Jリーグは神戸に注目している。清水やFC東京は少し心配
カズさんにタックル! いまも右サイドでは誰にも負けたくない意識がある。Photo/Getty Images
Jリーグは2ndステージに突入しました。私が注目しているのはヴィッセル神戸です。1stステージは得点力不足でしたが、レアンドロを獲得したことで前線にタメができ、高橋峻希、相馬崇人の両サイドバックが攻撃参加する回数が増えました。また、レアンドロがボールをキープすることで、決定力のある森岡亮太、マルキーニョスがよりゴールに近い場所でプレイできるようにもなりました。
ネルシーニョが監督に就任したことで、今季の神戸への期待は高いものがありました。しかし、1stステージは相手の良さを消すサッカーをする一方で、自分たちの良さをなかなか発揮できずにいました。2ndステージでは新戦力も加わり、また違ったサッカーを見ることができるのではないでしょうか。
逆に、心配なのが清水エスパルスです。第1節の神戸戦では、やろうとしていることが伝わらず、とくに守備に関しては、どこでボールを奪うのかが明確ではなく、意思統一がされていないように感じました。0-5という試合結果に表われているように、神戸の良いところばかりが目立つ内容でした。
1stステージのころから清水は守備に不安がありました。相手の攻撃に対して、守備の準備が整う前に失点してしまうケースが多かったように思います。高い位置でボールを奪うのか、後方に守備のブロックを作り、相手の良さを消すのか。全員が同じ意識でプレイしないと、なかなか勝点3は得られません。
現状を打開するべく、大分の前監督である田坂和昭氏をヘッドコーチに迎えました(8月1日に監督就任)。これは、守備面の強化を考えたものだと思います。また、最終ラインにヨン・アピンも復帰しました。大榎克己監督(8月1日に辞任)、田坂ヘッドコーチのもと、清水がどう盛り返すか注目しています。
得点源だった武藤嘉紀が抜けたFC東京も少し不安材料があります。フィッカデンティ監督が志向する堅守速攻のサッカーは、武藤のようなタテへの推進力がある選手がいないとうまくハマらない傾向があります。ネイサン・バーンズ、サンダサと2人の外国籍選手を獲得しましたが、まだチームにどのような効果をもたらすか未知数です。
守備はオーガナイズできているので、あとは攻撃面だと思います。これまでの堅守速攻に加えて、どんなバリエーションを加えることができるのかが課題です。前田遼一やそろそろ復帰すると思われる平山相太の高さを生かすのか? 三田啓貴や中島翔哉がドリブルで打開するのか? スペインのサバデルから復帰した田邉草民をどう起用するのか? 様々な特徴を持った選手がいるなか、フィッカデンティ監督がどんな選択をするのか楽しみです。
サッカー選手は引退後のほうが人生が長い。現役時代から準備してもいい
7月5日に開催されたヤナギ(柳沢敦)、コージ(中田浩二)、イバちゃん(新井場徹)の引退試合に参加してきました。現役選手も参加するなか、恥ずかしいプレイはできないので当日に向けて気合いを入れて身体を作っていました。実は、その段階で左足の太ももを肉離れしてしまい、不本意な状態でピッチに立たなければいけませんでした。テーピングをぐるぐる巻いて、痛み止めを飲んでモチベーションだけでなんとかプレイしました。
いまは一緒にプレイしていないメンバーでも、いざピッチに立つとお互いの特徴を分かり合っているので、違和感なくパスをつなぐことができました。お互いがお互いのことを考えてプレイすれば、急造チームでもちゃんとパスをつなげるのです。細かい決め事、戦術も大事ですが、状況に応じて、自由な発想をすることが大事であると、観戦した若い選手たちが感じてくれたら幸いです。
また、私は右サイドバックなので、同ポジションでは誰にも自由にプレイさせたくない気持ちがあります。この日はカズさん(三浦知良)が私の主戦場である右サイドにドリブルで入り込んできました。絶対にやられたくないという気持ちが強く働き、スライディングタックルを仕掛けてボールを奪いました。このプレイで太ももに痛みが出て前半途中で交代しましたが、自分らしいパフォーマンスを見せることができたと思います。
ヤナギ、コージ、イバちゃんはすでに新たな道を歩んでいます。サッカー選手の人生は、引退したあとのほうが長いです。人によって考え方が違いますが、現役時代から引退後の準備をしておくのも一考ではないでしょうか。もちろん指導者や解説者になるのだけが道ではありません。現在、イバちゃんは2004年に稲本潤一や播戸竜二と立ち上げたFC TIMOA枚方のオーナーを務めています。
元選手がフロントに入り、クラブを経営する。今後、こうした流れが増えるのではないでしょうか。サッカークラブの経営は、やはりサッカーのことを良くわかっていて、チームや選手のことを常に考えられる人物が行なうことが望ましいです。現役時代に活躍した“レジェンド”の名前を使ってスポンサーを集めるのもクラブ経営のひとつの手段だと思います。
個人的な見解ですが、コージはプロサッカークラブの社長になれる器を持っていると思います。どのような道へ進むかはもちろん本人次第ですが、もし将来コージが鹿島アントラーズの社長に就任した際には、ぜひ私を呼んでほしいです(笑)。そのときには、選手育成に力を尽くすとともに、地域におけるサッカーの普及に努めたいと考えています。
構成:飯塚健司