【特集/サムライフットボーラーの現在地 5】本田、香川、清武は現状打破が必要 名良橋晃のサッカー定点観測・特別編

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今のミランに、本田の居場所はないように思える photo/Getty Images

いまのミランでは輝けない 本田はトップ下でこそ生きる

私もそうだったのですが、選手は年齢を重ねると経験値が高まる一方で、体力や走力が衰えることでどうしても若いころにできていたプレイができなくなってきます。そのときにどう対応するかが大事なのですが、私はそれまで貫いてきた自身のプレイスタイルを変えることができませんでした。というより、変えないといけないと思いながらも、変えたくないもうひとりの自分がいました。

ミランでプレイする本田圭佑はいま、厳しい状況に置かれています。今季から指揮を執るヴィンチェンツォ・モンテッラ監督は若手へのシフトチェンジを進めており、なかなか出場機会がありません。そもそもモンテッラ監督は、「個」の力で状況を打開する能力を前線の選手に求めています。スソ、エムバイェ・ニアングといったスピードがあり、ドリブルができる選手を指揮官は求めています。これまでに先発したのが第10節ジェノア戦だけという現実を考えると、チームを変えることも視野に入れた方が良いと思っています。

プロサッカー選手は試合に出続けることが大事です。ときおり交代出場でチャンスを得ていますが、まわりとの連係でリズムを作っていく本田のスタイルはいまのミランのなかで生きることがなく、結果も出せていません。いつの日からかミランでも日本代表でも右サイドでプレイしていますが、もともとこのポジションの選手ではありません。そのうえ、モンテッラ監督が指向するサッカー、4-3-3のシステムでは、本田の能力が真に発揮されるポジションがありません。

本田が一番輝くのはやはりトップ下で、ゴールに近いところでボールを持ってこそ技術力やアイデアが効果を発揮します。そう考えると、4-4-2や4-2-3-1を採用し、パスをつないで攻撃を組み立てるチームであれば、まだまだ活躍できます。そのようなスタイルを採用する本田の力を求めているチームは間違いなく存在します。

いまのミランは結果が出ていて悪い状態ではないので、モンテッラ監督が流れを変えることもないでしょう。若い選手とのポジション争いを制して出場するためには指揮官が求めるプレイスタイルを理解しなければなりませんが、経験を重ねてきたいま、これは現実的ではありません。日本代表でプレイし続けるためにはクラブでコンスタントに活躍していなければならないため、本田は今冬にチームを変える必要があると思います。

ドルトムントで苦しむ香川 清武にはライバルが多い

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監督の志向するサッカーと自身のプレイスタイルが噛み合わない香川 photo/Getty Images

ドルトムントでプレイする香川真司もまた、厳しい状況に置かれています。トーマス・トゥヘル監督はスピード感のあるサッカーを指向していて、とにかくタテに速くパスをつなぐことを優先しています。そのため、このサッカーが実現可能な選手たちがピッチに立つことが多くなっています。

ウスマン・デンベレ、クリスティアン・プリシッチなどは若く、タテへの勢いがあって香川とはタイプが違います。アンドレ・シュールレ、マルコ・ロイスもドリブルに魅力があり、マリオ・ゲッツェ、ゴンサロ・カストロも自分で突破できる「個」の強さを持っています。対して、香川はバイタルエリアで味方とパスをつないで崩すスタイルで、狭いスペースで正確にプレイすることを得意にしています。タテへ素早く仕掛けるサッカーとは、少し違いがあります。

とはいえ、同じリズムでずっと戦うことは不可能で、90分のなかではタメを作る場面も必要なため、香川の特徴が生かされる状況もあります。実際、ブンデスリーガでは出場機会が減っていますが、UCLでは出場機会を得ています。ただ、今季のドルトムントはタテに速いサッカーを指向しているので、だいぶ難しい状況になっています。

こうしたサッカーは「走力」がベースになっていて、そのなかで自分がどう生きるか考えなければいけません。チームのなかで以前のようにプレイできなければ、自分のスタイルを変えたり、ポジションを変えたりという決断も今後は必要になってくるでしょう。いろいろな戦い方に合わせられる選手が、最終的には監督に認められるのです。

清武弘嗣もリーガ・エスパニョーラで3位につけている好調セビージャのなかで激しいポジション争いにさらされています。サミル・ナスリが加入する前はほぼレギュラーとして試合に出ていましたが、徐々に難しい状況になってきています。スペインには清武と同じタイプの選手が多く、監督としては「同じ能力なら清武を起用する必要がない」という選択になってしまいます。この状況を打開するためには外国籍選手としてズバ抜けた能力を発揮しなければならず、非常にハードルが高いです。 また、ホルヘ・サンパオリ監督は前線の選手に積極的に仕掛けることを求めており、これもパスでリズムを作る清武の立場を難しくしています。パスを出して、すぐに動いてリターンを受けるプレイがしたいときに、パスが返ってこないでボールを持った選手が自分で打開しようとするときがあります。まわりの選手と考え方に違いがあり、コンスタントに試合に出ることができていません。

だからといって、今冬に移籍する必要はありません。リーガ、UCL、国王杯もあり、試合に出られるチャンスは多いです。ここでチームを離れるよりも、サンパオリ監督のもと厳しい環境のなかで経験を積むことが清武にとってプラスになると思います。

構成/飯塚 健司

theWORLD181号 2016年12月23日配信の記事より転載

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