名良橋晃の定点観測♯14「立ち止まっている日本代表は世間からの関心を失っている。危機感を持って取り組むべき」

W杯予選
イラン
シリア
名良橋晃
日本代表

日本代表は立ち止まってしまっている。Photo/Getty Images

選手起用に疑問あり。米倉は右サイドの選手

シリア、イランと戦って1勝1分け。日本代表は結果こそ残しましたが、正直「う〜ん」という印象を受ける2試合でした。ブラジルW杯でグループリーグを突破できず、アジア杯では4強入りできませんでした。そこからの巻き返しがなく、日本サッカーは立ち止まってしまっています。アジアのなかでさえ、存在感が薄まっているように感じます。

6月にシンガポールと0-0で引き分けた影響がまだ残っているのか、チーム全体に焦りがあり、攻撃のリズムがずっと同じで変化が見られません。シリア戦、イラン戦ともに急いでつなごうとするあまりパスの精度が低く、良いカタチの攻撃を仕掛けることができませんでした。とくに、相手がまだ元気だった前半は日本のリズムで戦うことができませんでした。

後半になるとどちらの試合でも相手の運動量が落ち、生まれたスペースに岡崎慎司や武藤嘉紀が走り込むことで得点につながりました。ゴールシーン以外にも、ロングボールをうまく使って相手の背後を狙う場面が増えました。相手がスペースを与えてくれたことで、タテに速いサッカーができていました。

しかし、今後戦う相手がシリアやイランと同じようにスペースを与えてくれるとは限りません。むしろ、シンガポールやカンボジアのようにゴール前を固めることが予想されます。そう考えると、今後も苦戦が続くのではないかという不安が拭えません。スペースがないところに意図が不透明なロングボールやクロスボールを入れても、得点につながる確率は低く、そのためゴール前に入れるラストパスに変化をつけたり、ドリブルなど「個」の力での突破が必要になってくると思います。

イラン戦では右SBを酒井高徳、左SBを米倉恒貴が務めました。個人的に、米倉はG大阪と同じく、右サイドで起用すべきだと考えています。左右が変わると、ボールの持ち方、身体の使い方も変わってきます。クロスの精度もどうしても落ちてしまう。また、米倉からのバックパスが雑になってしまい、これに対応した吉田麻也が相手からプレッシャーを受けてファウルを犯し、イエローを受けてしまうプレイもありました。

逆に、酒井高は左サイドのほうがスムーズにプレイできるのではないでしょうか。ポジショニング、身体の使い方を見ていると、左サイドのほうが合っていると感じます。他にも、左サイドには太田宏介、藤春廣輝がいます。彼らをもっと実戦で起用して、いまのうちに国際経験を積ませたほうがいい。いつまでも内田篤人、長友佑都に頼るわけにはいきません。左右のSBに彼らに代わるような新しい選手が出てくることを期待しています。

進化の速度を上げなければ、いつか追い抜かれてしまう

新しい選手の台頭が必要なのは、左右のSBだけではありません。いまの日本代表は18年ロシアW杯で好成績を残すことを目標に掲げています。目先の勝利を追求することも大事ですが、3年後を見据えた強化が必要です。今回の遠征では南野拓実がイラン戦の87分から出場しましたが、塩谷司はピッチに立つことがありませんでした。正直、もう少し思い切った選手起用を見たかった気持ちがあります。新しい選手を起用するチャンスは、今後どんどんなくなっていきます。アジア最終予選で国際経験が少ない選手を出場させるのはリスクがあります。そのため、最終予選はある程度固定されたメンバーで戦うことになります。そう考えると、強化試合で新しい選手を起用しないとメンバーが入れ代わっていきません。これが、日本サッカーが世間に立ち止まっている印象を与える原因になっているのだと思います。

ゴール前を固める相手を崩すために、突破力のあるドリブラーを起用するのもひとつの策です。9月のアフガニスタン戦では原口元気が良い動きをしました。同タイプの選手として、宇佐美貴史や南野はもちろん、乾貴士や齋藤学もいます。毎回同じ選手を招集するのではなく、そのときに好調な選手をピッチに送り出してほしいです。

本当はポジティブな話題をしたかったのですが、今後の日本サッカーの考えるとどうしてもそういう気持ちになれませんでした。

「お、今日はイラン戦なんだね」

試合当日に知人からこう言われました。以前は数日前から多くの方が日本代表の試合を楽しみにしていたのに、いまはラグビーやテニスの人気に押され忘れられてしまっている印象を受けます。日本サッカーに関わるすべての人が危機感を持って取り組まなければ、このまま完全に人々の関心を失っていく可能性があります。

シリア、イランとの連戦で、監督や選手はもちろん、サッカー関係者全員が日本サッカーの現在地を確認できたと思います。ここ数十年、急速に進化してきましたが、いまは停滞しています。逆に他国がレベルアップしたことで、差が縮まっています。もう一度、成長の速度を上げなければ追い抜かれてしまうのも時間の問題でしょう。

来年、キリンカップが復活するかもしれないという報道がありました。とても大事なイベントだと思いますが、国内で数試合を組むスケジュールがあるのなら、今回と同じようにアウェイで戦う経験を積むべきだと思います。そのほうが絶対に日本代表の強化につながります。

現状を冷静に考えたときに、日本サッカーの将来に危機感を抱いているのは私だけではないはずです。もちろん、代表の強化だけを考えればいい問題ではありません。Jリーグの活性化、選手育成など課題は多岐に渡ります。誰かひとりではなく、日本サッカーに関わるすべての人々が危機感を持って取り組むことで、改善できるのではないかと考えています。

構成:飯塚健司

theWORLD167号 10月23日配信の記事より転載

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