【コラム】Jリーグの真の楽しみはどこにあるか

今週末からJリーグが開幕する。新規のお客さんを獲得するためにも、まわりは選手たちが力を発揮できる環境こそを作らないといけない。 photo: Getty Images

「主審のジャッジにストレスを感じた」

第一印象というのは大事で、最初に見たときに「面白くない」と感じると、いつまでもその記憶が残る。もし、2月28日に日産スタジアムで行われたG大阪-浦和(ゼロック杯)がはじめて観戦したサッカーだったとしたら、残念でならない。おそらく、良い印象は残らなかったと思う。

両チームともにACL(アジアチャンピオンズリーグ)に出場していて、ゼロックス杯と同じ週にお互いに1試合を戦っていた。そこからG大阪が中3日、浦和は中2日でこの一戦を迎えていた。浦和に関しては、ACLがアウェイゲームだったため、中2日のうちの1日は移動をともなっていた。当然、選手には疲労があり、G大阪が4名、浦和は5名をACLの先発から入れ替えていた。

こうした事情を差し引いても、とくに前半はスローペースで見どころが少なく、盛り上がりに欠けた。G大阪が前半に放ったシュートは1本。浦和は4本を放ったが、ゴールにつながる可能性が低いロングレンジからのシュートが多かった。それでも、後半になって少しテンポアップし、前半ほどの退屈は感じなくなった。ところが、今度は別の要因がストレスとなった。主審&副審のジャッジである。

今回のゼロックス杯に限らず、ここ数年のJリーグは主審や副審のミスジャッジが目につく。ファウルの判定は主観によるものなので仕方ない。主審がファウルだと判定したら、それはファウルだと受け止めるしかない。そうではなく、ゴールキックとコーナーキックを間違える。スローインを行うチームを間違えるなど、「おいおい」と突っ込みたくなる単純なミスが目立つのだ。

ゼロックス杯でも幾つかのあやふやな判定があった。84分、G大阪の選手がクリアしたボールを受けた浦和の選手がオフサイドだと判定された。89分、正しくボールにアプローチしたG大阪の遠藤のプレイがファウルと判定され、警告を受けた。このときの遠藤のプレイが警告に値するなら、後半立ち上がりの46分にあった浦和の森脇が見せた同じようなプレイも警告だったはずだ。しかし、ファウルこそ取ったものの、森脇に警告は出されなかった。

90分にはG大阪のゴール前で岩下がバックパスし、GKの東口がこれをキャッチするというプレイがあった。本来、浦和に間接FKが与えられて然るべきファウルだったが、主審の笛は鳴らず、試合はそのまま進められた。こうした積み重ねによって取材者がストレスを感じたのだから、選手たちはもっと憤っていたはず。試合中、試合後に複数の選手が主審に詰め寄るシーンが見られたが、それも十分に納得できた。意義を訴えるのも当然といえるミスが多いレフェリングだった。

だからこそ、この試合がはじめてのサッカー観戦だった方は魅力を感じなかっただろうなと思う。盛り上がりに欠けた試合だったし、ミスジャッジが多発した。Jリーグは今年から新規ファンを獲得するためにいろいろな取り組みをしているが、正直、これは前途多難だなと思わざるを得なかった。

「サポーターは贔屓チームが勝つところを見に来ている」

Jリーグには2012年に作られた「+Qualityプロジェクト」というものがある。魅力的でエキサイティングなサッカーを提供するという名目のもと、2015年は「簡単に倒れない。倒れても笛が鳴るまでプレーを止めない」「リスタートを早くしよう」「選手交代を早くしよう」「異議・遅延はゼロを目指そう」という4点を重点項目として掲げている。

サポーターへのアンケートをもとに担当者たちが会議を重ね、魅力を高めるためにはどうしたらいいかを話し合い、熟考して導き出した項目だというのは理解できる。ただ、これに縛られていては本末転倒になる。たとえばリスタートについて。早くはじめるのが魅力アップにつながるのか? 場合によっては時間をかけて態勢を整え、確実に行なったほうがいいときがある。セットプレーは大事な得点チャンスだ。せっかくつかんだFKを早くはじめてあっさりとボールを失うシーンを見ると、もったいないと感じる。

選手交代もそう。劣勢を強いられ、厳しい時間帯が続くチームにとっては、プレイが途切れた瞬間に行なわれる自チームの選手交代は気分をリフレッシュする貴重な時間となる。適度に時間を使うのも“戦術”で、外野から「早くしよう」と言うものではない。さらに、異議・遅延はゼロを目指そうについても、選手に要求する前に主審や副審によるミスジャッジを減らさないと意味がない。異議を減らすためには、大前提としてミスジャッジを減らさなければならないのは明白だ。また、ときおり前半の早い時間帯に遅延行為による警告を出すケースがある。しかし、状況を考えれば選手にその意図はなく、与える必要がない警告だったりする。ほどけたスパイクの紐を結ぶ時間ぐらいは、観戦者も待つことができる。

サポーターは贔屓チームがゴールを奪い、勝利することを楽しみにスタジアムに通っている。スポーツとしての見栄えを良くするための「+Qualityプロジェクト」は、努力目標程度にとどめて、内々の取り組みとしてやってくれればいい。わざわざ大々的にアピールするものではないだろう。なぜなら、こうした項目を打ち出すと、生真面目な日本人はどうしても遵守しなければならないという気持ちが強くなり、サッカーが持つ本来の魅力を損なうことになる。

選手たちが目指すべきは、なによりも試合に勝つこと。勝つために、ゴールを奪うことだ。試合中に発生するすべての出来事は、その過程で生まれるものであり、ときには時間をかけたリスタートが必要で、選手交代が貴重な息抜きになることがある。勝つために真剣にプレイしているのにミスジャッジがあれば、それは異議を唱えたくもなるというものだ。

Jリーグの魅力を高めるためには、見栄えを良くするためのお題目を掲げるよりも、もっと他にやらなければならないことがある。選手には単純に「勝つこと」に集中させてあげてほしい。本来はサポートすべき人々が手足を縛るようなことをしてはいけない。2015年からテレビでのJリーグ中継が増えるが、いまのままでは新規ファンを取り込めるとは考えにくい。各クラブの練習環境を整え、すべての選手がサッカーに集中できるようにする。主審&副審のレベルを高めて、試合中に選手はもちろん、観戦者がストレスを感じないようにする。試合そのものが面白くなければ、何度もスタジアムに足を運ぶサポーターは獲得できない。2ステージ制への移行、一向に改善されない審判問題などで既存のサポーターはJリーグに対して不信感を抱いている。Jリーグに求められているのはこれまで以上に良質なサービス=試合を提供することだが、少なくともゼロックス杯は新規のお客さんを獲得できるものではなかった。

今週末に2015年のJリーグがいよいよ開幕する。余計な要素はいらない。両チームの選手が勝つために、ゴールを奪うために全力を尽くして戦う姿こそが必要だ。純粋にサッカーを楽しめれば、観戦者はリピーターとなり、サポーターとなっていく。選手には定められた競技規則のなかで、あまり多くのことを考えずに、とにかく勝利するために自由に力強くプレイしてほしい。

文・飯塚健司
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