“スピードだけ”の選手ではアーセナルに戻れない 瞬足自慢の浅野拓磨に求められるもう1つの「武器」

独2部ではスピードだけでも通用するが……

独2部ではスピードだけでも通用するが……

シュツットガルトでプレイする浅野 photo/Getty Images

今夏世界を代表する名門クラブの1つであるアーセナルに移籍し、現在シュツットガルトで武者修行している日本代表FW浅野拓磨の武器と言えば圧倒的なスピードだ。そのスピードはリオデジャネイロ五輪でも注目を集め、シュツットガルトでもサイドで躍動する浅野には期待がかけられている。しかし、スピードある選手だからこそプレイの幅が必要になる。

浅野はセンターフォワードで勝負したいかもしれないが、そのスピードをサイドで活かしたいと考える指揮官も多いはず。今後も日本代表、シュツットガル ト、さらにはアーセナルに戻ることになったとしてもサイドで起用される機会は増えるだろう。その時スピードを武器に縦に仕掛ける1つのパターンしか無いようでは苦しい。

以前アーセナルには宮市亮も大きな期待を背負って加入し、レンタル先のフェイエノールトでは抜群のスピードを活かして素晴らしい活躍を見せた。しかしスピードに頼るプレイが大半で、幅がなかった。スピードを警戒されて縦へのコースを消された時、他の選択肢があっただろうか。例えば日本代表の一員としてアジアと戦う際、相手は徹底的に引いて守ってくることも考えられる。その中で現在浅野がシュツットガルトで見せているような縦へのドリブルは仕掛けにくいはずだ。
宮市の他にも日本では永井謙佑もスピードスターとして有名で、2012ロンドン五輪では世界が驚くスピードを披露した。しかし、永井のプレイもスピードを活かしたものが大半で、狭いスペースでは能力を発揮しにくい。スピードがあるからこそ、スピードスターは長所を活かそうと自慢の足に頼りすぎるところがある。

宮市と同様に、浅野はレンタル先のシュツットガルトで好パフォーマンスを続けている。先日のハノーファー戦でも得点に絡んでおり、スポルティング・リスボンからレンタル加入しているカルロス・マネとともにスピードあるウイングの2人はチームに大きく貢献している。しかし、そのスピードがプレミアリーグのようなトップレベルで通用するかは 微妙なところだ。スピードを活かすためにも 、何か別の長所が欲しい。

例えばウイングで起用されるならば縦に突破してクロスを上げるだけでなく、中にカットインして味方と絡むようなプレイだ。チームメイトのマネは中に入ってスルーパスを通すような仕事もこなしており、浅野としては参考になるはずだ。そしてセンターフォワードで起用されるのであれば、裏のスペースに走るだけでなく、相手に寄せられてもボールをキープして味方に繋ぐ最低限の技術が必要になってくる。

現代サッカーではどんどんスペースが狭くなってきていて、スピードだけで生き残れるほど甘い環境ではない。宮市、そして浅野とアーセナルが2人のスピードに注目してくれたのは嬉しいところだが、そこでプレイできるようになるにはスピード以外の武器が必要になってくるだろう。

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