[監督から始まる新シーズン 1]名将たちをタイプ別診断! 現代の監督に求められるものは?

現代サッカーを牽引する、対照的な2人の名将

現代サッカーを牽引する、対照的な2人の名将

やはりこの2人は最大のライバル同士なのか photo/Getty Images

欧州サッカーを牽引するビッグクラブには、豪華なスーパースターが数多く存在する。とはいえ、極論を言ってしまえば、どんなタレントであっても選手は1つの駒に過ぎない。もちろん、プレイするのは選手だが、監督が志向するスタイルやキャラクターというフィルターを通して、最終的に“チーム”が形作られるといっても過言ではない。

そこで、2015-16シーズン開幕を前に、チームの“顔”とも言うべき監督たちの特長をタイプ別に分析した。新シーズンへ向けたサッカー談義のネタの1つとして、お読みいただければ幸いである。

なお、タイプ別診断の対象としたのは、UEFAランキング上位4ヶ国(スペイン、ドイツ、イングランド、イタリア)のリーグを戦ういずれもトップクラスの監督たち。また、診断するための要素として、「攻撃型か守備型か」、また「戦術家かモチベーターか」という2つの軸を用いた。無論、サッカーは対戦相手との力関係を無視できないスポーツであり、常時、攻撃的に振る舞うことはありえない。さらに現代サッカーでは、単に戦術
を操ることに長けた監督が「名将」と呼ばれることもない。そうした点は承知のうえで、特長をあぶり出すためにあえて分類を試みた。

現在の欧州サッカーを代表する監督と言えば、バイエルンのジョゼップ・グアルディオラとチェルシーのジョゼ・モウリーニョの2人が挙げられるだろう。そして、彼らは互いにバルセロナとレアル・マドリードを率いた当時に何度も対戦したことで、スタイル、キャラクター共に対極に位置する指揮官と見られるようになった。一般的には、前者は「攻撃型かつ戦術家」、一方の後者は「守備型かつモチベーター」とカテゴライズされる。この対称性こそが、同じ時代に監督として生きる2人をより一層特別な存在へと押し上げたとも言える。

堅守速攻スタイルはリーガの新トレンドに?

堅守速攻スタイルはリーガの新トレンドに?

ベニテスはレアルをどう操る? photo/Getty Images

グアルディオラと同じく「攻撃型」の監督は他にもたくさんいる。ブンデスリーガでは、ドルトムントの新監督に就任したトーマス・トゥヘルやレバークーゼンのロジャー・シュミットらが、“ゲーゲンプレッシング”の使い手として、テンポの速いオフェンシブなチーム作りを得意とする。一方、プレミアリーグでは、マンチェスター・シティのマヌエル・ペジェグリーニやアーセナルのアーセン・ヴェンゲル、またマンチェスター・ユナイテッドのルイス・ファンハールが「攻撃型」の監督だと言えるだろう。

ただし、プレミアの監督のなかでも、「戦術家」と呼べるのは、ファンハールぐらいだろうか。その彼が、グアルディオラの選手時代の“師匠”の1人に当たるのは、単なる偶然とは言えないだろう。一方で、同じくファンハールの教え子に当たる現バルセロナ指揮官のルイス・エンリケは、それほど「戦術家」とは言えない。選手時代の“闘将”のイメージがぬぐえないのもあるが、彼が率いるチームがリオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの“MSN”を中心に形成されており、小難しい戦術よりも、彼らをいかに気持ちよくプレイさせるかという点に注力しているからかもしれない。

また、ここからもう1つ見えてくるのは、モウリーニョはやはり「守備型」の監督だということだ。彼自身は「守備型(的)」という言葉を酷く嫌うが、上記のように同リーグのその他クラブを率いる監督たちがいずれも攻撃的なスタイルを標榜するため、彼らと比べると自ずと「守備型」に分類されてしまう。昨シーズンの数字を振り返っても、リーグ2位の得点数(73得点。1位はマンCで83得点)よりも、最少だった失点数(32失点)の方がどうしても際立つというものだ。

一方、「守備型」にカテゴライズされる監督の多くが、攻撃的なイメージの根強いリーガ・エスパニョーラのトップクラブに多く在籍しているのは興味深い。今シーズンからレアル・マドリードの監督となったラファエル・ベニテスと、アトレティコ・マドリードで就任4年目を迎えるディエゴ・シメオネ、そしてバレンシアを復活に導いたヌーノ・エスピリト・サント、これら3人にいずれも共通するのは“堅守速攻”を基本スタイルとしている点だ。ベニテスとヌーノは「戦術家」、一方のシメオネは「モチベーター」に分類され、完全な同類ではないが、バルセロナを含めて“カウンター”が新シーズンのリーガの主流となりそうな気配が漂っている。

復権を目指すカルチョは個性豊かな名将が鎬を削る

復権を目指すカルチョは個性豊かな名将が鎬を削る

アッレグリは柔軟なバランス型 photo/Getty Images

攻撃型としても守備型としても振る舞え、戦術家かつモチベーターの資質も持ち合わせる“バランス重視”の監督であるのが、昨シーズン、カルチョ復権の象徴となったユヴェントスを率いるマッシミリアーノ・アッレグリだ。リードした状況での4バックから3バックへの守備固めは十八番であり、アントニオ・コンテ前体制下にリーグ3連覇を成し遂げたチームを急遽引き継いだ後も、変わらぬ刺激を選手たちに与え続けて、さらなる成功へと導いた。アッレグリ同様、インテルのロベルト・マンチーニもバランス重視の監督と捉えることができる。

一方で、非常に攻撃色の強いローマのリュディ・ガルシアや「元銀行員」の肩書を持ちながら「リーグ屈指の戦術家」との高い評価を受けるナポリのマウリツィオ・サッリ、また“鬼軍曹”で鳴らすミランのシニシャ・ミハイロビッチなど、セリエAには個性に富んだ監督たちが乱立している。それもまた同リーグが魅力を取り戻しつつある理由の1つであるかもしれない。

世の中には無数の監督がいて、それだけ特長も異なる。今回は4つの要素に絞ってカテゴライズを試みたが、ただ1つだけ共通するのは、全員が強烈なキャラクター(カリスマ)の持ち主だということだ。選手を束ねる存在として、それだけは絶対必要な資質ということなのだろう。そして、視点を変えればまた違った見方もできるはず。リーグの開幕が迫った今、監督を読み解くということは、フットボールの楽しみを一段と豊かなものにしてくれるはずだ。

theWORLD164号 7月23日配信の記事より転載

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