[欧州新シーズンプレビュー 2]25回目の覇権に向け盤石のバルサ 首都の2クラブは復権を目指す

MSN次第のバルセロナとレアルの復権を目指すジダン

MSN次第のバルセロナとレアルの復権を目指すジダン

MSNの攻撃力は今季もリーガを席巻するのか photo/Getty Images

バルセロナ、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリード。ここ数年と同じく、今季も3チームが上位を占めることが予想される。3強の実力は年々接近しており、昨季は1位バルサから3位A・マドリードまでわずか勝点3差だった。今季もバルサが連覇を目指す1年になるが、シーズン途中から1位をキープして譲らなかった一昨年、たった一度しか1位の座から転落しなかった昨年とは少し違う展開になりそうだ。

なぜなら、バルサの攻撃は説明不要の3名、リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールに依存するところが大きく、この3名のパフォーマンスが勝敗に直結する。無論、他の攻撃陣も高品質だが、MSNと比べると相手DFに与えるインパクトがだいぶ違う。昨季終盤にはUCLも含めて試合が重なり、MSNを含む主力が疲労したことでチーム力が低下して3連敗を喫したことがあった。決して完璧ではない姿を見せた瞬間で、2連覇を逃す可能性さえもあった。

リーガ、国王杯、UCLをずっと同じ攻撃陣で戦えるわけではない。ルイス・エンリケ監督も昨季序盤は積極的にローテーションを行ない、MSNに疲労が溜まらないようにしていた。基本となる4-3-3以外に、4-2-3-1を採用したこともあった。ただ、繰り返しになるが他の攻撃陣、サンドロ・ラミレス、ムニル・エル・ハダディ、セルジ・ロベルトなどでは相手DFに与える怖さがぜんぜん違うのが現実だ。(※編注:その後バレンシアからFWアルカセルを獲得)
そういった意味で、新たに攻撃陣に加わったアンドレ・ゴメス、デニス・スアレスなどに期待がかかる。彼らが活躍したなら、リーガ3連覇+他のタイトル獲得も有り得る。

昨季途中に監督となり、抜群の統率力でチームを蘇生させたジネディーヌ・ジダンが開幕戦から指揮を執るR・マドリードも相変わらず良質な選手を揃えている。クリスティアーノ・ロナウド、カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイルの3トップは力強さや高さを考えるとバルサの3名より上かもしれない。

ただ、バルサと同じく試合数が多く、ローテーションが必要だ。そして、R・マドリードのベンチにはハメス・ロドリゲス、イスコ、ルーカス・バスケスがいる。ハメス・ロドリゲスは移籍する噂もあるが、本人やジダンのコメントを聞く限り残留する可能性が高い。ここにさらに、ユベントスからこれまた力強さと高さがあるアルバロ・モラタも加わっている。攻撃陣のコマを比べると、R・マドリード>バルセロナだと考えられる。

「シーズンを通じて選手たちに望むのは、仕事に一生懸命に取り組むことだ。なぜなら、R・マドリードであるというだけでは目標を達成することはできない。私はただ、仕事に一生懸命に取り組むことを選手たちに望む」(ジダン監督、8 月16 日のサンチャゴ・ベルナベウ杯ランス戦後のコメント) どことなく名監督としての“雰囲気”を漂わせるジダンに率いられたR・マドリードが、ついに復権を果たす。今季はそんなシーズンになってもなんら不思議はない。

シメオネのチームは今季もブレなし UEL権利を巡る中位争いも白熱

シメオネのチームは今季もブレなし UEL権利を巡る中位争いも白熱

シメオネのチームはブレない強さを持つ photo/Getty Images

2011-12シーズン途中にディエゴ・シメオネが監督に就任してから、A・マドリードは闘う集団となり、リーガのみならずUCLでも優勝を争う強豪へと進化した。好成績を残し続けるシメオネには他クラブからオファーがあり、一時期は昨季限りで退団して新天地へ移るという報道もあったが、引き続きA・マドリードを指揮することとなった。

チームのストロングポイントはなんといっても守備にあり、昨季は全日程(38試合)を終えて18失点という驚異的な数字を記録し、1993-94シーズンにデポルティボが記録したリーガ最少失点に並んでいる。守備神ヤン・オブラクを筆頭に、最終ラインのホセ・ヒメネス、ディエゴ・ゴディン、フィリペ・ルイス、ファンフランといった守備陣に変動はなく、今季も堅守が期待できる。

ただ、最終ラインはヒメネスを除く3名が30歳代で、中長期的にみると年齢的な不安があるのも事実だ。粘り強い守備、試合終盤まで落ちない運動量がA・マドリードの魅力だが、主力の高齢化とともにパフォーマンスが落ちていくのは避けられないだろう。とはいえ、現在のA・マドリードにその心配はない。

フィリペ・ルイス、ファンフランの両SBは強靱なスタミナを持っているし、ゴディン、ヒメネスの両CBで固めるゴール前は空中戦を含めた対人プレイに強く、相手に楽なシュートを許さない。なにより、シメオネによって前線、中盤からの連動した守備がチームのなかにしっかり落とし込まれていてバランスを崩すことがない。

守備に関しては、A・マドリードはなんの問題もない。あとは、EURO2016で得点王となったアントワーヌ・グリーズマンや経験豊富なフェルナンド・トーレス。そしてセビージャから獲得したケビン・ガメイロ(昨季16得点)などを擁する攻撃陣がどれだけ得点数を積み上げられるかに明暗がかかっている。

3強に続くチームとしては、ビジャレアル、アスレティック・ビルバオ、セルタ、セビージャなどが挙げられる。ただ、昨季4位のビジャレアルはGKアルフォンス・アレオラ、CBエリック・バイリー、MFデニス・スアレスなど主力数名を放出している。リーガでは7位だったものの、UEL3連覇を達成したセビージャも選手の入れ代わりが激しい。また、ビジャレアルはフラン・エスクリバ、セビージャはホルヘ・サンパオリという新たな指揮官を迎えたシーズンで、チームがどう変化するかわからない状態だ。

対して、昨季5位のビルバオや6位のセルタは継続性のある強化を続けていて、戦力低下を最小限に抑え、少数精鋭の補強を行なっている。中位争いを制するのは、新たな道を進むビジャレアルやセビージャなのか。それとも、安定感のあるビルバオやセルタなのか。3強による優勝争いとともに、中位の争いも注目されるところだ。

文/飯塚 健司

theWORLD177号 2016年8月23日配信の記事より転載

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