千葉×讃岐で2つの大きな誤審 ペナ外のノーファウルをPKに、さらにオフサイドを見落としたのはなぜか

発生理由をJFA審判副委員長が説明

発生理由をJFA審判副委員長が説明

どうして誤審は起こってしまうのか photo/Getty Images

Jリーグは今季から公式戦(J1、J2、J3、ルヴァン杯)で発生した真偽がわかりにくかった判定について、実際のプレイを見ながら報道陣に説明するとともに意見交換を行なうレフェリーブリーフィングを定期的に行なっている。19日には小川佳実JFA(日本サッカー協会)審判委員長、上川徹JFA審判副委員長が出席し、都内のJFAハウスで第4回となるブリーフィングが開催された。

J1第13節川崎×浦和でのエドゥアルドの李忠成へのスライディングタックル、第16節磐田×FC東京でのピーター・ウタカの櫻内渚へのスライディングタックル。この2つのプレイには試合中にイエローカードが出されたが、実際はレッドカードが妥当だったと説明。同時に、判定を誤った担当主審の言葉として「足が当たっているように見えなかった」(前者)。「ボールにいっていたと判断した」(後者)という説明があったと伝えられた。

こうしたいくつかのプレイを映像で振り返るなか、出席者が思わず「エッ?」と声を上げた事例があった。それは、J2第22節千葉×讃岐(4-3で千葉が勝利)での判定だった。

讃岐が3-2でリードして迎えた79分、千葉のDF北爪健吾が右サイドからクロスを入れると、讃岐DF武田有祐の右腕にボールが当たった。場所はペナルティエリアから50㎝~1mは外で、ハンドであれば直接FK、そうでなければプレイオンで、ブリーフィング出席者の多くはハンドかどうかが真偽の対象だと考えていた。そのため、上川徹氏が「試合ではこれをPKと判定しました」と説明すると会場がざわついた。

J2の中位と下位の対戦だったためあまり話題にならなかったが、これほどの誤審がなぜ発生したのか? 審判委員会の見解では、そもそもハンドではないプレイだったともその後に解説された(後述)。さらに、同じ試合ではもうひとつ誤った判定があった。13分に千葉が先制点を奪った場面で、得点者のラリベイはオフサイドポジションにいたとして、このプレイについても誤審だったと説明がなされた。

同じ試合で2つの誤審があったことについて上川氏は、「讃岐に申し訳ない。2点ありました……。大きなミスだと思う」と語り、謝意を示した。こうしたミスを失くすためには、発生原因を突き止めて改善に努めなくてはならない。2つのミスはなぜ起きたのか、ブリーフィングで説明された担当審判の言葉などから探ってみたい。

跳ね上がった右腕に惑わされ、選手の動きにさらに正確な“目”を失った

ハンドではなかったし、PKでもなかったという2重の判定ミスは、右サイドからゴール前にクロスが上げられた瞬間に起きた。ボールは讃岐DFの右腕にたしかに当たっているが、下げられた腕は身体から近く、飛んできたボールに対してアクションしていない。その場にある腕に対して、ボールのほうが近距離からぶつかっている。

故意かそうではないかの判断は難しいが、上川氏は「讃岐DFの腕の位置は自然で、手を当てにいったのではなく、ボールが手に当たっている。意図はなかった」と説明し、ハンドと判定すべきではなかったとの見解を示した。ところが、試合中の主審はハンドでPKとし、クロスが上がった右サイドにいた副審も否定しなかった。

サイドからクロスが入るとき、主審、副審はゴール前も見ないとダメだという。オフサイド、ポジション取りにおける接触など、ファウルが起こりやすい状況なのは間違いない。クロスが上がった瞬間に主審、副審ともにゴール前に視線を移す。ほぼ同時にボールが讃岐DFに当たる。正確に状況を見極めて瞬時に判定するためには効果的なポジションを取っていなくてはならないが、このときの主審はセンターラインを15m~20m入ったやや左寄りにいた。慌てて視線を戻した主審に見えたのは、ボールが当たった勢いで後方に流れた讃岐DFの右腕と、動きの流れでペナルティエリア内に入ってきたその選手の姿だった。

「レフェリーが見たときに、右腕が跳ね上がっていました。これは判定ミスの事例でときおりあることなんです。さらには、当該選手が流れのなかでペナルティエリア内に入ってきていたことで、PKにしてしまいました。こうしたミスを失くすためには、より近いところで見てないといけないです」(上川氏)

オフサイドを見落とした先制点はFKからの流れで、一度讃岐がクリアしたボールを千葉の羽生直剛がマイボールにし、強烈なミドルシュートを放った。これを讃岐GK清水健太が弾いたところにちょうどラリベイがいて右足シュートで押し込んだものだった。このプレイは前述のハンドか否かよりもわかりやすく、明らかにオフサイドだった。羽生直剛のシュートが一度ゴール前にいる千葉の選手に当たっているようにも見えるが、たとえそうだとしてもその瞬間のラリベイはオフサイドポジションにいる。ではなぜ、見落として誤審になってしまったのか……。

単純な副審の判断ミスだった。ゴール前に放り込まれたボールを讃岐がクリアした瞬間、副審は意識がボールのほうにいってしまったという。「大きくクリアされた瞬間に、副審のなかから(オフサイドポジションにいる)得点者の存在がなくなってしまいました。ゴールの瞬間に突然現われたカタチになってしまったのです」と上川氏は説明した。

過程や要因があって結果は導き出される。誤った判定があったなら、その原因を突き止めるのは最初のステップに過ぎない。さらに求められるのは、ミスを誘発した原因を失くすべく現状を改善していくことだろう。ビデオ・アシスタント・レフェリーを導入する以前の問題として、より良いポジションで判定するために、常に頭をクリアに保ち、冷静に判定できるように──。選手が日々厳しい練習のもと向上に努めているように、審判にもレベルアップが求められる。

文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。

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