【結果を出す監督 3】最も戦術的なカルチョの世界で結果を出すアッレグリとベニテス

4連覇目前のユベントスを指揮するアッレグリ。photo/Getty Images

現有戦力を最大限活かす、抜群の柔軟性

世界最強リーグの肩書きはとうの昔に失った。だが、世界で最も戦術的なリーグというイメージは今もまだ残っている。結果を強く要求するイタリアサッカーで、結果を出している指導者に触れてみる。

まず、首位ユヴェントスを率いるマッシミリアーノ・アッレグリだ。クラブはセリエA3連覇中だが、アッレグリは今シーズンがユヴェントスでのファーストシーズン。それだけに懐疑的な見方も少なからずあったが、もう4連覇を阻むものはなさそうだ。

戦力を考えれば当然、という声は当然ある。だが、3連覇中のチームの監督に就任して期待どおりに結果を残すことは、決して容易ではないはずだ。アッレグリの武器を掘り下げてみよう。

特筆すべきは、その柔軟性だ。ミラン時代の終盤に評価を落としたきらいはあるが、実際には過去にいたすべてのクラブで結果を残している。それが小さなクラブでも大きなクラブでも変わらないというのは、とてつもないことなのではないだろうか。

ミラン時代の2010ー11シーズンにスクデットを獲った。当時は、イブラヒモビッチとチアゴ・シウバ(いずれも現PSG)が在籍していた。だからこそのスクデットだろう。それでも、ケヴィン=プリンス・ボアテングがキャリアで最も輝いていたのは、この時期だ。イブラヒモビッチのキープ力があったからこそボアテングの2列目からの飛び出しが存分に活かされた。

ユヴェントスには、サイドに開いてボールを溜めるイブラヒモビッチはいない。だが、テベスやポグバといった異なる武器がある。ミラン時代は重要視しなかったピルロも、ユヴェントスのアッレグリ体制ではキープレーヤーだ。テベスの効果的な上下の動きで生まれたギャップを利用した攻撃は、今季ここまで何度も見せてきた。それぞれのチームにあるものを結果につなげる柔軟な発想がアッレグリにはあったのだろう。ミラン時代のアッレグリは、ピルロが嫌いだったわけではない。ピルロの展開力より、イブラヒモビッチに渡すボールを手にするための守備を中盤に求めた。今振り返ると、それだけのことだったのだろう。

2007-08シーズン、アッレグリはサッスオーロを率いて3部の年間最優秀監督賞を受賞した。翌08-09シーズンは、カリアリを率いてセリエAの年間最優秀監督賞を受賞している。そして、ミランでスクデットを獲得し、ユヴェントスでもそれを繰り返しそうだ。戦力以上の結果を出すためのカリスマ性は元スター選手の指揮官には及ばないかもしれない。だが、期待を大きく下回ることはない。圧倒的な戦力差があるセリエAで優勝することが目標なら、アッレグリはそのミッションを遂げることができるはずだ。

CL優勝経験アリの、頑固で負けず嫌いな戦術家

ナポリのラファエル・ベニテスは、柔軟性とはほど遠い。どちらかと言えば、自分の色でチームを染めたいレトロなタイプ。基本フォーメーションは4-2-3-1でほぼ固定されている。これをネガティブに捉える人がいることも確かだが、貫き通したそのスタイルでリヴァプールを欧州の頂点に導いたキャリアがある。彼のこだわりを時代遅れと切り捨てることなどできない。

システム面で大きな変更はしないのがベニテス流。だが、いつも同じサッカーをしているわけではない。相手の嫌がるサッカーをするための研究に明け暮れるセリエAで、それは不可能だ。彼の仕事は、同じ4-2-3-1でありながら、細かい修正を加えてチームを勝たせることである。固執してきた自信のあるシステムだからこそ、それぞれの局面に応じた対策をすぐに自分の引き出しから取り出すことができる。ベニテスはそう信じているのだ。

攻撃時に両翼を最大限に生かしたいという考えは、どの状況においても共通している。思えば、今シーズンのナポリが調子を上げ始めたのは、インシーニェが調子を上げたあたりだった。左で仕掛けるインシーニェに注意を引きつけ、右から中に入ってくるカジェホンがボックス内で仕事をするというパターンが確立された時期である。そのインシーニェが負傷した後は、主にメルテンスらが左サイドを担当していた。

スペイン人の監督らしく、練習の大半はボールを使ったメニューとのこと。典型的なイタリア人指揮官と比べると、技術力を求める部分が多いのかもしれない。ただ、そこから繰り出されるのはバルセロナのようなポゼッションではなく、クオリティの高いショートカウンター。素早く正確にボールをゴールに導くためのテクニックが求められている。

チャンピオンズリーグ優勝経験のあるベニテスは、間違いなく世界的な名将のはず。だが、イタリアにおいては、その評判が違うように感じる。彼が初めてイタリアのチームを率いたのは2010年。モウリーニョ監督の下で3冠を達成した直後のインテルだ。このとき、当時の会長マッシモ・モラッティや一部選手と良い関係を築けなかったことは周知の事実で、年末にはクラブを離れることになった。そのときについたネガティブなイメージは、今も多くの人にある。

自分のやり方を貫くベニテスのような戦術家にとって、周囲、特に選手が自分を信頼しているかは、戦術を浸透させる上で非常に重要なはず。簡単に選手がついてくるであろう環境ではなく、イタリアでのリベンジを選んだあたり、彼の頑固で負けず嫌いな性格がにじみ出ているような気がする。

インテルにはマンチーニのようなカリスマが戻り、かつてのゴールハンターは難問にぶち当たっている。一方で地方では、元銀行員という異色のキャリアを持つエンポリの監督サッリのような変わり種も出てきた。ビッグネームを呼べない今だからこそ、見えてくるカルチョがあるかもしれない。

文/伊藤 敬佑

theWORLD160号より転載

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