名良橋晃の定点観測♯10「時代は変化している。日本代表の強化も変化が必要だと思う」

相手DFを揺さぶるような変化のある攻撃がなかった

相手DFを揺さぶるような変化のある攻撃がなかった

右SBを務めた酒井は攻撃参加が単調だった。Photo/Getty Images

ハリルホジッチ監督が就任してから、日本代表は強化試合でよいスタイルの戦いを見せていました。6月11日のイラク戦でも相手を圧倒し、4-0で勝っていました。それだけにシンガポール戦も快勝が期待されていましたが、結果は0-0でした。

日本代表は終始ボールをキープし、チャンスを作っていました。しかし、最後までゴールを奪えませんでした。シンガポールは終盤こそゴール前を固めていましたが、それまでは守備陣がうまくラインコントロールをしていました。彼らはただ守っていたわけではありません。日本代表が狙う縦への早いボールを警戒してスペースを消すとともに、パスの出し手にもプレッシャーをかけていました。サイド攻撃への対応もできていて、左サイドからドリブル突破を仕掛ける宇佐美も特徴を消されていました。

こうした相手に対して、日本代表の攻撃陣は守備のブロックの前でボールを持つことが多く、横並びになっていました。各選手が連係した流動的な動きがなく、揺さぶることができていなかったと思います。あまりチャレンジしておらず、相手が守りやすい正直なプレイが多過ぎたのです。

本田、香川、宇佐美、岡崎だけの連係で崩すのではなく、柴崎、長谷部の両ボランチが前線へ飛び出す、太田、酒井の両サイドバックが前方の選手を追い越すなど、もっと変化のある攻撃が必要でした。試合の状況に応じて、各選手が“いける”と思ったときは自由に判断し、臨機応変にプレイしてもよかったと思います。そうじゃないと、攻撃にバリエーションが生まれません。
サイドバックに関して言うと、酒井、太田ともに1対1の仕掛けが単調でした。リズムに変化がなく、対応する相手DFが苦しんでいませんでした。縦へ突破するだけでなく、中央へ切れ込む、味方とショートパスをつないで崩すなど工夫が必要で、今後の改善点としてあげられます。もっとシュートにつながるプレイ、ゴールへ直結するプレイをしてほしいと思います。クロスボールも同じで、アーリークロスを入れたり、ゴールライン近くまで突破して折り返したりなどの変化をつけるべきでした。グラウンダーのボール、ライナー性のボールを使い分けたり、ゴール前の状況によってニアサイド、ファーサイドのどちらを狙うのか臨機応変に対応するなど、相手DFを揺さぶる工夫がありませんでした。

セットプレイも同じで、とくに終盤にあったCKは単純にゴール前へ入れるだけになっていました。ショートコーナーを使ったり、低い弾道のボールでニアサイドを狙うなどの変化がなかったです。いずれにせよ、この日の日本代表はチーム全体に思い切りのよさがなく、大胆な仕掛けが見られませんでした。

サイド攻撃を重視するなら、最初から2トップでもよかった

ハリルホジッチ監督はサイドからの崩しを重視していました。だとすれば、高さのある選手を前線にもう1枚入れて最初から2トップでもよかったのかもしれません。1トップよりも、2トップのほうがクロスは入れやすいです。後半途中から大迫を投入し、2トップにしていましたが、それなら序盤から2トップというのもアリだったのではないかなと考えます。そういった意味では、川又の負傷離脱は残念でした。あるいは、豊田を呼んでおいてもよかったのかもしれません。

試合後、いろいろな話題が出ていますが、W杯アジア2次予選はまだ初戦が終わっただけです。メディアはジェットコースターのように絶賛するときもあれば批判するときもありますが、こうした一試合ごとに評価の変わる状況が改善されることを望みます。ハリルホジッチ監督が就任してからの3戦は圧勝でしたが、間違いなく課題もありました。これからはマイナス面もしっかりピックアップすることが必要です。

シンガポールと0-0で引き分けました。これがいまの日本代表の実力です。ハリルホジッチ監督が過去に指揮したコートジボワールやアルジェリアは各選手の身体能力が高く、『個』の力で状況を打開できるチームでした。しかし、日本代表はそうではありません。アジアのサッカーと間近に接したことで、今後どうやって攻撃にバリエーションをもたらしていくのか? これからのチーム作りが楽しみです。

そういった意味でも、今後は強化試合のマッチメークが大事になってきます。正直、イラクは迫力不足でした。ヨーロッパではユーロ2016の予選があり、南米ではコパ・アメリカがあって難しかったのは重々承知しています。しかし、そのユーロ2016の予選やコパ・アメリカをチェックしていると、こういうチームと試合ができたら……とどうしても考えてしまいます。とくに、コパ・アメリカは招待されていただけに残念です。もし参戦できていたら、貴重な経験を積めていました。

時代は変化しています。日本代表の強化方法も、変化していくべきです。ヨーロッパでプレイする選手がこれだけ増えたのだから、公式戦ではなくても、現地でなんらかの強化試合をマッチメークしてもいいと思います。国内ではJリーグでプレイする選手を集めて、強化試合を開催すればいいのではないでしょうか。多くの選手に代表入りの可能性が広がることで、選手層のアップにつながるし、サポーターの興味も増えると思います。

構成:飯塚健司

※theWORLD163号、6月23日配信の記事より転載。

記事一覧(新着順)

注目キーワード

CATEGORY:コラム

注目タグ一覧

最新号を無料配信中!
電子マガジン「ザ・ワールド」
No.236 次世代を担え! 超注目ヤングスター29人
theWORLD(ザ・ワールド)は世界中のサッカーを網羅する、日本初のスマートデバイス対応フリーミアム 電子マガジン!

雑誌の詳細を見る

人気記事ランキング

INFORMATION

記事アーカイブ