[UCL/UEL欧州戦力図 4]ジダン・エフェクト発動! UCLにコンチェルトを奏でる

原点回帰で再生させた世界最高レベルの攻撃力

原点回帰で再生させた世界最高レベルの攻撃力

チームを甦らせたジダン。その姿はオーケストラの指揮者のようにエレガント photo/Getty Images

一体誰がこんなプロローグを予想できただろうか。昨年12月14日、スイスのニヨンで決勝トーナメント1回戦の組み合わせ抽選会が行われてからの1カ月間で、両チームはともに監督交代に踏み切った。

グループステージを無敗の首位で通過していたレアル・マドリードだが、今月4日にラファエル・ベニテス監督を解任すると、それまでBチームを率いていたジネディーヌ・ジダンをトップチームの指揮官に任命。すると、その8日後には、ローマがルディ・ガルシア監督の解任を発表し、2005年から2009年までチームを率いたルチアーノ・スパレッティが電撃復帰を果たした。

シーズン途中の監督交代はカンフル剤となるが、2月18日に行われるファーストレグまで、残された時間は多くない。わずかな準備期間で、両指揮官はどれだけチームを掌握できるのか。そして、この大一番を勝ち抜くチームをどう仕上げていくのか。なかでも注目を集めるのは、指揮官としてこの試合でUCLデビューを果たすジダンの方になるだろう。

クラブのレジェンドにして、サッカー界の英雄であるジダンの監督就任によって、レアルを取り巻く雰囲気は一変した。昨年11月の“エル・クラシコ”で0-4の歴史的大敗を喫して以降、本拠地サンティアゴ・ベルナベウでは常にサポーターからのブーイングが鳴り響き、地元メディアは“ベニテス解任キャンペーン”ともいうべき批判を続けていた。だが、新体制の初陣となった9日のデポルティーボ戦は5-0、続く17日のスポルティング・ヒホン戦では5-1という圧勝劇を収めたことで、サポーターたちには笑顔が戻った。そして、スポーツ紙『アス』は「ジダンに酔いしれる」との見出しを打って、チームの変貌ぶりを絶賛。今では「ジダンが率いるレアルならきっとやってくれる」という、圧倒的にポジティブな雰囲気がクラブを包んでいる。

もちろん、“ジダン・エフェクト”はピッチ上にも表れている。戦術面では、ボールポゼッションをベースとするカルロ・アンチェロッティ時代のスタイルへと回帰した。その中心にいるのは、ルカ・モドリッチとトニ・クロースの司令塔2人。ピッチ中央に陣取る彼らが素早くパスを回しながら、相手を攻略していく攻撃の形は、2013-14シーズンに“ラ・デシマ(CL10冠)”を達成したチームのそれに近いものとなっている。モドリッチが「僕らはボールを持った方がより危険だ」と言うとおり、もともとレアルはボールを持つことで、世界最強レベルの攻撃力を発揮するチームだった。それ故、“原点回帰”によって、選手たちがまるで水を得た魚のように躍動しているのは、当然の帰結でもある。

ジンクスも経験も関係なし UCLデビュー戦は圧倒的優位

ジンクスも経験も関係なし UCLデビュー戦は圧倒的優位

スター選手たちも生まれ変わったように活き活きとプレイしはじめた photo/Getty Images

一方で、一般紙『エル・パイース』が「ジダン新体制で変わったこと」の1つに挙げたのが、守備面での積極的なアクションだ。デポルティーボ戦ではチーム全体で合計66度もボール奪取を成功させており、リーグ戦1試合当たり平均53回だったベニテス政権時を上回った。ジダンは監督就任会見で「守らない選手は使わない」「ボールを持っていない時は、誰もがハードワークしなければならない」と語ったが、ギャレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドの“BBC”にしても、カリスマ性抜群の指揮官の前では、前線からのプレッシングを怠らない。レアルは先日、コパ・デル・レイで出場資格のない選手をプレイさせたことで、大会からの失格処分を受けたが、その分、チーム作りに時間を割けるため、攻守のバランス向上はさらに改善が図られることになるだろう。

では、新生レアルに付け入る隙はないのだろうか。その答えは、限りなくイエスに近い。新体制で戦ったここまでの2試合は、いずれも格下が相手であり、共にホームゲームだったという意見はあるだろう。とはいえ、内容は満点に近いものだった。またC・ロナウドが「選手はベニテスよりもジダンにシンパシーを感じている」と打ち明けるように、チームは短期間で一枚岩となっている。一方のローマは、新体制での初戦となった17日のヴェローナ戦で、最下位のチーム相手に1-1のドロー。まだ1試合を戦っただけとはいえ、今季セリエAで2番目に多い引き分け数が示すように、「勝ちきれない」という課題は払拭されていない。いくらローマが侮れない敵であり、ジダンに指導者としての経験が不足しているといっても、圧倒的優位は変わらないはずだ。

それでも、あえて不安要素を挙げるなら、過去の対戦成績になるだろうか。実はレアルは、イタリア勢を大の苦手としている。セリエAのチームとのアウェイゲームは、直近8試合に未勝利(4分4敗)。さらに、2試合制で争う決勝トーナメントでは8連敗中と相性は最悪なのだ。

ただし、そうした過去のジンクスも、ジダン相手には通用しない可能性が高い。実際、現役時代にユヴェントスでプレイしたフランス人指揮官は、その後のレアル在籍時を含めて、ローマ戦は7勝5分け2敗と大きく勝ち越している。順風満帆なスタートを切った反動として、周囲は不安を煽るかもしれない。だが、ここでも“ジダン・エフェクト”が発動されることになるはずだ。

無論、ビッグイヤー制覇となれば話は変わってくるし、今後初めて味わう敗戦の中身次第では、現在の楽観論は一気に吹き飛ぶかもしれない。しかし少なくとも、熱気を取り戻した今のレアルには、理屈を超えた強さがある。このローマ戦を終えた時、ジダン率いるチームを祝う新たな狂騒曲が鳴り響いたとしても不思議ではない。
文/北川 紳也
theWORLD170号 2015年1月23日配信の記事より転載

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