“経験値”の守備陣と”若さ”の攻撃陣 新時代の融合が見えたUAE戦

本田、香川ら攻撃陣は正念場

本田、香川ら攻撃陣は正念場

勝利を喜ぶ日本の選手たち photo/Getty Images

23日に2018ロシアワールドカップアジア最終予選でUAE代表と対戦した日本代表は、アウェイで上手くゲームをコントロールしながら2-0の勝利を収めた。この試合では今後の日本を支えると期待される若い久保裕也が1ゴール1アシストと結果を出したが、忘れてはならないのがベテラン組の働きだ。

特にこの試合で貴重な追加点まで決めた34歳の今野泰幸は印象的だった。久々の代表戦となったが、ベテランらしく経験を活かして何度もボールをカット。ボールを奪ってからも正確にパスを繋ぎ、急ぐべきところと攻撃を遅らせるところをしっかりコントロールしていた。何度も相手のアタッカーを抑えた抜群の読み、攻め上がりのタイミングなどは長年の経験からくるもので、同じく中盤で奮闘していた山口蛍とはタイプが異なるパフォーマンスだった。この試合で代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチは経験を頼みの綱にしていたようだが、今野の大活躍はサプライズであると同時に大きな収穫となったはずだ。

他にもGKは今野と同じく34歳の川島永嗣が入り、前半には相手の決定機を体を張ってブロックしている。微妙なボールタッチなど試合勘の鈍りが気になったが、ベテランらしく落ち着いていた。今後もゴールマウスを任せることになるかは分からないが、ベンチにこのような選手がいるのは心強い。さらに最終ラインではサウサンプトンで経験を積んでいる吉田麻也が奮闘。吉田はまだベテランと呼ぶ年齢ではないが、今季の成長はサウサンプトンで経験値を積んだことが大きく関係している。クラブで若いジャック・スティーブンスをリードしていることで、最終ラインを束ねる意識がより強くなったように見えた。
加えて中盤にはフランクフルトで重要な役割を担う34 歳の長谷部誠が入るため、守備陣は経験を積んだベテラン選手が多く揃っていることになる。ベテラン選手はピークを過ぎたと敬遠されがちだが、若手にはない経験がある。特にこうしたアウェイゲームではそれが重要になり、スピードを失っていたとしても彼らのような選手が後方には必要だ。守備は経験が大事とも言われるため、今後もハリルホジッチはこの経験に頼ることになるだろう。

一方、前線は世代交代を感じさせる試合となった。得点を決めたのは23歳の久保で、今回の活躍で本田圭佑と争っていた右サイドのポジションをがっちりと掴むことになったはずだ。逆の左サイドでは25歳の原口元気が上下動を繰り返し、チームの勝利に貢献。終盤でもスピードで勝負を仕掛けられるだけ の運動量があり、これは若手ならではの特徴とも言える。サイドの守備を考えても原口は絶対外せない選手だ。

さらに最前線ではロンドン世代の大迫勇也が抜群のパフォーマンスを披露。レスター・シティで奮闘する岡崎慎司も控えているが、大迫の方がパフォーマンスの質は高い。今後は不動の存在として最前線に君臨することになるはずで、ここの世代交代は非常にスムーズだ。

途中出場した本田もミドルシュートを積極的に放ったが、やはり久保や原口に比べると運動量やスピードに不安がある。中盤で先発した香川真司もそれほど目立ったとは言えず、本田と香川に頼らなくても戦える攻撃陣になったことを印象付けられた。中盤では清武も控えており、今回の一戦で若返りが一気に進んだように感じられる。

今後はハリルホジッチも前線では若手選手を積極的に起用していくことも考えられ、ここにザルツブルクで活躍する22歳のFW南野拓実のような選手が絡んでくれば面白い。久保は中央でもプレイできるため、香川に代わってトップ下に入ることもできる。香川もまだベテランと呼べるほどの年齢ではないが、今のパフォーマンスでは絶対 的な存在とは言えないだろう。

今回の試合はベテランが守備をまとめ、前線では新鮮な若手選手が思い切りのいいプレイを披露。若手とベテランが上手く融合した見事な戦いだった。2-0で勝利したことも大きいが、日本代表にとってベテランと若手をどう組み合わせるかの形が見えたことはさらに大きいと言えるのではないか。ベテランの経験が活きる守備、若手だからこそのスピードと運動量がある攻撃。この形を見つけられたことは何よりの大きな収穫になったはずだ。

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