[監督から始まる新シーズン 4]圧倒的な安定感を見せるアッレグリ。抗するはマンチーニか、ミハイロビッチか

補強でも先んじるユヴェントスは、アッレグリの柔軟性がものを言う

補強でも先んじるユヴェントスは、アッレグリの柔軟性がものを言う

アッレグリのユヴェントスがどう見ても頭ひとつ抜けている photo/Getty Images

例年になく移籍市場が活発だ。圧倒的な力を見せつけたユヴェントスも、変化を強いられている。15-16シーズンはこれまで以上に監督をはじめとしたコーチングスタッフ陣の能力が試されるかもしれない。

アンドレア・ピルロやカルロス・テベスといった軸を失い、その他の主力にも移籍の噂がチラホラ聞こえるユヴェントスは、新メンバーにあった戦い方をしなければならない。サミ・ケディラやシモーネ・ザザ、パウロ・ディバラといった代役候補は補強済みだが、絶対王者という地位にあぐらをかいていたら移行は失敗する。ただし、チームを率いるのはマッシミリアーノ・アッレグリ。その場にいる戦力の中で適切なチョイスをする柔軟性が、彼の最大の強みだ。新戦力を適材適所に配置し、まず大崩れは起こさないだろう。優勝候補の筆頭であることは今季も変わらない。全チームが勝ち点ゼロから始まるリーグ戦だが、やはりすでに何歩かリードしている印象だ。

そして、いつまでもユヴェントスに大きな顔をさせたくないと意気込む第2勢力は必死だ。ミラノ勢とローマ勢、そしてナポリあたりの野心はユヴェントスも感じているだろう。

監督交代が頻繁なイタリア。素早く結果を出すことで、はじめて次の時間が与えられる。そういった意味でも注目したいのは、ミランのシニシャ・ミハイロビッチだ。彼がどのようにチームを作ってくるのかに、来季のカルチョを読み解くひとつのカギがある。

セリエAの監督たちに与えられる時間は多くない

セリエAの監督たちに与えられる時間は多くない

いまどき珍しい”鬼軍曹”タイプのミハイロビッチ photo/Getty Images

昨季までミハイロビッチが率いたサンプドリアは、セットプレイが一つの武器だった。幸いにも、ミランには個人で決める力のある選手がいる。この夏に獲得した新戦力も、爆発力を持った選手たちだ。最初から完成を目指すのではなく、狡猾に勝ち点を拾っていき、信頼をつかんだ上でじっくりとチームを整えていくというのが理想的だ。彼が持ち前のモチベーターとしての能力を発揮できれば、しだいに上位へ食い込んでいけるだろう。しかし、選手としてミランで歴史をつくったピッポ・インザーギ前監督に比べて、ミハイロビッチに対するファンとフロントが与える時間は当然短い。そのことは新監督自身も十分に分かっているはずだ。

インテルのロベルト・マンチーニにとって、ミハイロビッチはかつての盟友。今季のミラノダービーは、そういった意味でも関心が集まる。

昨季途中に“カリスマ”マンチーニを迎えたインテルは、チームづくりという点でナポリやミランより早く進んでいる。監督の実績と経験も圧倒的な差があるため、最も安定した結果が残せそうだ。だが、ヤヤ・トゥレを獲得できなかったことはマンチーニにとって想定外だった。指揮官はつねづね、トップレベルを経験した選手を獲得することでチーム全体に良い効果が出ると語っていたが、コートジボワール代表MFはマンチェター・シティ残留を決めた。かわりに獲得したジョフレイ・コンドグビアは22歳と若く、将来性は十分。良い補強である。ただ、マンチーニが望んでいたチーム全体を押し上げる圧倒的な実績のあるスターではない。一般的に考えれば、32歳のベテランに大金を投じるよりもコンドグビアを狙う方が賢い。だが、それでもマンチーニはヤヤが必要だと思っていた。理想どおりにいっていないという点では、少し気がかりである。

真価が問われる2年目のマンチーニ photo/Getty Images

監督力という点で最も予想しにくいのはナポリだ。ラファ・ベニテスがレアル・マドリードへ行き、後任にはマウリツィオ・サッリが呼ばれた。エンポリを指揮していたサッリは、その組織をまとめあげる手腕が高く評価されてナポリから声がかかっている。だから期待はできるのだが、はっきりと存在する不安要素に目をつむることはできない。

まずはビッグクラブのプレッシャーだ。エンポリでセリエAを経験したとはいえ、主要都市ナポリの伝統あるクラブを率いるのとは大きな違いだ。それも気性が荒い街。サッリはナポリ生まれで、自身もナポリファンだというが、サポーターから見れば“よそ者”だ。結果が出なければ、よそ者はあっという間に不振の原因にされてしまう。

この限られた時間というのも、サッリにとっては不安だ。サッリのエンポリが評価されたのは、その組織力だった。完全に意思統一ができたチームをつくる作業は、セリエBのときから始まっていた時間のかかるものだ。量より質を求めてサボることも忘れない上位チームの選手たちが、実績に乏しいサッリの要求どおりに動くかも未知数である。だからこそ、エンポリからミルコ・ヴァルディフィオーリを連れてくるなど動いているが、すぐに成果が出るかは実際にシーズンが始まってみなければ分からない。

今季もユヴェントスに挑むその他大勢という構図になりそうなセリエA。昨シーズンから継続しているチームは、ある程度計算できそうだが、大きな変化があったクラブはフタを開けるまで何が出るか分からない。ただ、メルカートで早く動けたチームほど、良い形でスタートを切れそうだ。

文/伊藤 敬佑

theWORLD164号 7月23日配信の記事より転載

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