[14-15シーズンまとめ 1]王者チェルシーと2位シティ、明暗を分けたのは「監督力」

的確にプランを修正する、モウリーニョの手腕

的確にプランを修正する、モウリーニョの手腕

ぶっちぎりのリーグ優勝は、モウリーニョの手腕の賜物だった。photo/Getty Images

一見すると難しい局面を、巧妙迅速な手法でテキパキと片付けていく。この、卓越した危機管理能力がジョゼ・モウリーニョ監督ならではの持ち味であり、チェルシーに5シーズンぶりのプレミアリーグ優勝をもたらした最大要因、といって差し支えないだろう。ライバルと目されたクラブの指揮官と比較しても、鋭い考察力と大胆な実行力は群を抜いていた。

ファイナンシャル・フェアプレイ(FFP)を重視した結果、2 0 1 4 -1 5シーズンのチェルシーは少数精鋭を余儀なくされた。したがって、主力のコンディションが整っている期間はヨーロッパ屈指の安定感を誇ったが、2〜3名のフィジカルが下降線を描くと、このマイナスを補うピースに欠けていた。2 0 1 5年1月、プレミアリーグでトッテナム・ホットスパーに3-5の大敗を喫し、FAカップでは3部のブラッドフォード・シティに2-4の敗戦。当時、数多くの選手が疲労のピークを迎え、とくにネマニャ・マティッチはシーズン序盤からピッチ上の幅広いエリアをカバーしてきたため、足色が鈍っていた。

しかし、モウリーニョ監督は慌てず騒がず、14-15シーズンの基本プランのはずだった攻撃重視から守備第一にプラン変更。エンターテインメント性が落ちたとはいえ、スパーズ戦(先述)の翌週に行われたニューカッスル・ユナイテッド戦から優勝決定のクリスタルパレス戦まで、平均失点は0・6。プレミアリーグで最も安定した守備組織を構築し、少ない人数でやり繰りしてみせた。ジエゴ・コスタの古傷(左大腿部)が再発し、フィリペ・ルイスがフィットできず、冬の市場でフィオレンティーナから獲得したファン・ギジェルモ・クアドラードが驚くほど期待外れに終わったにもかかわらず、である。

マネジメント力のなさがシティを崩壊させた

マネジメント力のなさがシティを崩壊させた

クリスタル・パレス戦で敗れたシティ。4月上旬は絶不調に。photo/Getty Images

ここがライバルチーム、とくにマンチェスター・シティとの大きな違いだ。ディフェンディング・チャンピオンは、選手層だけならチェルシーをはるかに上まわっていた。基本的には各ポジションにふたりずつ、実力者を配置できる陣容だった。エリアキム・マンガラ、バカリ・サニャ、ウィルフレド・ボニー、フェルナンドといった新戦力がことごとく不振だったとはいえ、巨大戦力であることに疑いの余地はなかった。

ところがマヌエル・ペジェグリーニ監督からは、相変わらず明確なプランが伝わってこない。すべて選手任せ。彼らがノっているときは滅法強いが、目的意識が薄れると途端にテンションが下がる。「いつでも勝てるさ」という油断が命取りになり、ストーク・シティ、レスター・シティ、バーンリー、クリスタルパレス、ハル・シティ、クィーンズパーク・レンジャーズなどを相手に勝点を取りこぼした。

また、13-14シーズン終盤に退団をにおわせ、「敬意の欠片もない連中だ」とクラブを批判したヤヤ・トゥレに一切ペナルティーを科さず、FFPの犠牲となり、チャンピオンズリーグのスカッドから外されたステファン・ヨベティッチが現状に不満を漏らすと、ベンチにすら入れない。この〈差別〉にも似た人選が不信感を招き、シティは優勝争いを演じることもなく2位に落ち着いた。

総合力から判断し、チェルシー唯一のライバルと考えられていたシティが、ペジェグリーニ監督のマネジメント不足で失速したのだから、タイトルレースがあっさり決着したのは至極当然だ。

14-15シーズンは1敗1分。通算成績も6敗6分と、〈重度のモウリーニョ・アレルギー〉に陥ったアーセン・ヴェンゲル監督が率いている限り、アーセナルはチェルシーに勝てないかもしれない。ルイ・ファン・ハールを新監督に迎えたマンチェスター・ユナイテッドは、デイビッド・モイーズ前監督が壊したチームを再整備するまで時間を要し、型らしきものが見えたときはシーズンも終盤に入っていた。この両チームはまだ、チェルシーと伍するレベルには達していなかった。

守りに重きを置いた戦略・戦術を「退屈」と批判する者もいるが、チェルシーに独走を許した数チームが断罪されるべきであり、モウリーニョ監督と彼のチームは優勝するためにベストを尽くしたことは紛れもない事実である。14-15シーズンのブルーズは、群を抜いて安定していた。

theWORLD163号 6月23日配信の記事より転載

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