名良橋晃の定点観測♯16「2015年のJリーグはわかりにくかった。年間順位に疑問が残る」

年間勝点=年間順位。これでいいのでは?

2015年のJリーグを振り返ると、J1ではやはりクラブの“基盤”がしっかりしているチームが年間勝点で上位となり、CS(チャンピオンシップ)に出場した印象があります。1位~3位の広島、浦和、G大阪はもちろん、4位のFC東京や5位の鹿島も強化の方針が一貫していて、フロント、現場、サポーターが共通した意識を持ち、継続性のある強化と運営ができています。

疑問に感じるのはいま紹介した年間勝点で、年間順位がまた別にある点です。CSに優勝した広島が1位、準優勝のG大阪が2位、浦和は3位となり、勝点63のG大阪が勝点72の浦和の上に来ています。来シーズンのACL(アジアチャンピオンズリーグ)の出場権もこの年間順位によって決められるため、現状では浦和はプレイオフからの出場になります。天皇杯の結果によってまた変わりますが、これに疑問を感じているのは私だけでしょうか?(注:その後に開催された天皇杯の結果により、浦和は本大会からの出場になった)

個人的には、年間勝点=年間順位でいいと考えています。CSは別大会として、リーグ戦と切り離して考えていいと思います。どうしてもシーズン後に地上波で中継できるような盛り上がる大会を開催したいのであれば、リーグ戦の上位チームとナビスコ杯優勝チームなどを集めて、別大会として冠スポンサーを募ってCSを開催すればいいと思います。
1996年に一度、サントリーカップ・チャンピオン・ファイナルという大会が行なわれました。リーグ戦の1位、2位、ナビスコ杯の優勝、準優勝の4チームが出場し、すべて一発勝負のトーナメント方式で争われました。準決勝は同日開催だったので、今年のCSよりも1日少ない2日間で終わっています。日程的なことを考えても、出場チーム数さえ流動的な現行方式よりも、別大会として開催したほうがいいのではないでしょうか。

来シーズンはまた、CSの大会方式を変更するという発表がありました。今シーズンのJ1は、観戦している人にとってわかりにくかったと思います。1年で変更する必要が出てしまうということは、準備段階で不備があったことの現われです。選手は決められたレギュレーションのなか、精いっぱいプレイすることしかできません。どうやったらより魅力的なリーグになるのか、しっかりとした基盤を作ってほしいです。

J2のプレイオフ決勝も、来シーズンは上位チームのホームで開催されることになりました。同じように、改善すべきところは早急に改善すべきだと思います。一方で、継続したほうがいい事柄もあります。たとえば、来シーズンから復活するサテライトリーグは、若手の成長につながります。目に見える結果がすぐに出なくても、1年やっただけで「うまくいかなかった」と見切りをつけてしまうのではなく、我慢強く取り組むべきだと考えます。

下位には下位の理由あり。千葉には危機感がない?

上位とは逆に、下位のクラブにはさまざまな問題がありました。初のJ2降格となった清水は、ここ数年は強化の方向性がブレていたと思います。2010年に長谷川健太監督がチームを去ってから、フロントと現場の関係性が少しずつ不透明になっていったと聞いています。強化の方向性について意志統一ができておらず、バランスが崩れていたようです。良い成績を収めるためにはクラブ全体の一体感が必要で、基盤がしっかりしていなければ結果につながらず、上位を狙うことは難しくなります。それどころか、降格となってしまいます。

J2からJ3へ降格した大分、栃木にも同じことが言えます。大分に関しては、2013年はJ1で戦っていました。昨シーズンもJ2で7位でした。そして、今シーズンも戦力をみると決して悪くなかったと思います。育成型のクラブで、ユースから昇格する選手も多いです。しかし、今シーズンは監督交代もあり、一時的に盛り返したものの、最後にはまとまりのないバラバラなチームになってしまっていました。J2はチーム数が多く、シーズンが長いため、その都度チームの状態・状況を見極めて、適切な判断が必要だと思います。

そのJ2では、千葉がついにプレイオフ進出を逃しました。私は千葉県出身なので、ジェフの成績はやはり気になります。現在監督を務める関塚隆さんとは鹿島時代にコーチと選手の関係だったので、そういった意味でも気になるチームです。しかし、毎年のように昇格候補に挙げられながら、どうしてもJ2を抜けられずにいます。

戦力は整っていると思います。それでも結果を出せないということは、現場レベルの問題ではない、改善しなければならないもっと大きな問題を抱えているのだと思います。前述したように、しっかりした基盤がなければ、フロント、現場、サポーターが共通した意識で取り組まなければ、サッカーの世界では求める成績は得られません。

いまの千葉は、どれだけの危機感を持って戦っているのか疑問です。「自分たちは大丈夫。J2にいるチームではない」と思って戦っていないでしょうか。サポーターが優しく、厳しい意見やブーイングが少ない印象もあります。ホームゲーム最終戦後のセレモニーをTV中継で見ていましたが、拍手なのかブーイングなのか中途半端で、なんとも不思議な感じでした。

フロントや現場はもちろん、サポーターもいま置かれている状況をもう少し客観的に理解しなければ、いつまでも現状を打破できずにズルズルと行ってしまう可能性があります。今シーズンの大分のように……。

そういった意味で、来シーズンからゼネラルマネジャーを務める高橋悠太氏がどんな変革をもたらすか興味があります。千葉県出身の高橋氏のもと、すでに阿部翔平を獲得し、さらには船山貴之なども獲得しています。両名とも千葉県出身の選手です。そして、なにより関塚監督も千葉県出身です。生まれ故郷に戻った監督、選手には、「地元にあるジェフを昇格させたい」という強い気持ちが間違いなくあると思います。

今シーズンのJ2で9位というのは、千葉にとって過去最低の成績でした。地元に帰って来た彼らの力で、ここからどんな挽回を見せるのか。私の地元に存在するこのクラブには、これからも注目していきたいと思っています。

構成/飯塚健司

theWORLD169号 12月23日配信の記事より転載

記事一覧(新着順)

電子マガジン「ザ・ワールド」No.291 究極・三つ巴戦線

雑誌の詳細を見る

注目キーワード

CATEGORY:コラム

注目タグ一覧

人気記事ランキング

LIFESTYLE

INFORMATION

記事アーカイブ