名良橋晃の定点観測♯24「柔軟性がなかったU-23代表。東京五輪に向けてJ3やルヴァン杯参戦もあり」

日本人選手の特徴のひとつ。第2、第3の選択ができない

日本人選手の特徴のひとつ。第2、第3の選択ができない

ナイジェリア戦の勢いに圧倒され、U-23代表は柔軟な対応ができなかった Photo/Getty Images

リオ五輪に出場したU-23代表はグループリーグで敗退しましたが、正直もう少し見たいチームでした。中央突破があればサイドからの崩しもあり、攻撃では日本の良さが発揮されていました。決勝トーナメントに進出してブラジルと対戦するのを楽しみにしていたので、残念な結果となりました。

悔やまれるのは、初戦のナイジェリア戦です。3人のオーバーエイジを加えて調整する時間が十分になかったし、大会直前に久保裕也がヤングボーイズに呼び戻されるという想定外のことがありました。当初、手倉森誠監督は前線を久保と興梠慎三の2トップにして、4-4-2で戦おうとしていたと思います。このプランが崩れた結果、興梠を1トップとする4-1-4-1という不慣れなシステムを選択して初戦に臨みました。

ナイジェリアの攻撃力を考慮した結果だと思いますが、最終ラインには2人のオーバーエイジが加わったばかりでラインコントロールやチーム全体の統率に不安がありました。攻撃の選手ならば「個」の力で打開できますが、守備はまわりとの連係が必要で組織力を高めるにはやはり時間がかかります。「耐えて勝つ」(手倉森監督)という狙いがあったようですが、必要以上に守備的になってしまい相手の勢いに圧倒されました。

結果的にこのナイジェリア戦での敗戦が痛かったわけですが、大会を通じて感じたことがあります。選手たちは強い意識を持って戦ったと思いますが、指導者から言われていることをやっているだけという印象がどうしても残りました。やらなければいけないこと、守らなければならないルールはもちろんあります。そのうえで、自分が持っているストロングポイントを試合のなかでもっと発揮することが必要だと思います。

戦術を守ることは大事です。しかし、試合は常に動いていて、相手はこちらの考えの裏を突こう、逆を突こうとしてきます。戦術に縛られて自分の良さを出せないようでは、元の木阿弥です。ここ数年、~らしさを出せなかったという言葉をよく耳にします。ブラジルW杯を戦った日本代表も「自分たちらしさ」にこだわったチームでしたが、その一方で柔軟性がなくグループリーグを突破できませんでした。今回のU-23代表も同じように柔軟性がありませんでした。

試合前に「耐えて勝つ」というプランがあったとしても、状況に応じてピッチのなかで変えていかないといけない。実際にキックオフされたら自分たちで判断し、戦い方を変えることがときには必要です。事前に用意したゲームプランに対して、現状がどうなのか冷静に判断し、柔軟に対応しなければなりません。日本人選手は戦術に縛られて頭でっかちになり、試合中に第2、第3の選択ができない傾向があります。私はここに日本サッカーのウィークポイントがあると思っています。

強化方法にマニュアルはない。東京に向けて最善を尽くすべき

強化方法にマニュアルはない。東京に向けて最善を尽くすべき

昨年のナビスコ杯(今季からルヴァン杯)決勝より。同大会に参加してもいい Photo/Getty Images

指導者や選手はサッカーをなんのためにやっているか? 負けた試合のあとに「内容は良かった」「自分たちらしさは出せた」という感想を耳にすることがあります。否定しませんが、勝負はやはり勝つことが大事で、そのためには指導者や選手がもっとどん欲に、やりたいことをやるべきだとリオ五輪を見て感じました。チームの決まり事を守るだけではなく、状況に応じてゴールを奪うための判断、勝利するための判断を自分で下す。私も含めて育成年代の指導者の責任ですが、日本の若い選手たちはそうした判断がどうしてもできない傾向があります。

私自身の現役時代を振り返れば、決して技術がある選手ではなく、体躯に恵まれていたわけでもありませんでした。だからこそ、下手は下手なりにどうやったら相手に競り勝てるか、試合に勝てるかを常に考えてプレイしていました。戦術や理論も大事ですが、いざプレイすると想定していたものと違う部分が出てきます。このときに柔軟に対応できないと、相手の勢いに押されることになります。

若い選手たちにこうした判断力を身につけてもらうためには、どうすればいいか。私も育成年代の指導をしているので、言葉の選び方、伝え方を日々考えています。性格の違う子どもたちに、同じアプローチをしても同じ結果は得られません。いまは我の強い子どもが少なく、表情だけではなにを考えているかわからないときがあります。こちらが言うことはできるのですが、「ボクはこうしたいです」と聞いてくることがありません。指導者にやらされている感覚なので、昨日できたことが今日はできないこともあります。

現状を打破するためには、子どもたちが自分自身で考える場が必要です。1990年当時、私がバルセロナ五輪を目指す代表に入っていたときにコニカカップという大会がありました。日本サッカーリーグ(JSL)のトップチームが出場する大会でしたが、ここに五輪代表として参戦して経験を積みました。さらには、同大会にはひとつ下のU-19代表も参戦していて、私はそちらのチームでもコニカカップを経験しました。大人のチームと対戦したこのときの経験は、いまも記憶に残っています。

2020年の東京五輪を戦うチームは予選がありません。強化方法が難しいですが、ひとつの提案として大人のチームと対戦する機会を設けるのはどうでしょうか。勝つためにどうしなければならないか、いろいろ考えるキッカケになります。A代表が集まるときに、五輪代表も招集して練習試合をしてもいいし、Jリーグとの話し合いで可能ならば昨シーズンのようにJ3に参戦したり、ルヴァン杯に出ても良いと思います。Jリーグ主催のリーグ戦ですが、高校生、大学生のチームが出ても良いでしょう。選手登録やいろいろな規則があって難しいかもしれませんが、強化のためには最善を尽くすべきで、そこにマニュアルはありません。

リオ五輪を戦うU-23代表を見て、組織力やグループ戦術の前に、まずは檜舞台で当たり前に普段の力を発揮できる能力が必要だとつくづく感じました。ナイジェリアの個性の前に、日本らしさは没していました。日本サッカー発展のためには、高校生同士が対戦する高円宮杯プレミアリーグなどに加えて、大人と対戦する機会が絶対に必要です。劣勢を強いられるなか、どう勝負を挑んで勝利につなげるかを実戦を通して学ぶことができるからです。こうした経験を積むことで、柔軟な判断力が養われていくのだと思います。

構成:飯塚健司

theWORLD177号 2016年8月23日配信の記事より転載。

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