[今語りたいフットボーラー! 1]本田が苦闘の末に辿り着いた”新たな10番像”とは

"トップ下"としてスタートした本田の今シーズン

今季は戦い続けたシーズンだった photo/Getty Images

10番の在り方が一つなんて誰が決めたのか。本田圭佑は今季、ほかの10番とは異なる戦い方を示した。自分のやり方を貫くことで、新しい居場所を手にしている。本田の今季は、アップダウンがあった。

昨年8月、ミランは格下のチームとコッパ・イタリアで対戦した。ミハイロビッチ監督は新シーズンを占う試金石として「ベストメンバーで試合に臨む」と明言。本田はトップ下で先発し、1ゴール1アシストの活躍を見せた。このときは多くの人がピッチで躍動する10番に期待しただろう。

だが、注目度の高い9月のミラノダービーでのパフォーマンスが酷評。チームはトップ下を置かないシステムを使い出し、本田はベンチに追いやられる。さらに、10月に入ると本田の発言がクラブ批判ととられ、各方面から叩かれた。言っていることは的外れではないものの、そんなことを言う資格のない選手だと切り捨てられたのだ。ここまでの流れが本田にとってどん底の時期だった。その後、年末に約3カ月ぶりとなるリーグ戦先発出場の機会で指揮官に「このプレイなら出番はある」と称賛されると、周囲の評価はうなぎのぼり。ミランが調子を上げたこともあって、復調の立役者の一人として祭り上げられた。

大雑把に言えば、本田のシーズンの流れはこんなところである。ポジションやチームのシステムなど、さまざまなことが変わり、本田の今季は浮き沈みがあった。だが、先日伊『Gazzetta dello sport』のインタビューで自分は変わっていないと本田は語っている。本田の言葉をそのままに捉えると、確かに変わっていない点が見えてくる。まず、一貫して評価されているのが守備の貢献だ。一方で、攻撃の評価はバラツキがある。これこそ、「ミランの10番に求められる周囲の期待」と「10番を着た本田」のイメージの差を表している。

イタリア人が10番に抱く「期待」は、他国のそれを上回る。そういったエピソードは、サッカーファンが幾度となく耳にしてきたことだろう。組織でガチガチのイタリアの守備を、圧倒的な個人の閃き・技術によって切り拓く。それがイタリア人が思い描く、そして望んでいる10番像だ。しかし、本田は上記の『Gazzetta dello sport』のインタビューで、「自分は決して悪くないが、怪物でもない。自分はチームプレイヤーです」と話していた。これでは理解されないのも無理はない。

ミランの10番に求められる"ファンタジスタ"としての役割

ミランの10番に求められる

新たな指揮官ブロッキの下、さらなる競争が始まる photo/Getty Images

ファンのみならず、チームもクラブも「トップ下の10番」は試合を決める選手だと思っている。その「役目」を果たさなければ評価はされない。だからこそ、違いをつくる仕事をしていない輸入物の10番には厳しい評価が下され、信頼してボールを預ける選手も減る。「チームプレイヤー」である本田。パスを受けられなければ、攻撃の見せ場が減るのは自然なことだ。

そういった意味で、トップ下のポジションがなくなったことは、本田にとってプラスに働いたようにも思う。本田本人はきっと納得しないだろうが、それでも守備の貢献が評価される位置で起用されたことは、自身の地位を確立するのに役立った。
ミランの10番としてではなく、本田圭佑として評価されるようになった。次のシーズンまでのつなぎ役を任されたブロッキ新監督は、名誉会長が好む4−3−1−2を使うものとみられている。トップ下としての本田は、今でも試合を変えるほどの選手として評価されていないだろう。だからこそ、夏の選手補強に何度もトップ下の選手の名前が挙がっている。だが、右サイドでのプレイを経験して周囲の信頼を手にした今であれば、イタリア人が思い描く「トップ下の10番」が本田とイコールで結ばれるかもしれない。

ナポリFWゴンサロ・イグアインの出場停止は、しばらくイタリアメディアで話題になり続けた。そんな最中のインタビューで、本田はイグアインの出場停止を知らなかったそうだ。これには一部のイタリアメディアが驚きの反応を見せていたが、問題なんてない。型にはまらない彼だからこそ、新しいカタチを生み出すことができる。そう信じたいところだ。

文/伊藤敬佑

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