【特集/熾烈なる欧州カップ戦出場権争い 2】白熱のリーガ終盤戦 7チームが血眼になる2つの争いとは

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悲願のリーガ制覇なるか photo/Getty Images

優勝候補筆頭は“未消化分”を抱えるレアル?

リーガ・エスパニョーラもいよいよ佳境。優勝争いはレアル・マドリ―ドとバルセロナに絞られた。ただ、レアルとバルサは第32節終了時点で3ポイント差とはいえ、レアルは1試合消化が少ない。週末のクラシコでバルサが勝利して勝ち点で並んだとしても、なお3ポイントの差があると考えたほうがいい。わずかだがレアル優位だろう。

今季のレアルは選手起用によって攻守のウェイトを調整している。各ポジションに超一流を揃えているのはいつもどおりだが、より現実的な戦い方ができるようになった。バルサはMSNがハマれば破壊力抜群ながら、総合力ではレアルのほうが上とみる。

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2強に次ぐ存在として彼らも奮闘を見せる photo/Getty Images

維持とプライドをかけて奪い合う3位の座

3位アトレティコ・マドリ―ドは首位レアルに10ポイントの差があり、優勝争いからは脱落。アトレティコを3ポイント差で追うセビージャも同様だ。一方で、この2チームはUCL出場権をほぼ手中にしている。いわば上にも下にも行けない状態だが、どちらも負けられない意地があるはずだ。奇しくも、どちらの監督も次期アルゼンチン代表候補でもある。堅守速攻のディエゴ・シメオネ監督と、攻撃型のホルヘ・サンパオリ監督はいっけん対照的だが、アルゼンチン人の指導者としての共通項がある。どちらもアグレッシブな守備が特徴だ。シメオネのアトレティコのほうが重点守備エリアが低く、セビージャはより前がかりだが、襲いかかるようなボールハンティングはともにアルゼンチンのエッセンスが入っている。

攻撃面でアトレティコが得意なのはカウンターアタックだ。基本的に片方のサイドしか攻めないこと。カウンター以外の中央突破は少なく、サイドチェンジもほとんど使わない。フィールドを広く使って攻撃するスペインのチームとしては異質である。ワンサイドアタックの理由は守備だ。片側に選手を集結させていれば、そこでボールを失っても相手を封じ込めることができる。守りやすいのだ。アルゼンチンは多くの優れたアタッカーを生み出しているが、戦術的にはまず守備ありきの考え方をする。

ワンサイド攻撃は、相手を狭い地域に呼び込んでしまうので手詰まりになりやすい。アトレティコがレアルやバルサほど点がとれないのは、わざわざ難しい攻め方をしているからだが、工夫もしている。狭いサイドを突破するために、ワンタッチパスやフリックを駆使しながら入れ替わり立ち代わりサイドのスペースへ侵入、あるいはスペースを開けながら攻め込む。このサイドのローテーションはアルゼンチン人のマルセロ・ビエルサ監督が得意としていた手法である。

ビエルサの信奉者であるサンパオリ監督のセビージャも同じような攻め方をする。ただ、アトレティコほどワンサイドには固執せず、中央突破やサイドチェンジも狙う。アルゼンチン方式ではあるけれどもスペイン的でもあるわけだ。アトレティコとはっきり違うのは、ボールポゼッションの高さだ。セビージャはポゼッションが上がらないとペースをつかめない。というのも、アトレティコよりも前線からのハイプレスが主体になっているからだ。ハイプレスの強度を維持するには、ボールを保持して相手を押し込んでいる必要がある。またそれ以上に、ハイプレスは消耗も激しいのであまりにも守備の時間が長くなると機能しなくなる。自分たちの攻守の循環を作るためにもポゼッションは重要な要素なのだ。外側の選手がタッチラインいっぱいまで開き、その外枠の内側に技術的に優れた選手を配置、外と内でパスを出し入れしながら進んでいくのがスペイン式である。いわば巨大なロンドなのだが、セビージャの場合は輪の内側の選手がサミル・ナスリとスティーブン・エンゾンジの2人しかいない。逆にいえば、ナスリかエンゾンジを必ず経由するわけで、パスワークに優れた2人への依存度が高い。外枠隊には運動量、スピード、狭い地域でのテクニックに長けたビトーロやサラビアなどがいる。この点はアトレティコと同じなのだが、ナスリとエンゾンジの存在が大きな違いだ。

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ビジャレアルを含む第二勢力の争いにも期待だ photo/Getty Images

最もアツいのはUELチケットを巡る争いか

UEL出場権争いは混とんとしている。ビジャレアル、アスレティック・ビルバオ、レアル・ソシエダ、エイバル、エスパニョールぐらいまで2つの椅子を狙ってひしめいている状態であり、白熱した競争となることは間違いない。

クラブの規模からいってエイバルがUEL出場権を得るなら快挙であり、乾貴士はクラブに名を残すことになるだろう。すでにリーガで最も成功した日本人選手でもある。かつてエスパニョールでプレイした中村俊輔によると「(自分は)ロンドでは下手な部類だった」という。日本史上最高のテクニシャンでもこうだから、技術がウリの日本人選手がリーガで活躍するのは容易ではない。乾はサイドで勝負できるドリブル、スピード、運動量を備え、チームの求める選手像と合致していたのが大きかったと思う。

順位予想は難しいが優勝はレアル、2位バルサ、3位セビージャ、4位アトレティコ。UEL出場権内の5、6位は堅守速攻が定着したビジャレアルと期待を込めてエイバルを推したい。

文/西部 謙司

1995年から98年までパリに在住し、サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスとして活動。主にヨーロッパサッカーを中心に取材する。「フットボリスタ」などにコラムを寄稿し、「ゴールへのルート」(Gakken)、「戦術リストランテⅣ」(ソル・メディア)など著書多数。Twitterアカウント:@kenji_nishibe

theWORLD185号 2017年4月23日配信の記事より転載

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