コンテは名将モウリーニョを超えたのか 2人の率いたチェルシーに見える”適応力”の差

昨季のチェルシーとは大違い

アントニオ・コンテはチェルシー、ジョゼ・モウリーニョはマンチェスター・ユナイテッドと、2人は今季からそれぞれ新たな挑戦をスタートさせた。競争力の激しいプレミアリーグでは就任1年目から結果を出すのは簡単なことではなく、加えて現在のプレミアリーグにはユルゲン・クロップ、マウリシオ・ポチェッティーノ、そしてジョゼップ・グアルディオラなど優秀な指揮官が揃っている。これまで以上に難しいリーグになっているのは間違いない。

その中で、コンテとモウリーニョの出来は大きく違う。コンテは昨季苦しんだチェルシーを上昇気流に乗せ、優勝をも狙える位置にチームを押し上げた。一方のモウリーニョはマンUで苦しんでおり、優勝どころかチャンピオンズリーグ出場権の確保すら難しいかもしれない。この2人の差はどこでついてしまったのか。その要因の1つは適応力だろう。

コンテも序盤はアーセナルに0-3で敗れるなど、悪い試合も多かった。しかし、それまで使用していた4バックから3バックに変更することでチームを立て直し、今では誰も手に負えないチームを作り上げている。
それに対してモウリーニョは開幕直後からスタイルを大きく変えていない。最前線は新加入のズラタン・イブラヒモビッチのままで、システムも[4-2-3-1]、あるいは[4-3-3]で固定したままだ。モウリーニョはこれまでも4バックを基本としたスタイルで戦ってきていたが、今のチームは明らかに機能していない。

所属している選手に合わせてベストな型を用意し、選手がプレイしやすい環境を作り出すのも名将の条件だ。モウリーニョは勝てるスタイルを持っているが、そのスタイルが上手く機能するにはスター選手を揃える必要があり、なおかつ彼らが好調を維持していなければならない。今のチームにもイブラヒモビッチ、ポグバなどスター選手はいるものの、まだ彼らは本調子というわけではない。

コンテがもともと3バックを得意としていたのは事実だが、モウリーニョとは引き出しの数に違いがあるように感じられる。何より、今のチェルシーは昨季からほとんど顔ぶれが変わっていない。新たに入ったのはエンゴロ・カンテ、マルコス・アロンソくらいで、イブラヒモビッチやポグバを揃えたマンUに比べれば地味な夏を過ごしたと言える。それでもコンテはここまで結果を出している。モウリーニョよりコンテの方が優れた指揮官との意見が出ても仕方がないだろう。

思えばコンテはイタリア代表、ユヴェントスと困難な状態にあったチームを立て直してきた。ユヴェントスも就任時は決して良い状態ではなく、前のシーズンをリーグ戦7位で終えていた。そのチームをいきなり無敗優勝に導き、その後の黄金期へと繋げてみせた。

EURO2016に出場したイタリアも決して陣容が豪華だったわけではないが、スペイン代表も撃破してベスト8に進出。最も優勝に近いチームとの声もあった。限られた戦力で勝てるスタイルを作り、持ち前の情熱をチームへ注入していく。モチベーターとしてもコンテが優れた存在なのは間違いない。モウリーニョも名将なのは間違いないが、現在チェルシーでコンテが見せている適応能力を見ると、コンテの方が優れた指揮官と判断できるのではないだろうか。

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