[UCL/UEL欧州戦力図 1]ついに幕を開けるUCLラウンド16プレビュー

見どころ満載のラウンド16 ユーヴェ×バイエルンが激突

2月16日からUCLのラウンド16がスタートする。先陣を切って行なわれるのが、パリSG×チェルシー、ベンフィカ×ゼニトの2試合だ。今季のパリSGはリーグ・アンでいまだ負けなし(第21節終了時点)。UCLのグループリーグは4勝1分け1敗だったが、勝てなかった2試合はRマドリードとの対戦であり、敗れた1試合はサンチャゴベルナベウでのアウェイゲームとなっている。しかも、敗れたとはいえ0-1の惜敗だった。

ローラン・ブラン監督のもと、ズラタン・イブラヒモビッチ、エディンソン・カバーニ、アンヘル・ディ・マリア、エゼキエル・ラベッシなど、各国代表を揃える豪華な布陣についていまさら説明するまでもない。カバーニ、ラベッシは1月中に移籍する噂があり、両名が抜けると得点力がダウンするのは間違いないが、圧倒的な存在感を誇るイブラヒモビッチがいる。

また、対戦相手はフース・ヒディンク監督を迎えたもののいまだ復調途上にあるチェルシーだ。前任者のジョゼ・モウリーニョはアウェイでは現実的な戦術を選択し、とにかく失点しない戦いをすることがあった。ヒディンクもときに大胆な戦術を採用するが、いまの不安定なチェルシーでは指揮官の考えをしっかりとピッチで遂行できないだろう。この一戦はパリSGが有利だ。
17日にはヘント×ヴォルフスブルク、ローマ×Rマドリードが行なわれる。ヘントとの対戦が決まったヴォルフスブルクのクラウス・アロフスGMは、「面白い抽選結果だ。相手を軽く見るつもりはないが、なんとかなりそうな気がする」とさっそく楽観的な発言をしていた。どんな試合でも油断は禁物だが、両者の戦力を比べるとアロフスがこの対戦を歓迎したのも頷ける。

フォルクスワーゲンをスポンサーとするヴォルフスブルクは資金力があり、ブンデスリーガのなかでも屈指の選手層の厚さを誇る。最終ラインから前線まで各国の代表選手が揃っていて、ドイツ代表のアンドレ・シュールレやオランダ代表のバス・ドストがベンチスタートとなる試合も多い。よほどのことがない限り、波乱は起きないだろう。

ローマ×Rマドリードも順当な結果に終わりそうだ。ローマは1月中旬にルディ・ガルシア監督を解任したばかりで、チームが不安定な状態にある。ルチアーノ・スパレッティ新監督のもとで臨んだ1月17日のセリエA第20節は最下位に沈むヴェローナとのホームゲームだったが、1-1で引き分けている。2016年を迎えて、ローマは3試合連続ドローと苦しんでいる。「UCLは特別な大会で、ローマは厳しい相手だ」と謙虚に語るのはかつてRマドリードでプレイし、現在はクラブの幹部となっているエミリオ・ブトラゲーニョだが、この試合でも波乱は起きないだろう。

ローマと同じくRマドリードも指揮官を交代したが、こちらはジネディーヌ・ジダン監督の初陣となった第19節デポルティーボ戦に5-0で快勝し、続く第20節スポルティング・ヒホン戦にも5-1で圧勝している。両チームの現状を考えると、Rマドリードがここで姿を消すことはない。

バルサに挑むアーセナル ここでも波乱は起きない

2月2 3日の2試合はどちらも見逃せない。アーセナル×バルセロナ、ユヴェントス×バイエルンで、同時刻にキックオフされるのがもったいない組合せとなっている。T V中継で楽しむ方は、チャンネルを頻繁に変えることになるだろう。とはいえ、メッシ、ネイマール、ルイス・スアレスを擁する王者バルセロナはやはり優勝候補の筆頭で、仮に敗れるようなことがあれば驚きをもって世界に配信される大波乱となる。

アーセナルはプレミアリーグで首位をキープするが、1月13日の第21節リヴァプール戦、17日の第22節ストーク戦に立て続けに引き分けており、絶対的な強さを見せているわけではない。マンチェスターU、マンチェスターC、チェルシー、リヴァプールなど例年上位を占めるクラブに勢いがなく、これらのチームよりは安定感のあるアーセナルが首位に立っているに過ぎない。

それでも、メスト・エジルのパフォーマンスは際立っているし、前線ではオリヴィエ・ジルーがゴールを量産している。また、フィニッシュの精度が高く、決定力のあるアレクシス・サンチェスもいる。過去に幾多の厳しい戦いを経験してきたアーセン・ヴェンゲル監督のもと、各選手が高い集中力を維持してバルセロナが繰り出す攻撃に耐えることができれば、あるいは勝機が出てくるかもしれない。多くのチームが、バルセロナの攻撃に耐えられないのが現実だが……。

ユヴェントス×バイエルンは昨季のセリエA王者とブンデスリーガ王者の対戦になる。ユヴェントスはシーズン序盤こそ不調だったが、試合をこなすごとに本調子を取り戻し、セリエAで第11節トリノ戦(○2-1)から第20節ウディネーゼ戦(○4-0)まで10連勝を飾っている。完全に復調しており、どちらが勝ってもおかしくない一戦だ。

「2つのトップチームが激突する好カードだ。昨季のユベントスは決勝に進出しており、ボクらにとっては大きな挑戦になる」

バイエルンのフィリップ・ラームは対戦が決定したあとにこう語っている。今季限りで退団するジョゼップ・グアルディオラ監督の花道をU C L制覇で飾りたいバイエルンだが、ラウンド1 6でいきなり大きなヤマ場を迎えたといえる。

第1戦の最終日(24日)に行なわれるのが、PSV×Aマドリード、ディナモ・キエフ×マンチェスターCだ。注目したいのはPSV×Aマドリードで、PSVはグループリーグでマンチェスターUとのホーム&アウェイに1勝1分けで競り勝っており、勝負強さがある。チームを率いるのはかつてオランダ代表で活躍したフィリップ・コクーで、「いまはこの瞬間を楽しみたい」と語り、ラウンド16がはじまるのを楽しみにしている。

迎え撃つAマドリードは就任5年目を迎えたディエゴ・シメオネ監督のもと、リーガ・エスパニョーラで首位に立つなど充実した戦いを続けている( 第2 0節終了時点)。シメオネ監督には来季チェルシーの監督に就任するという報道もあり、これが本当なら今季は集大成となるシーズンで、U C L制覇という最高の結果を残したいところだろう。
失うものがない無欲のP S Vに対して、Aマドリードは欧州王者の称号を強く欲している。好対照な両者の戦いは果たしてどんな結果に終わるのか… …。ともに今季好調なだけに、好勝負になるのは間違いない。

文/飯塚 健司

theWORLD170号 2015年1月23日配信の記事より転載

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