名良橋晃の定点観測♯8「ハリルホジッチ監督には、メンバーを固定する風習を覆してほしい」

ハリルホジッチ
名良橋晃
日本代表

発言や行動を見ているとトルシエ監督を思い出させる

ハリルホジッチ監督は熱血漢で、発言や行動を見ているとトルシエ監督を思い出します。記者会見を聞くだけでも、彼がいかにサッカーが好きなのかが感じられました。情熱的に厳しく選手と接していますが、そこにはすでに信頼関係がしっかりと出来あがっています。

チュニジア、ウズベキスタンと戦った2試合では各選手がタテに早いサッカーを意識し、積極的にチャレンジしていました。ハリルホジッチ体制になって最初の合宿では、素早くタテへ仕掛けることを強く意識させることで、方向性が明確になりました。ただ、今後はタテに早い展開ばかりを意識しているだけでは世界と戦うことは難しいと感じます。とくに、W杯アジア2次予選では臨機応変さが求められます。

相手が自陣に守備のブロックを作り、前に出てこないときにどうするか? 状況によってはポゼッションが必要で、ボールをキープしつつスキを探して、素早く一気にタテへ攻めると効果があります。日本人選手はタテへ早いサッカーを意識すると、それだけになってしまう傾向があります。何事もメリハリが大事で、ポゼッションとタテへ早いサッカーをうまくミックスして攻撃を仕掛けることが得点に近付きます。

連勝したものの、チュニジア、ウズベキスタンとの対戦ではどちらも相手の運動量が落ちた後半に多くのゴールを奪っています。裏を返せば、守備がしっかりしていた前半は苦戦を強いられていたと言えます。W杯予選で対戦する相手は格下です。間違いなく、彼らは守備的に戦ってきます。フレンドリーマッチのように後半になって運動量が落ちることもないでしょう。日本の初戦はシンガポールとのアウェイゲームですが、ジーコ監督に率いられて2004年にW杯予選で対戦し、最後まで苦しめられたのを覚えている人も多いのではないでしょうか(結果は1-0で勝利)。

ウズベキスタン戦の後半には、あえてラインを下げて罠を仕掛け、相手を引き出すことに成功しました。同じように罠にハマッてくれればいいですが、W杯予選では、日本が攻めないなら引分けで十分だと判断して前へ出てこない可能性があります。そのときは、しっかりとポゼッションするなか、サイドへボールを散らす、ミドルシュートを放つなどして相手を揺さぶる必要があります。

海外組にアドバンテージはない。代表の門は常に開かれている

W杯予選では必ず相手の展開に合わせた臨機応変な戦いが求められます。しかし、ボクはそれほど心配していません。むしろ、期待のほうが大きいです。なぜなら、ハリルホジッチ監督はアルジェリアを率いて戦ったブラジルW杯で、状況に応じていろいろな戦いを見せていました。試合に応じて起用する選手を選択し、チームを決勝トーナメントに導くことに成功しています。

チュニジア、ウズベキスタンとの戦いを見てもわかるとおり、選手のモチベーションを高めるのが非常にうまい監督です。今後も選手を固定することなく、調子の良い選手をピックアップすると考えられます。ハリルホジッチ監督はJリーグはもちろん、高円宮杯U-18プレミアリーグなども視察しています。J2にもU-22代表などで活躍する良い選手がいます。ロシアW杯は2018年であり、いまの高校生にも十分に代表入りのチャンスがあります。

すでに、良い効果が表われています。名古屋の川又、永井といった選手たちは、代表に呼ばれたことが自信となり、チームに戻ってJリーグで活躍しています。バックアップメンバーに選ばれた川崎の車屋もJリーグ第5節の浦和戦でアシストするなど、結果を残しています。ザッケローニ監督もアギーレ監督も最初のころは新鮮な選手を招集していましたが、徐々にメンバーが固定されていきました。こうした風習を覆してくれることを期待します。

チーム作りを考えると、試合毎に調子の良い選手を招集するのは難しいです。同じメンバーで戦ったほうが完成に近付きますが、ボクはそれでも試合毎に調子の良い選手を呼んでほしいです。なぜなら、代表で経験を積んだ選手がチームに戻って活躍することで、日本サッカー全体の底上げ、レベルアップにつながるからです。
「海外でプレイする選手たちはレギュラーとして試合に出ていなければならない。これから移籍する選手も、試合に出場できるかどうかを考えてチームを選ぶべきだ」

ボクはこの言葉も印象に残っています。ハリルホジッチ監督はネームバリューにとらわれず、代表に必要だと思った選手を招集するタイプです。海外でプレイする選手にアドバンテージがあるわけではありません。「代表の門は常に開かれている」とも語っています。すべての選手にチャンスがあるのです。

日本サッカーをレベルアップさせるべく、ハリルホジッチ監督は情熱を持って取り組んでくれています。ときには耳が痛い言葉もあるかもしれませんが、まわりの人々はブレーキをかけるのではなく、うまくサポートしてやりたいようにやらせるべきです。そうすることで、“何か”が変わっていくのではないかなと感じています。

構成/飯塚健司

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