー、アーセナル、マンU、マンCはなぜ優勝できなかったのか 強豪クラブが抱えていた問題点とは

不協和音の発端は強化担当の怠慢

不協和音の発端は強化担当の怠慢

昨季王者チェルシーは10位でシーズン終えた photo/Getty Images

今シーズン、プレミアリーグの王者となったのは下馬評を大きく覆したレスター・シティだった。シーズンを通して黒星を喫したのはわずか3度と、優勝に値する成績を残したのは事実だが、ビッグクラブが揃いも揃って躓いたこともレスターの奇跡を後押しした。プレミアの4強には一体何が足りなかったのだろうか。

チェルシーの失墜は、現場と上層部が意思の疎通を図れなかったからだ。昨シーズンの優勝で一種の達成感に浸っていた数人の主力は、オフの間に弛緩していた。ジエゴ・コスタは5キロ・オーバーでキャンプに入ったことを認め、シーズン開幕が近づいてもダラダラしている選手たちに、多くの番記者が「闘争心の欠如」を感じていたという。だからこそ、経験豊富なジョゼ・モウリーニョ監督(当時)はサイクルのピリオドを痛感。昨シーズン終了直後に、獲得希望リストを強化担当スタッフに提出している。

ところが、モウリーニョのリクエストは通らなかった。新戦力はチェルシーのレベルにほど遠く、しかも見たことのない選手までいる。指揮官は苛立ち言葉を荒げ、治療法をめぐってエヴァ・カルネイロ(前チームドクター/15年10月に退団)に訴えられたほどだ。もし、上層部がほんの少しでもモウリーニョのリクエストに応え、主力を脅かせる選手を獲得していれば競争の原理が働き、チェルシーは上昇気流をつかめたのではないだろうか。

独特の緊張感を強いるモウリーニョのマネジメントに問題はあったものの、強化担当の怠慢も責められてしかるべきだ。基本的には穏やかなチームだが、優勝を心から欲するサポーターとの間には、微妙な距離感が生まれつつある。

大失速のアーセナル、ついにヴェンゲル退任抗議も

大失速のアーセナル、ついにヴェンゲル退任抗議も

マンCとのアウェイゲームでは一部のサポーターがバナーを掲げた photo/Getty Images

同じくロンドンに拠点を構えるライバルも準備不足を露呈し、3年ぶりに無冠となった。リーグ戦だけに目を向けると無敗優勝を達成してから12年もの歳月が過ぎている。『time to change』。ついにアーセン・ヴェンゲル監督の退任を求めるバナーが掲げられた。

結局アーセナルは、“ムッシュ”に振りまわされた感が強い。ここ数年の傾向を踏まえれば、一流のセンターバックとセンターフォワードを是が非でも獲得すべきだった。ところが、ヴェンゲルは現有勢力に誰よりも自信を持ち、センターバックに手を付けず、夏の補強はGKペトル・チェフただひとり。選手層の拡大に躊躇した。

また、劣勢に陥ると、ベンチに座って不安そうな表情を隠さない。コーチ、選手に伝搬し、パフォーマンスの質が落ちるのは当然だ。アトレティコ・マドリードのディエゴ・シメオネ、あるいはリヴァプールを率いるユルゲン・クロップのような頼もしさが、ヴェンゲルにはまったく感じられない。

最終盤でトッテナム・ホットスパーが2敗2分けと失速したため、アーセナルは “棚ぼた” で2位になった。17シーズン連続のチャンピオンズリーグ出場権獲得。しかし、素直には喜べない。ヴェンゲル体制の終焉が、急速に近づきつつある。

マンU、ファン・ハール体制は2年目で限界

強引にでも終わらせるべきは、マンチェスター・ユナイテッドのルイ・ファン・ハール体制だ。自らの哲学とやらを妄信し、選手のキャラクターを無視したプランは極端に動きが少なく、バランスを異常なほど重視している。このような感覚でゴールが生まれるはずがない。総得点49はリーグ10位の体たらく。やっとの思いで残留したサンダーランドよりも、わずか1点多いだけだ。ファン・ハールよ、恥を知れ。

ボールをキープするだけでリスクを冒さないため、対戦相手も悠然と構えていた。クリスタルパレスのアラン・パーデュー監督が、「アントニー・マルシャルさえ抑えておけば、ユナイテッドには負けない」と語っていたが、ASモナコからやって来た20歳のストライカーが強引に仕掛けたときだけ、ユナイテッド・サポーターは胸をときめかせた。パーデューの発言は的を射ている。

要するにはファン・ハールが自分に酔いしれ、四六時中ドランカー状態だったということだ。シラフではないのだから、勝てるはずがない。

ペップ就任発表から負のスパイラルへ

ペップ就任発表から負のスパイラルへ

主力の負傷離脱が相次ぐも、ベスト4進出に導いたペジェグリーニ監督 photo/Getty Images

マンチェスター・シティは幕引きに失敗した。「マヌエル・ペジェグリーニ体制は今シーズン限り。来シーズンからジョゼップ・グアルディオラが新監督に就任する」。この発表がなされた2月1日以降、6勝4分け5敗。選手たちはピッチに集中できず、ズルズルと優勝戦線から後退していった。

もちろん、主力に負傷が相次いだこと、彼らをバックアップする戦力を有していなかったことも痛手であり、クラブ史上初のベスト4進出という好結果を出したチャンピオンズリーグを含め、全59試合という過密日程もアダにはなった。しかし、新シーズンの人事を2月に発表すれば、選手の心にさざ波が立つ。終盤戦を迎える前に上層部が “オフサイド” を犯した。これがシティの敗因である。

ヤヤ・トゥレ33歳、ヴァンサン・コンパニ、ダビド・シルバ30歳、セルヒオ・アグエロ27歳……。3シーズン前、リーグ優勝を達成した当時のメンバーは確実に年をとり、今後はフィジカルの維持が難しくなる。名将グアルディオラであっても、一朝一夕に建て直すのは難しい。少し、時間がかかるかもしれない。

結局のところ、プレミアの4強はそれぞれの理由で自滅していったのかもしれない。監督と上層部の連携不足、選手のモチベーション低下、主力選手の負傷離脱、監督が自らの哲学に固執するなど様々な要因で、本来発揮できるはずだった勝負強さを失ってしまった。来シーズン、ビッグクラブの新たなチャレンジに注目が集まる。

文/粕谷 秀樹

theWORLD174号 2016年5月23日配信の記事より転載

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