ブンデスリーガの双璧をなすバイエルンとドルトムントの対照的な補強法 しかしそこには共通点も

質のバイエルンと量のドルトムント

今夏、移籍市場の前半戦を盛り上げたのはブンデスリーガの二強であることに疑いはないだろう。

まず、王者バイエルンは5月に補強を完了している。ベンフィカからレナト・サンチェス、ドルトムントからマッツ・フンメルスという2人の実力者の獲得を発表してから約3か月が経過したが、新たにメンバーを加えることなく、CEOのカール・ハインツ・ルンメニゲ氏も「怪我人が出ない限り、獲得には動かない」と補強終了宣言を行っている。わずか2名の補強だが、前者はEUROで自身の価値を示し、フンメルスはドルトムントでの8年間でワールドクラスであることは証明済みだ。バイエルンはこの2人の獲得に7300万ユーロという大金を費やしているものの、浪費と批判する人々はどこにもいない。

一方、ドルトムントの補強法は質で勝負したバイエルンとは対照的だ。2人で補強を終了したバイエルンに対して、ドルトムントは8名を獲得している。しかも、その半数近くは大きな実績のない若者だ。ウスマン・デンベレ、エムレ・モル、ミケル・メリーノといった選手たちはこの枠組みに分類されてしかるべき選手だろう。無論、マリオ・ゲッツェやアンドレ・シュールレといったスター選手も獲得しているが、それよりも際立つのはチームに大幅な刷新がはかられたことだ。フンメルス、イルカイ・ギュンドアン、ヘンリク・ムヒタリアンというユルゲン・クロップ前監督の時代からチームを支えたスター選手を一度に放出し、計1億1375万ユーロという大金を使って、8選手を迎え入れている。
両クラブとも補強方針こそ違えど、大金を使って、移籍市場を動き回ったという共通点を持っている。また、ドイツのクラブらしい“黒字経営”も忘れていない。バイエルンは7300万ユーロを使った一方で、ゲッツェなどの放出益で計5600万ユーロを得ている。すなわち実質的な支出は1700万ユーロに抑えた。さらにこの上を行くのがドルトムントだ。例年になく大金を使ったドルトムントだが、3人のスター放出などによって得た移籍金は1億7000万ユーロにまで上った。つまり実質的な支出はわずか675万ユーロで、むしろ例年よりも金の出費は抑えたと言えるかもしれない。

余剰戦力を“換金”しながら、新たなスター選手を迎え入れたバイエルンとチームそのものが生まれ変わったといっていいドルトムント。チームとしてはまるで違う方針をとっている両クラブだが、最小限の出費でチームを強くするという概念は共通している。現状では入れ替わりの少ないバイエルンが一歩も二歩もリードしていることは否めないが、若きタレントを多く抱えるドルトムントは大きなポテンシャルを秘めている。それだけに、今季もブンデスリーガで熱い戦いが繰り広げられることは間違いないはずだ。

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