【特集/欧州4大リーグ気鋭のアタッカー24人 3】スペイン2強を脅かせ! リーガを彩る実力派のアタッカーたち

セビージャの躍進を支える3人の献身

セビージャの躍進を支える3人の献身

昨夏よりリーガ参戦を果たしたナスリ photo/Getty Images

今季最も注目のチームであるセビージャを牽引するアタッカーといえば、サミル・ナスリである。チームに与える影響力という点では、リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウド以上かもしれない。スペインのサッカーの基本は「ロンド」だ。輪になってパスを回すトレーニングは世界的に行われているが、それをフィールド全体に拡大している。[4-3-3]の場合、ロンドの輪の中の人数は通常3人だ。ピボーテとインテリオール2人。輪の外から中、中から外とボールを動かして相手陣内へ入っていく。技術的な難度は輪の中にいる選手のほうが高い。

セビージャの場合、輪の中をやるのは主にスティーブン・エンゾンジとナスリの2人になっている。それだけ2人にかかる負担も大きい。ほとんどの攻撃はこの2人を経由する。とくにナスリは攻撃を左右する存在だ。ナスリは味方がボールを預けやすいように常に外枠組に近づく。ビルドアップの段階ではCBのすぐ近くまで下りてくる。そこからサイドへ展開すると、再びサイドの外枠に近づいてボールを受け、さらに少し中へ入ってから決定的なパスやシュートという本来の仕事をするのだ。この行動範囲の広さはメッシやロナウドにもみられず、セビージャはナスリのチームといっていい。インスピレーション部門を一手に引き受けている印象だ。キープ力が抜群で、得点力もあるが、本領はラストパスだろう。タイプとしては古典的な10番なのだが、フィールド全体に影響力を持ち、サイドで起点になってからトップ下へ移動する独特のスタイルを確立している。

ナスリやエンゾンジとは違った意味で重要な選手がビトーロだ。ビトーロは外枠を形成する選手の1人で、右サイドも左サイドもできる。FWからDFまで、どのポジションでもこなせる技術、判断力、身体能力がある。スピードもスタミナもあって体に無理が利く、ドリブルは取られそうで取られない。得点もアスシトもできて、守備の貢献度も高いというスーパーハードワーカー。ナスリがチームの頭脳なら、ビトーロは心臓であり肺だ。

ロナウド&メッシにも匹敵し得るアトレティコの2枚看板

ロナウド&メッシにも匹敵し得るアトレティコの2枚看板

急成長を見せるグリーズマン photo/Getty Images

アトレティコ・マドリードのエースに成長したアントワーヌ・グリーズマンは左利きのテクニシャン。得点とアシストの両面で極めて重要なアタッカーとなっている。運動量も多くハードワークもできる。ワンタッチコントロールが絶品で、トップスピードで走りながらでも繊細なタッチでイメージどおりの場所にボールを置く。足も速いのだが、ファーストタッチが素晴らしいのでプレイのロスが極めて少ないのだ。並の選手ならパスもシュートもできない状況でも、ボールコントロールに無駄がないグリーズマンは得点やアシストにつなげられる。

アトレティコのサイドプレーヤーとして活躍しているヤニック・フェライラ・カラスコも見逃せない。突破力抜群、単独でシュートやクロスボールへ持っていける。アトレティコのサッカーはほとんどサイドチェンジをしない。執拗に同サイドを攻め続けるのは、ボールを失ったときにプレスをかけやすいからだ。守備のリスクを考えながら攻撃するのがシメオネ監督のやり方である。ただ、たまに逆サイドにボールが出たときにカラスコの個人技が威力を発揮することがある。スペースがあれば強力なドリブルが使えるし、シュートまで持ち込む馬力もある。わざとカラスコを逆サイドで孤立させる、アイソレーションを上手く使えれば、現在のカウンターだけでなくさらに力を出せる場面が増えるのではないか。

中堅クラブを押し上げる陰の創造者たち

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彼もまたリーガで輝く1人だ photo/Getty Images

動き方が独特なセルタのイアゴ・アスパスは、ひとめで見分けがつく。ストライドが大きく、間接が外れそうな柔らかさがある。90年代にミランなどで活躍したデヤン・サビチェビッチに似ている。瞬間的な加速に優れ、左利きらしい意表をついたプレイが得意。29歳とベテランの領域だが、プレイぶりはダイナミックで若々しい。何をしでかすかわからない雰囲気が面白い。ビジャレアルで頭角を表したマヌ・トリゲロスは「第二のイニエスタ」と期待されているようだ。イニエスタよりシャビのタイプかもしれないが、パスの受け渡しに秀でたプレイメーカーだ。ある意味、スペインが常に輩出しそうな選手でもある。技術の高さとセンスの良さが光る。

エイバルで活躍中の乾貴士にも注目したい。リーガ・エスパニョーラで活躍した日本人選手がいない中、例外的にレギュラーポジションを確保している。ブンデスリーガでは日本人選手の活躍が目立つのに、なぜリーガで成功しないのか。理由はそれぞれなのだろうが、スペイン人のセオリーと日本人のそれが合っていないのかもしれない。こういうときは当然こう動く、そうしたベースが違っているのではないか。乾の場合はサイドアタッカーなので、そうした齟齬が少ない気がする。基本的には自分のプレイをすればいい。サイドプレイヤーとして不可欠のスピードがあり、緩急のつけ方が上手く、ドリブルは縦にも行けるし中へも入れる。小柄なのに強いボールを蹴ることができるのも魅力だ。機能性がはっきりしているアタッカーなので、周囲も使いやすいのだろう。

文/西部 謙司

1995年から98年までパリに在住し、サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスとして活動。主にヨーロッパサッカーを中心に取材する。「フットボリスタ」などにコラムを寄稿し、「ゴールへのルート」(Gakken)、「戦術リストランテⅣ」(ソル・メディア)など著書多数。Twitterアカウント:@kenji_nishibe

theWORLD184号 2017年3月23日配信の記事より転載

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