[魁! サムライ・フットボーラー 1]現地ジャーナリストが見た、岡崎慎司プレミア初ゴールの真実

第2節での初ゴール! 存在感示した岡崎

第2節での初ゴール! 存在感示した岡崎

初ゴールの瞬間。頭でボールを捉えた岡崎 photo/Getty Images

プレミア開幕2連勝。レスター・シティにとって、これがいかに偉業であるか、その立役者が、FW岡崎慎司であることは、誰の目にも明らかだった。ところが、クラウディオ・ラニエリ監督は、試合後の会見で、岡崎のプレイについて褒めなかった。さらに初ゴールについては、周囲の臭いをかぐフリをしながら、こう言った。「まったく驚いていない。シンジは、ボックス内の臭いをかぎ分けられる。シンジにとって、普通のゴールだ」

レスターは今季プレミアリーグ開幕戦で、ホームでサンダーランドを4 - 2で下し、1週間後の8月1 5日、第2戦でウェストハムの敵地へ乗り込んだ。開幕から2戦連続でツートップの一角、セカンドストライカーとして先発した岡崎は2 7分、F Wバーディーの左クロスに飛び込んで右足アウトでシュート。G Kアドリアンに弾かれたが、そのリバウンドを頭で押し込み、先制点を決めた。岡崎の鋭い嗅覚と、最後まで諦めない驚異的な独特の粘りによって決めたゴールだ。まったく普通ではない。

これで優位に立ったレスターは、3 8分には岡崎のパスが起点になったプレイから、マフレズが追加点。後半に1失点したが、ウェストハムを2 - 1で下し、開幕2連勝を果たした。その翌日の英国各紙は、軒並み岡崎をマンオブザマッチに挙げたが、理由は攻撃だけではない。終始、守備時に相手にプレッシャーをかけ、ボールを追い廻したからだ。

このプレイでウェストハムのパスコースを限定し、攻撃の芽を摘んだ。岡崎が6 2分にベンチに下がったあとは、ウェストハムに押し込まれた。これはレスターの「前線からの守備」が弱まったことが原因である。いかに岡崎が効いていたか。ピッチにいずして、その存在感を示したのである。

初ゴールに満足せず「勝って兜の緒を締める」

初ゴールに満足せず「勝って兜の緒を締める」

持ち前の献身性は英メディアからも高評価 photo/Getty Images

ところが、ラニエリ監督同様、控室から出てきた岡崎も、それほど喜んでいなかった。記者から「初ゴールおめでとう」と声をかけられ、「まぁ、そうっすね。厳しい試合でしたけど」と照れ臭そうに笑うと、こう続けた。「何十試合のうちの1点にすぎない。これを続けなければ、1シーズン1点で終わってしまう。何も満足してない。チームの戦い方として、前半は自分たちのプレッシングサッカーで圧倒できた。でも後半は相手の方が上だった」

しっかり地に足をつけ、現実を直視していた。2連勝を飾り、開幕ダッシュを果たし、2節が終了した時点で首位のマンチェスター・シティに続く2位を走っているが、現実的にはレスターのチーム力では、今季プレミアに残留できるかどうかがボーダーラインだろう。プレッシングサッカーは、強豪相手には有効な戦い方にはならないし、今後はすべての対戦チームが対抗策を講じてくる。劣勢の試合が続くと、岡崎がゴールを決める機会も減り、負けが込めば、最初に先発の座を追われるのは、新加入で外国人選手である岡崎だ。2連勝して、自身が初ゴールを決めた程度では、まったく喜べないのだろう。

初ゴールも、岡崎なりの工夫と改良の末に、何とか決められた、という思いが強い。ゴールシーンについて、こう振り返る。「バーディーがいいボールを上げてくれた。今までの自分だったらトラップしていたけど、思い切れた」

開幕戦のサンダーランド戦でも2度、ゴールチャンスがあった。だがともに相手DFにブロックされた。これらの反省から、ゴール前へ入るタイミングやシュートモーションに入る動きを、もうワンテンポ速めないと、プレミアではゴールを決めることができない、と感じていたのだろう。

しかし動きを速めると、精度は鈍る。実際、右足シュートはGKに弾かれ、幸運にも、そのこぼれ球は岡崎の届くところに上がり、頭で押し込めた。だがそのとき岡崎は「GKももう一回反応してくるかと思った。自分だけが反応していてよかった」と振り返った。実際GKアドリアンは、岡崎が2度目のシュートを放つことを予測しておらず、反応が遅れた。トップレベルのGKだったなら、2度目のシュートも弾かれていた可能性がある。だから岡崎は、手放しでは喜べないのだ。

ラニエリ監督も同じ思いなのかもしれない。「普通のゴール」と評したのは、このレベルのゴールを基準にしろ、という岡崎への叱咤の思いがあるのだろう。英語に「Never be proud of yoursuccess」(ネバー・ビー・プラウド・オブ・ユア・サクセス)ということわざがある。日本語にすると「勝って兜の緒を締めよ」。ラニエリ監督も岡崎も、そんな気持ちで新シーズンをスタートさせている。

文/原田 公樹

theWORLD165号 8月23日配信の記事より転載

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