[頭角を現すU-23プレイヤー 1]センスも技術もひと味ちがう! 英国産のニュータイプ

若手と思えぬ冷静沈着ぶりが、的確な状況判断を生み出す

ジョン・ストーンズは、周りがよく見えている。彼が所属するエヴァートンのロベルト・マルティネス監督も、「状況判断の良さは天性のもの。だからこそ、落ち着いてプレイできるんじゃないかな」と絶賛していた。ボールを扱う際も決して慌てず、味方につなぐか、クリアで逃げるか、瞬時の判断で最善の選択を行うことができる。ボール奪取しか考えず、フィフティーのボールに食らいつきすぎてケガを繰り返すだけの英国人DFとはセンスが違う。

また、フィードの精度も磨かれてきたため、来シーズンからマンチェスター・シティの監督に就任するジョゼップ・グアルディオラが、獲得希望リストのトップにストーンズの名を記したとの情報も飛び交いはじめた。バルセロナのスカウト陣も頻繁にチェックしている。「引き留めるのは難しい」と、マルティネス監督も移籍を認めざるをえないようだ。ストーンズは、いよいよメガクラブでみずからの真価を問う。

状況判断をキーワードとするならば、トッテナム・ホットスパーのデル・アリも18歳とは思えない落ち着きだ。数的不利に陥っても混乱せず、柔軟なボールキープで次につなげる。さらに、ボールを受ける前にフェイク、プルアウェイを繰り返し、マーカーを幻惑する工夫も常に凝らしている。ファイター型、ボックス・トゥ・ボックス型が好まれてきたイングランドの中盤では異質であり、よりラテンに近いタイプのMFといっていいだろう。
「今シーズンはすべてがうまくいっている。どこが相手だろうと、試合が楽しくて仕方がない。でも、いつかスランプは必ずやって来る。そのときに対処できるか。まだまだいろいろと経験しないとね」

26節終了時点で7ゴール・5アシスト。スパーズ躍進の一翼を担うアリだが、少しも浮ついていない。これも天性の状況判断である。

イングランドの未来を担う、名手の後継者たち

昨シーズンの開幕時点で、ハリー・ケインは三番手のセンターフォワードだった。エマニュエル・アデバヨール、ロベルト・ソルダードに次ぐ存在でしかなく、国内のカップ戦要員といって差し支えなかった。しかし、スパーズのマウリシオ・ポチェッティーノ新監督(当時)が採用したハイライン・ハイプレスに即フィットしたケインは、またたく間に定位置を奪取。21ゴールを挙げ、得点王レースでもセルヒオ・アグエロ(マンチェスター・シティ)の26ゴールに次いで2位に食い込んだ。

オーソドックスな9番タイプであり、深い懐を利したポストプレイにも長けている。また、1 8 3センチと飛びぬけて大柄ではないものの、空中戦にも非常に強い。いうなれば万能型だ。

「ガリー・リネカーというよりも、ジョフ・ハーストに近いかもしれないな」イングランド代表のロイ・ホジソン監督は、1966年に地元開催されたワールドカップのヒーローのイメージをケインに抱いていた。待望久しい本格派ストライカーの誕生だ。
ケインがハーストの後継者ならば、ロス・バークリーはボビー・チャールトンの系譜かもしれない。ブラジル・ワールドカップのイングランド代表に選ばれたとき、『BBC』は“ポール・ガスコインの再来”と特集を組んだが、スケールはさらに大きく、つねにクールな姿勢はチャールトンを思わせる。また、ナイジェリア人(祖父)の血を引いているため、189センチ・79キロという大柄の割には敏捷、かつ柔軟だ。これまでのイングランドには存在しなかったニュータイプである。

高度なボールキープ力を過信し、せっかくのチャンスを不意にするケースもあるが、こうした欠点は経験が解消する。いまはミスを恐れずに、だれもが認める大きなスケールに磨きをかけるべきだろう。小さくまとまったら、おもしろくないじゃないか。

文/粕谷 秀樹

theWORLD171号 2016年2月23日配信の記事より転載

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