[新天地で違いを生み出す選手たち 2]リーガ2強に対し底上げを目指す対抗勢力たち

ブラジルの宝石は期待通り。新天地のFWはゴールが急務

ブラジルの宝石は期待通り。新天地のFWはゴールが急務

右サイドバックに定着しそうなダニーロだったが、代表戦で負傷した photo/Getty Images

レアル・マドリードはフロレンティーノ・ペレス会長の信奉者が望むようなメガスターを獲得せず、バルセロナは未成年の選手獲得・登録に違反したとしてFIFAから新戦力の選手登録を禁じられている。マドリーはダニーロで何とか一人工面できるとしても、リーガ・エスパニョーラの今季の補強において、2強が主役にはなることは難しい。しかしながら他クラブに目を向ければ、チームの軸になり得る、新加入選手がピッチに立っている。目を留めておいても損はないはずだ。

さて、前述したダニーロは、マドリーが昨季の冬の市場でポルトから獲得。名サイドバックを生み出してきたブラジルの新たな宝石だ。先に右足底筋膜を損傷して1カ月の離脱と診断されたが、リーガ第2節までのプレイは及第点以上であり、将来的に世界最高の右サイドバックと称される可能性も秘めている。広いストライドで前線まで駆け上がり、あわよくばゴールさえ狙う。また守備も堅実であり、184センチという長身は逆サイドからのクロスに対処することでも威力を発揮。今季はダニ・カルバハルとポジションを争うと目されていたが、負傷前までは一歩リードしていたのは明らか。レアルがポルトに3150万ユーロを支払ったのも、十分にうなずける逸材である。

一方、今夏に1億1600万ユーロの売却収入を手にして、1億4000万ユーロを選手補強に投じるなど、借金に悩まされていた時代を過去のものとしたアトレティコ・マドリード。目玉補強となったのが、移籍金3500万ユーロで引き入れたジャクソン・マルティネスだ。ただし、コロンビア代表のチームメートであるラダメル・ファルカオと同様にポルトからアトレティコに加入した同選手ではあるが、前出の同胞が加入早々に連係を取れていたのに対して、こちらは適応がやや遅れている印象。2トップを形成するアントワーヌ・グリーズマンとの役割分担やポストプレイなどで、動きが合わないことが散見される。それでも、第2節セビージャ戦で決めた抑えのきいたミドルなど、その個人能力の高さは折り紙つきだ。ファンの愛情は絶対的アイドルであるフェルナンド・トーレスに向いているが、ポルト時代の実力を発揮すれば、新たな英雄にもなれるはずだ。

新天地でフィットしきれないJ・マルティネス photo/Getty Images

下部組織から過ごしたアスレティック・ビルバオとの契約延長を頑なに拒み、仲違いという形でユヴェントスに加入したフェルナンド・ジョレンテは、セリエAでの挑戦を失敗のうちに終えた。古巣に戻るという選択肢のない長身FWを移籍金1000万ユーロで獲得したのは、「ジョレンテタイプのストライカーがほしい」と公言していたセビージャ。ウナイ・エメリは獲得直後から同選手を先発で起用し、彼にロングボールを放ることを主要武器の一つにしようとしている。しかしながらポストプレイを無難にこなしてはいるものの、決定機を物にできないなど、アスレティック時代の輝きはまだ見られない。地元メディアも「ジョレンテは主役になる必要がある」と書き立てており、早急に結果を手にする必要がありそうだ。

再起を目指すストライカー、古巣で輝きを増す地元のヒーロー

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ソルダードはビジャレアルの躍進をどこまで後押しできるか photo/Getty Images

昨年5月で30歳となったロベルト・ソルダードは、プレミアリーグで活躍できずにリーガ・エスパニョーラに復帰。若手選手を獲得対象とするビジャレアルにとっては珍しい補強だが、フェルナンド・ロッチ会長は、その理由を「今季のビジャレアルは財政的なバランスが取れており、この補強が許された。ヒエラルキーの上位に位置する選手のプレイというものを享受するためにね」と語る。開幕節ベティス戦で1得点をマークしているソルダードだが、やはりロングボールが激しく飛び交うプレミアリーグより、崩しの場面において狡猾な動き出しを見せられるリーガの方が肌に合うようだ。差し当たった問題は、攻撃陣が目まぐるしくポジションを変えるマルセリーノ・ガルシア・トラル率いるチームにあって、彼のような純粋なストライカーが融合を果たせるのかどうか。ただ、一つ見逃してはならないのは、チームメートにプレスを指示するなどの振る舞いだ。ロッチの言葉には、リーダーに君臨できる権利を有している選手、という意味もあるのだろう。

古巣への復帰を果たしたアシエル・イジャラメンディは成功例の1つかもしれない。シャビ・アロンソの後継者と目されてレアル・マドリードに加入した同選手は、強大な重圧がかかる世界最高峰のクラブでは、その才能を発揮できなかった。しかし古巣のソシエダでは、復帰当初からかつてのような卓越したゲームメイクを見せている。要因の一つに挙げられるのは、システムだろう。4-3-3を使用するマドリードではアンカーのポジションを務めることが多かったが、ソシエダ時代には2ボランチでコンビを形成していたマルケル・ベルガラが守備をサポートしていたことで自由な動きが許された。復帰後の相棒は汗かき役ではなくパサーのルベン・パルドだが、守備の負担が軽減されたことは変わらず、また的確なポジショニングなど老獪さも身に付けた。一度はつまずいた25歳のMFだが、それを糧にさらなる飛躍を果たす可能性もありそうだ。

ファンと選手が相思相愛となった補強もある。34歳とキャリアの終盤を迎えたホアキン・サンチェスのわがままは、下部組織から過ごした心のクラブに復帰することだった。ベティスの本拠地ベニト・ビジャマリンの入団発表で待ち受けていたのは、2万人のベティスファン。たとえ9年間離れていようとも、子供への愛情は絶えないのである。復帰第一戦となった第3節ソシエダ戦では、緩急を付けたドリブルで相手を一瞬かわして精度の高いクロスを送り、また内に絞ってラストパスを放つなどベティスの攻撃の中軸を担った。ルベン・カストロがヘディングで決めた決勝点も、そのクロスから生まれている。ホアキンが途中交代でピッチから去る際、ビジャマリンの3万8000人の観衆は総立ちで拍手。サッカーにいまだロマンチシズムが残っていることを、このベティスの補強は証明している。

文/江間 慎一郎

theWORLD166号 9月23日配信の記事より転載

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