名良橋晃の定点観測♯3「若手の育成は日本代表ではできない。 サッカー界全体で真剣に取り組むべき」

アギーレ
名良橋晃
日本代表

これまでは選手選考に時間を費やしていたアギーレ監督ですが、ホンジュラス、オーストラアとの戦いでは結果と内容にこだわった選手選考および戦いを見せました。「勝ちにいく」と明言していた試合で、実力がわかっている遠藤、今野などを復帰させました。非常に妥当な選手選考だったと思います。

ホンジュラス戦では中盤のプレッシャーが緩かったこともあり、インサイドハーフの香川、遠藤が高いポジションを取り、積極的に攻撃に絡むことができていました。インサイドハーフが中央へ絞ることでサイドにスペースができますが、そこにしっかりとサイドバックが攻撃参加していた。4-3-3の特徴を生かした攻撃を仕掛けていました。

とくに、4点目はカタチは良かったと思います。左サイドでボールを持った乾が前線の岡崎にボールを当てたときに、インサイドハーフの遠藤が高いポジションを取って岡崎からのリターンを受けました。そして素早く右サイドの本田にパスを出し、そこからゴール前にクロスが入って乾のゴールにつながりました。このときに、遠藤はボールを持った本田の外側をまわり、さらに高いポジションを取ろうとしていました。相手DFをカク乱する効果的な動きで、このカタチが目指すところなのではないかなと思います。

一方、オーストラリア戦では相手のコンディションが良く、序盤は苦戦を強いられました。4-3-3は中盤の両サイドにスペースができる傾向があり、ここを狙われていました。3トップのサイドが下がってくると、ボールを奪ったときに前線に預けるところがなく、素早い攻撃ができない。インサイドハーフが開きすぎると、今度は中央にスペースができてしまう。4-3-3で戦うのが不慣れなメンバーで、守備が安定しないことで後手を踏んでいました。

すると、試合前から「勝ちにいく」と語っていたアギーレ監督が動きました。システムを4-2-3-1に変更し、中盤のスペースを消すことでリズムを取り戻しました。守備の安定は攻撃にも効果をもたらし、パスもつなげるようになりました。4-3-3を熟成させるために引っ張るのではなく、勝ちにいくために素早く決断しました。目的がハッキリしているシステム変更で、非常に効果的だったと思います。

そして、質の高い選手たちが指揮官の意図を汲み取り、混乱することなくスムーズにプレイを続けました。試合中に相手のシステムが変わると、戦いにくいものです。ボクが現役のときは、ネルシーニョ監督が率いるヴェルディがそうでした。能力の高い選手が揃っていて、3バック、4バックを使い分けていました。これをされると、対戦相手は対応に追われて後手を踏むことになります。

アジア杯を見据えれば、こうした臨機応変な対応が求められる場面が必ず出てきます。今回のオーストラリアもそうですが、韓国、イランなどは相手のウィークポイントをしたたかに狙ってきます。守備、攻撃のどちらにもいろんなバリエーションが必要で、試合状況によっては選手自身がピッチのなかで判断し、的確な動きをしなければなりません。

要は、そうした対応ができる選手でなければ、世界では戦えないということです。対戦相手が格上になればなるほど、騙しあいであり、駆け引きが必要になってきます。勝つためには内容にこだわらない戦いを仕掛けてきます。おそらく、アジア杯もそうした戦いになるでしょう。

日本代表にも結果にこだわった戦いをしてほしいと思います。内容よりも結果に重きを置き、結果を出したうえで課題を修正していく。何より、アジアで勝たなければ次がありません。アジア杯では内容よりも、まず勝つことが重要なのです。ここで勝てなければ、欧州や南米のより強い相手を倒すどころか、戦う場に立つことすらできないのです。

アギーレ監督も勝つための23名を選ぶと思います。今回、遠藤や今野を招集したように、年齢は関係ありません。まだ呼ばれていない選手にもチャンスがあります。現在、ブンデスリーガでプレイする清武の調子がとても良く、Jリーグもまだシーズンが残っているため、まだどの選手にも可能性がある状態です。

最後に懸念事項をあげておきます。9月、10月の選考試合で台頭した新戦力を考えると、武藤、柴崎の2名でしょうか……。あまり若手が育っているという印象がありませんが、これは決して、日本代表だけの問題ではありません。活動期間が短い日本代表では、若手の育成はできません。SC相模原でユースを指導しているボクも含めて、日本サッカー界が全体で取り組まなければいけない深刻な問題です。

育成年代の選手は吸収力があり、うまい選手とプレイすると伸びます。経験豊富な選手とプレイすると、成長する度合いが高くなります。そういった意味では、日本代表はあくまでも勝ちにこだわってベストなメンバーで戦うのが大前提ですが、若手の育成とのバランスも考えて強化しなければならない一面がたしかにあります。

試合出場はありませんでしたが、今回も松原、昌子、東口など若い選手が招集されていました。彼らが代表で感じたことをクラブにしっかりと持ち帰り、普段の行動やプレイでまわりにどう伝えるかが大事です。いずれにせよ、育成年代の強化については日本サッカー界全体で取り組まなければ、成果が得られないのは間違いありません。

構成:飯塚健司
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