GKに繋ぐ能力を求めすぎる現状は正しいのか? バルサ戦でのブラーボの判断ミスに見える”やりすぎ感”

ゴール前でリスクあるプレイを選択するGKも

ゴール前でリスクあるプレイを選択するGKも

レッドカードを受けたブラーボ photo/Getty Images

近年のGKにはシュートをストップすることはもちろん、ペナルティエリア外まで飛び出してのボール処理やビルドアップに参加することが求められている。代表的な選手でいえばバイエルンのマヌエル・ノイアーであり、異常な守備範囲はGKの新たな可能性を引き出したと言える。

各チームのGKもこの流行に乗り遅れまいとチャレンジしており、最近はGKにも高いパス精度が求められるようになった。しかし、その影響からかミスも目立つ。19日のチャンピオンズリーグ、バルセロナとマンチェスター・シティの一戦ではマンCのクラウディオ・ブラーボが不用意なパスミスを犯し、最終的にはスアレスのシュートをエリア外で手を使って止めて退場処分を受けている。

本来GKがエリア外まで飛び出せばセーフティに遠くへ蹴り飛ばすのがセオリーだが、ブラーボは繋ぐことを選択。これがキックミスになってスアレスの目の前に転がってしまった。これには元アイルランド代表FWナイアル・クラン氏も、今夏トリノに移籍したジョー・ハートならこんなことはしなかったはずだとコメントしている。
今夏マンCの指揮官に就任したグアルディオラは、足下の技術に不安が残るとの理由からハートを構想外にした。その代わりにブラーボがやってきたわけだが、今回のミスは許されるものではない。ブラーボはマンチェスター・ユナイテッド戦でも相手選手に詰められる危ないプレイをしており、パスにこだわりすぎるのは危険だ。

さらに、バルセロナGKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンも10月のセルタ戦でとんでもないミスをしている。テア・シュテーゲンは繋げるGKと評価されているが、セルタ戦では蹴ったボールが相手選手に当たってゴールに入ってしまう珍プレイを披露。これが決勝点となってしまったのだから笑えない。

最近はGKにバックパスをした際もすぐに蹴り飛ばすのではなく、パスコースを探してから蹴るのが当たり前になってきている。しかし、それを意識するあまりリスキーなプレイをしてしまうことも少なくない。プレシーズンではあるが、今夏リヴァプールに加入したGKロリス・カリウスもウィガン戦で味方からのパスをトラップミスし、相手に詰められてピンチを迎えた場面があった。カリウスがボールを受ける際には相手選手もペナルティエリアの中に入っており、安全を第一に考えるのであればそのまま遠くへ蹴り返してもよかったはずだ。

高く保った最終ラインの裏の広大なスペースをGKがカバーするやり方も危険と隣り合わせだ。少しシチュエーションが異なるが、イタリア代表GKジャンルイジ・ブッフォンも先日のスペイン代表戦ではまさかの空振りをしてしまい、ゴールをプレゼントしている。現代のGKにはエリア外のボールを処理する能力も求められているが、失敗すれば取り返しのつかないことになる。

今プロのGKを目指す者たちは必死に足下の技術を磨いていることだろう。シュートを止めることは当たり前、あとはどれだけパスと守備範囲の広さでチームに貢献できるかが一流のGKになる条件のようになっているからだ。しかし、自身の技術を過信してパスを狙いすぎたり、キックフェイントをするようなGKは危険極まりない。今では美しいGKからのパスに拍手が送られることも多いが、ゴールを守ることが1番の仕事であることを忘れがちになっていないだろうか。

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