[今、一番面白いチームはレスターだ! 1]これが奇跡を起こす11人! 不動のスタメンに課せられたタスク

明確な役割分担は比類なきストロングポイント

明確な役割分担は比類なきストロングポイント

レスターの快進撃はまさに「奇跡」だ photo/Getty Images

〈SIMPLE IS BEST 〉

レスター・シティのコンセプトは極めて明快だ。ボール奪取後は前線のスピードを活かすため、できるだけ早くスペースに展開する。相手ボールになった際はポジションに応じ、ハイプレスとリトリートを使い分ける。「攻守の切り替えを素早く、鋭く」。クラウディオ・ラニエリ監督のプランは分かりやすい。

マイボールになった瞬間、ジェイミー・バーディと岡崎慎司は前線のスペースへ、あるいは相手CBとサイドバックの裏に走っていく。ここがひとつの肝だ。レスターが得意とするカウンターは、人からスペースに向けたパスが基本となる。人から人へではスピードダウンを招き、カウンターの効果は著しく低下する。この、極めて単純なプランが徹底されており、なおかつバーディと岡崎は運動量が豊富なため、過酷とも思えるタスクをいともたやすくこなしている。

とくに岡崎はつねにプレスを心がけ、空いたスペースも手厚くケア。スタメン・フル出場が3試合(30節終了時点)しかないことは、オーバーワークによる疲弊を避けるための、ラニエリ監督の配慮に違いない。また、左サイドハーフのマーク・オルブライトンも、ロング、ショートのスプリントを頻繁に繰り返して好守に貢献。彼もスタメン・フル出場は11試合と少ないが、勤続疲労を踏まえたラニエリ監督の采配である。

ダニー・ドリンクウォーターとエンゴロ・カンテの中盤センターも貢献度大だ。ともに読み・予測に優れ、運動量も多い。なかでもカンテは『Squawka』(英国の人気スポーツサイト)の調査によると、30節終了時点で93回のタックルと120回のインターセプトを記録している。いつのまにか間合いを詰め、ファウルをせずにあっさりボールを奪う。そして素早く前線へ。つなげる技術を持っていたとしても、コンセプトに則ったプレイに徹している。

しかし、縦への展開ばかりでは今シーズンの好調はない。一本調子にアクセントを加えるのが、右サイドハーフのリヤド・マフレズだ。ボールを持ちすぎるために周囲がノッキングを起こすケースもあるが、マフレズのキープ力が奏功したケースも一度や二度ではなかった。彼がタメを創ることによって、他の選手が前線に駆け上がる。

チーム全体のハードワークが守備陣の好調をももたらした

チーム全体のハードワークが守備陣の好調をももたらした

ジルーとの体格差をものともせず、ボールを奪うカンテ photo/Getty Images

前線、中盤の恩恵に浴しているのが4バックである。いずれもモダンなタイプではない。優勝を争うライバルチームでポジションをとれるとも思えない。しかし、ハードワークを実践する前線と中盤がパスコースを限定するため、最終ラインの作業は難しくない。とにかく突破されないこと。この徹底したプランが根付いた中盤戦以降は失点も激減。19節までは1・32を数えた1試合の平均失点が、20節以降は0・55に改善されている。その自信からか、ダニー・シンプソン、クリスティアン・フクスの両サイドバックは攻撃への関与も増え、センターバックはクロス対応に絶対の自信を見せる。

また、4バックの安定はGKカスパー・シュマイケルに波及し、不安定なボール処理がほとんどなくなった。攻撃の起点となる正確なフィードは期待できないものの、父親譲りのロングキックでバーディ、岡崎の走力を活かす。

縦の意識とハードワークはフットボールの基本であり、プレミアリーグ全体のストロングポイントだったが、近ごろは中途半端なトレンド志向、すなわち間違ったポゼッションの導入が横パスによるスピードダウンを招き、ヨーロッパの舞台でも早期敗退の憂き目に遭ってきた。しかし、レスターの進撃とトッテナム・ホットスパーの復調は、縦の意識がふたたび芽生えたからだ。

かつて、チャンピオンズリーグのベスト4を独占した当時のプレミアリーグ勢は、みんな縦に速く、鋭かった。レスターは決して目新しくない。イングランドの基本とストロングポイントを再発見しただけだ。流行に乗らなくても、十分に闘えることを、今季のレスターは証明している。

文/粕谷 秀樹

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theWORLD172号 2016年3月23日配信の記事より転載

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