[監督から始まる新シーズン 2]監督異動の少ないプレミア、読み解くカギは戦術より「プレッシャー」

激しい重圧にさらされるロジャーズとペジェグリーニ

激しい重圧にさらされるロジャーズとペジェグリーニ

ペジェグリーニにのしかかるプレッシャーは果てしなく大きい photo/Getty Images

プレミアリーグの2 0 1 5 – 1 6シーズンは8月8日に開幕するが、上位の監督人事に大きな動きはない。となると、今季の成績を予想するうえでカギとなるのは個々の戦術やスタイル以上に、監督たちにかかる「プレッシャー」に依るところが大きいと見る。

7月1 6日の時点で新任は、ウェストハム・ユナイテッドのスラベン・ビリッチ、ニューカッスル・ユナイテッドのスティーブ・マクラーレン、レスター・シティのクラウディオ・ラニエリ、ワトフォードのキケ・フローレス。4名とも十分な経験を積んでいるため、プレミアリーグ特有のプレッシャーに対抗しうる術は有しているはずだ。

一方、初のトップリーグ昇格となったボーンマスを率いるエディ・ハウは3 7歳。昨シーズンは監督協会が選ぶ最優秀監督を受賞し、彼が試行するポゼッション・フットボールは各方面で絶賛されているが、経験不足は気になるところだ。行き当たりばったりのチャンピオンシップ(実質イングランド2部)とプレミアリーグでは、プレッシャーの質が異なる。 さて、最もプレッシャーに苛まれる監督は、リバプールのブレンダン・ロジャーズである。オーナー企業の『フェンウェイ・スポーツグループ』(以下F S G)による人選でコーチ陣を固められ、居心地が窮屈になった。6位に終わった昨シーズンの反省を踏まえ、F S Gは現場に介入する。ロジャーズの自由は奪われた。しかもバルセロナに去ったルイス・スアレスと同タイプのF W、すなわちスペースメイクとビルドアップに貢献できる選手を、依然として補強できていない。またしても中央部の渋滞が予見できる。

さらに開幕からのアウェー7戦が、ストーク・シティ、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、エバートン、トッテナム・ホットスパー、チェルシー、マンチェスター・シティと、非常に厳しい日程だ。ここで失敗すると、ロジャーズの立場は危うくなる。いま、在野ではカルロ・アンチェロッティ(前レアル・マドリード監督)、ビンチェンツォ・モンテッラ(前フィオレンティーナ監督)など、すぐれた人材が充電中だ。そしてFSGがユルゲン・クロップ(前ボルシア・ドルトムント監督)招聘を目論んでいることは、周知の事実である。

ロジャーズの命運は早々に尽きる可能性も photo/Getty Images

シティのマヌエル・ペジェグリーニ監督も、ロジャーズと同等のプレッシャーに苦しめられるだろう。最終契約年でプレミアリーグ奪回、もしくはチャンピオンズリーグ上位進出がノルマだ。しかもノルマ達成でもポジションは保証されず、上層部がジョゼップ・グアルディオラ(バイエルン・ミュンヘン監督)、もしくはアンチェロッティ(前出)の招聘に動くことは確実だ。また、この夏はすでに獲得したラヒーム・スターリングだけではなく、ケビン・デブライネやポール・ポグバといった有望株の補強、ホームグロウン率を高める人選、新たなモチベーションを求めるベテランの整理を同時進行しなければならず、なかなか難しい状況に追い込まれている。いわば過渡期。過渡期に任期最終年の監督。巡り合わせが悪すぎる。

したがって、優勝争いはリバプール、シティに比べると、監督のプレッシャーが緩いチェルシー、アーセナル、ユナイテッドの3チームが軸だろう。

やはり頭ひとつ抜けるのはモウリーニョのチェルシー

やはり頭ひとつ抜けるのはモウリーニョのチェルシー

やはり笑うのはこの男か。ジョゼ・モウリーニョ photo/Getty Images

ペトル・チェフ獲得で、アーセナルの前評判が高くなってきた。しかしアーセン・ヴェンゲル監督は、プレミアリーグで勝つ術を忘れている。このタイトルから遠ざかること11年。FAカップとプレミアリーグでは、ライバルたちのモチベーションに大差がある。ローテーションを活用できないヴェンゲル監督の采配も、長いシーズンでは疑問符が付く。

そして、ユナイテッドはルイス・ファンハール監督の傲慢な性格が主力と衝突する危機を常にはらんでおり、懸案とされてきたセンターバックの補強も遅々として進んでいない。

やはりチェルシーがポールポジションに位置している。チェフが去ったと言っても昨シーズンと同等の戦力は維持しており、市場の信頼が厚いマリナ・グラノフスカヤCEOのもと、開幕に向けて補強も図られるに違いない。敏腕エージェント、ジョルジュ・メンデスとの関係が極めて密接であることも大きなアドバンテージだ。

そしてなにより、ジョゼ・モウリーニョ監督がプレッシャーを楽しみ、ローテーションの活用に長け、主力との関係も良好だ。ライバルチームの指揮官をはるかにしのぐこの三要素が、チェルシー本命説の根幹である。

theWORLD164号 7月23日配信の記事より転載

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