[今語りたいフットボーラー! 2]100試合で58得点にからんだ香川 さらなる成長を遂げるために必要なものとは

トゥヘルの選択肢から外れ ベンチ外になったことも

トゥヘルの選択肢から外れ ベンチ外になったことも

今季ハイレベルなポジション争いを経験し、ベンチ外になったことも photo/Getty Images

今季第28節のブレーメン戦に途中出場し 、ブンデスリーガ100試合出場を達成。この試合で自らゴールも奪い、通算得点を32に伸ばした(アシストは26)。100試合で58得点にからんでおり、2試合に1得点以上の割合でゴールにつながる仕事をしている。香川真司がここ数年のドルトムントの攻 撃を支えてきた中心選手のひとりであることに間違いはない 。

「100試合に出場できたのも 、チームの仲間、スタッフ、そして応援してくれるサポーターのみなさんのおかげだと思っています。これからも一歩ずつ前へ進んでいきます」

記念すべき一戦を終えて、香川は自身のブログでこうコメントしている 。2010-11シーズンにドルトムントに加わり 、2年続けてマイスターシャーレを獲得。その後、マンチェスター・ユナイテッドに移籍して2年間プレイしたのち、14-15シーズンにドルトムントへ 帰還 。欧州に渡ってすでに6年となり 、今年3 月17日に誕生日を迎えて27歳となった 。

無論、もう若手ではない。一方で、もう伸びしろがないという年齢でもない。サッカー選手としてまだまだ目指すべき高みがあるのは明白で、香川自身もそこに到達するために日々プレイしている。だからこその「一歩ずつ進んでいきます」 という決意表明である。

サッカー選手に限らず、人はなにかを乗り越えたときに成長するもので、生きていくうえでは艱難辛苦が あったほうがいい。そういった意味で、いまの香川はさらにレベルアップできる環境に置かれている。

ユルゲン・クロップからドルトムントを引き継いだトーマス・トゥヘ ルは、前者と同じく選手に寄り添い、その特徴を生かしたサッカーを指向する指揮官だ。一方で、クロップがチームの完成度を高めるべく選手をある程度固定していたのに対して、トゥヘルは試合に応じて選手を入れ替え、チームに変化を加えながら戦っている。

顕著に表われたのが第25節のバイエルン戦だ。中盤でアグレッシブな守備を仕掛けてくる相手に対して、トゥヘルは[3-4-3]を採用し、トップ下に司令塔を置かない布陣で戦った。前線の3人はピエール=エメリク・オバメヤン、マ ルコ・ロイス、ヘンリク・ムヒタリア ンで、香川は先発から外れただけでなく、ベンチにも入れなかった。

この試合だけでなく、今シーズンはトゥヘルの選択肢から外れることがあり、第30節を終えた 段階で22試合の出場となっている。中盤、前線の選手のなかでもっとも多くの試合に出場しているのがオバメヤンで29試合 。次がムヒタリアンの25試合。22試合はその次となっており、決して少ない出場数ではない。

少なくはないが、バイエルン戦でのベンチ外もあり、トゥヘル のもと苦しいシーズンを過ごしている印象がある 。 実際 、UELのリヴァプールとのホームゲームにも出場していない。トゥヘルのなかで、香川を必要としない試合があるのは紛れもない事実なのである。

勝利に貢献することが ステイタスの向上に繋がる

勝利に貢献することが ステイタスの向上に繋がる

トゥヘルは評価していないのではなく、戦術的な理由で選択しないときがある photo/Getty Images

試合によって出られる、出られないという状況は、選手にとって素直に受け入れられることではない。自分になにが不足しているか、ピッチに立つためには、なにが必要なのか。事あるごとに考え、日々課題に取り組むことになる。艱難辛苦が あったほうが成長できるというのは、こういう側面があるからだ。

トゥヘルが香川に求めているのは、相手の嫌がるところでボールを受け、ゴールにつながる仕事をすることだ。ある程度のプレッシャーであれば、香川の高い技術力があればかわすことができ、周囲との連係で崩すことができる。なんだかんだで22試合に出場している事実から判断すれば、トゥヘルが香川を高く評価し、信頼していることがわかる。

バイエルンやリヴァプールとの ホームゲームでピッチに立てなかったのは、これらの試合では中盤でのプレッシャーが通常の試合よりも厳しく速いためで、ここに香川が成長できる要素がある。バイエルン戦 は[3-4-3]で 戦ったが 、リヴァプール戦 は[4-2-3-1]で 、い つも香川がプレイするトップ下にはムヒタリアンが起用されている。選択肢としては、ムヒタリアンを右サイド、香川をトップ下というのもあったはずである。しかし、トゥヘルのファーストチョイスはムヒタリアンだった。

香川とムヒタリアンはそもそもタイプが違うが、どんな違いがあるかを考えると、個の力で突破できるかどうかが真っ先にあげられる。香川が周囲の選手との連係で丁寧に相 手守備陣を崩すのに対して、ムヒタリアンはときに強引なドリブル突破を仕掛け、そのままゴールを奪うことがある。また、シュート力も違う。ムヒタリアンはパワーがあり、ミドルレンジから強烈なシュートを放つ。

どちらが優れていて、劣っているという話ではない。あくまでもタイプが違うので、比べることはできない。ただ、トゥヘルは試合に応じてトップ下 に香川ではなく、ムヒタリアンを選択 することがある。あるいは、トップ下を置かないことがあるというだけだ。

いまから香川にドリブル能力を高め、パワーを身につけてミドルレンジからも狙えるようになれというのはナンセンスだ。香川が取り組むべきは、自身の特徴により磨きをかけることである。運動量や高い足元の技術力を生かして相手の嫌がるところでボールを受けて攻撃の起点となり、正確なロングパ ス、ショートパスを使って周囲の選手と連係してゴールを奪う。得点にからみ、チームに勝利をもたらすことが、自身の評価を高める一番の方法だといえる。

すでにUELで敗退し、ブンデスリーガの逆転優勝もほぼ不可能となっている。今シーズンのドルトムントに残されたタイトルは、DFBポカール(ドイツ杯)しかない。香川の存在によってチームが効果的に機能し、タイトルを獲得できたなら、トゥヘルの考えも変わってくるだろう。

ただ、最後にもう一度指摘しておくと、トゥヘルは決して香川を評価していないわけではない。むしろ 、貴重な戦力だと認識している。この指揮官は勝つことにこだわる戦術家で、試合に応じて適した選手を選択しているに過ぎない 。ドルトムントの公式HPから 、トゥヘルのこんな言葉を見つけることができた。

「これほど素晴らしい戦力が揃っているなんて、本当に恵まれていると思う。全員の力を信頼しているし、誰もがピッチに立ちたいという意欲に満ちている。たとえ先発できなくても、その悔しさを一時的に忘れ、チームのためにプレイしてくれる選手ばかりだ」

厳しいポジション争いがあるなか 、香川は第29節シャルケ戦で巧みなループシュートを決め、第30節ハンブルク戦では2ゴールにからんだ 。こうした活躍を続け 、チームに勝利をもたらすことが自身のステイタスを高めることになるのは間違いない。

文/飯塚 健司

theWORLD173号 2015年4月23日配信の記事より転載

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